第4回 桐山堂詩會(二〇一九年二月二十一日)

 第四回桐山堂詩會を開催します。

 桐山堂恒例の「新年漢詩」と合同での開催としました。
 昨年と同じ日に開催しましたのは、私が皆さんに連絡した折に昨年の日付けのまま修正せずに送信してしまったからではありますが、時期的には(私個人の仕事や作業の関係では)好都合なので、この日を定例日にしても良いかと思っています。

 既に「新年漢詩」には掲載していますが、年末関係の詩を省きまして、新年・迎春の詩を再度編集しました。



作品番号  題 名 作 者   詩 形
   
   01 御題 詠光 応制詩 謝 斧 七言絶句 
   02 新年 ニャース 七言絶句 
   03 年頭所感 香@風 七言絶句 
   04 新年偶成 香@風 七言絶句 
   05 元旦 哲 山 七言絶句 
   06 元旦 遙 峰 七言絶句 
   07 早春雅集 紫 照 七言絶句 
   08 新年所懐 太白山 七言絶句 
   09 新年 凌 雲 七言絶句 
   10 立春 凌 雲 七言絶句 
   11 己亥歳朝 觀 水 七言絶句 
   12 答人 觀 水 五言絶句 
   13 己亥新春述懐 青眼居士 七言絶句 
   14 己亥新年書感 亥 燧 七言絶句 
   15 己亥新年書感(二) 亥 燧 七言絶句 
   16 新年 地球人 七言絶句 
   17 新正 深 溪 七言絶句 
   18 初春述懷 深 溪 七言絶句 
   19 述懷 深 溪 七言絶句 
   20 己亥賀正 陳 興(上海) 七言絶句 
   21 己亥新年書感 岳 城 七言絶句 
   22 新年書感 岳 城 七言絶句 
   23 平成己亥年 勅題「光」 杜 正 七言絶句 
   24 平成最后新年 東 山 七言絶句 
   25 己亥正月 東 山 七言絶句 
   26 吟翫新春 方聯詩 明 鳳 七言絶句 
   27 新年偶成(其一) 玄 齋 七言絶句 
   28 新年偶成(其二) 玄 齋 七言律詩 
   29 迎接己亥年偶感 其一 鮟 鱇 五言絶句 
   30 迎接己亥年試筆 鮟 鱇 七言絶句 
   31 迎接己亥年試筆 其二 鮟 鱇 七言絶句 
   32 迎接己亥年試筆 其三 鮟 鱇 七言絶句 
   33 一盞價千金 鮟 鱇 七言絶句 
   34 椒酒正堪斟 鮟 鱇 七言絶句 
   35 三元喜醉吟 鮟 鱇 七言絶句 
   36 三元酒美正堪斟 鮟 鱇 七言絶句 
   37 迎新試筆中華新韻十四部各一首 鮟 鱇 五言律詩 
   38 迎新即亊 鮟 鱇 五言絶句 
   39 迎新即亊 鮟 鱇 七言絶句 
   40 迎新醉夢 鮟 鱇 五言律詩 
   41 新年試筆 鮟 鱇 七言律詩 
   42 立春 鮟 鱇 五言絶句 
   43 立春 鮟 鱇 七言絶句 
   44 立春 鮟 鱇 五言律詩 
   45 立春 鮟 鱇 七言律詩 
   46 新春述懷 其一 常 春 七言絶句 
   47 新春述懐 其二 常 春 七言絶句 
   48 新春述懷 其三 常 春 七言絶句 
   49 歳晩偶成 柳 村 七言絶句 
   50 年頭書懷 柳 村 七言絶句 
   51 新歳與孫遊 其一 石 甫途 七言絶句 
   52 新歳與孫遊 其二 石 甫途 七言絶句 
   53 新年 信 如 七言絶句 
   54 盆梅詩興 岳 峰 五言絶句 
   55 新年(人生八十学雄魁) 茜 峰 七言絶句 
   56 早春看梅 忍 冬 七言絶句 
   57 立春 道 佳 七言絶句 
   58 観梅 香@風 七言絶句 
   59 立春雪 凌 雲 七言絶句 
   60 立春還家 觀 水 七言律詩 
   61 新年書懐(一) (桐山堂半田) 醉 竹 七言絶句 
   62 新年書懐(二) (桐山堂半田) 醉 竹 七言絶句 
   63 新春偶成 (桐山堂半田) 醉 竹 七言絶句 
   64 寒梅 (桐山堂半田) 睟 洲 七言絶句 
   65 平成最後迎新年 (桐山堂半田) 靖 芳 七言絶句 
   66 新年即事 (桐山堂半田) 靖 芳 七言絶句 
   67 新年偶感 (桐山堂半田) 健 洲 七言絶句 
   68 新年作 (桐山堂半田) 輪中人 七言絶句 
   69 首歳 (桐山堂半田) F.K 七言絶句 
   70 新年初釜 (桐山堂半田) F.K 七言絶句 
   71 新年護王神社 (桐山堂刈谷) 靜 巒 七言絶句 
   72 迎春 (桐山堂刈谷) W.I 七言絶句 
   73 迎春 (桐山堂刈谷) 小 禽 七言絶句 
   74 迎正月 (桐山堂刈谷) M.O 七言絶句 
   75 歳朝繞村 (桐山堂刈谷) 小 圃 七言絶句 
   76 己亥年頭作 (桐山堂刈谷) T.K 七言絶句 
   77 新年作 (桐山堂刈谷) 仁 山 七言絶句 
   78 新年作 (桐山堂刈谷) T.S 七言絶句 
   79 己亥新春 (桐山堂刈谷) 松 閣 七言絶句 
   80 迎新年 (桐山堂刈谷) Y.N 七言絶句 
   81 春色 (桐山堂刈谷) 聖 峰 七言絶句 
   82 新年作 (桐山堂刈谷) 汀 華 七言絶句 
   83 平成讓位春新年詩 (桐山堂刈谷) 老 遊 七言絶句 
   84 立春 桐山人 七言絶句 




































[01] 参加者  謝斧 



  御題 詠光 応制詩        

北辰荒海導迷船   北辰 荒海に迷船を導き

雪机寒儒苦学全   雪机の寒儒 苦学全し

誰使陽光生萬物   誰か陽光をして万物を生じせしめ

人成發電賜澄天   人は発電を成して澄天を賜ふ

          (下平声「一先」の押韻)


「北辰」: 北極星
「雪机」: あえて「蛍雪」を用いませんでした
「誰」は天の主宰者 天帝
「賜澄天」: 化石燃料を回避したことにより「澄天」をえる     


























[02] 参加者  ニャース 


  新年        

獨在他郷十幾年、   他郷に十数年一人暮らし、

全家元旦樂團圓、   今年は一家の団欒がうれしいです、

鐘聲甚近人驚訝、   鐘の音がすごい近いなと思ったら

茅屋原來寺院前。   我が家の向いはお寺なのを思い出しました。

          (下平声「一先」の押韻)


      

























[03] 参加者  黒浴@


  年頭所感        

齢遥超傘寿   齢 遥かに傘寿を超ゆるも

無恙謝餘生   恙なく 余生に謝す

喜讀朋知便   喜び読む 朋知の便り

追懷酒醴傾   追懐し 酒醴 傾く

          (下平声「八庚」の押韻)


    
























[04] 参加者  黒浴@


  新年偶成        

入門五年詩興推   入門 五年 詩興堆し

媼翁趣味一花開   媼翁の趣味 一花開かん

朗吟清唱心身爽   朗吟 清唱すれば 心身爽やか

日日研讃夢又回   日々の研鑽 夢又回る

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[05] 参加者  哲山 


  元旦        

歳寒松柏鵠Z堤   歳寒くして 松柏 堤に緑濃く

天曜川流澄澹兮   天曜(かがや)きて 川流 澄澹なり

愛犬與行過午岸   愛犬 与に行く 過午の岸

三三五五鴨休畦   三三五五 鴨  畦に休(いこ)ふ

          (上平声「八斉」の押韻)


    

























[06] 参加者  遙峰 


  元旦        

雲關沍i後庭連   雲間 澄景 後庭にも連なり

粧雪茶梅深色鮮   雪に粧ふ茶梅 深色鮮やか 

正是一篇擇筆墨   正に是れ一篇 筆墨を択し

不殊常日北窗前   常日に殊ならず 北窗の前

          (下平声「一先」の押韻)


雲間からの朝の光が、普段は日の当たらない裏庭にも差し込んで、
雪化粧をした、山茶花の深い色が鮮やかである。
この様子は正に一つの詩。筆と墨を選び抜いて、
元日なのにいそいそと書斎に籠る。
    


























[07] 参加者  紫照 



  早春雅集        

鶏鳴報慶歳華辰   鶏鳴慶を報ず 歳華辰

萬戸風旗天下春   萬戸風旗 天下の春

壽福嘉筵忘白髪   壽福の嘉筵 白髪を忘れ

詩朋談笑醉芳醇   詩朋談笑し 芳醇に酔ふ

          (上平声「十一真」の押韻)


    

























[08] 参加者  太白山 



  新年所懐        

朝暉燦燦草蘆邊   朝暉 燦燦たる草蘆の邊

幼児聽聲几案前   幼児の聲を聴く几案の前

至老漸知貧士樂   老いに至り 漸く知る 貧士の楽

閑専筆硯向新年   閑かに筆硯を専らにして 新年に向かはん

          (下平声「一先」の押韻)


    

























[09] 参加者  凌雲 


  新年        

正月隣家見發梅   正月の隣家 発梅を見る、

冬晴借宅錯春來   冬晴の借宅 春来るを錯ふ。

花香淑氣南窗外   花香 淑気 南窓の外、

請問爲誰處處開   問ふを請ふ 誰が為に処処開く。

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[10] 参加者  凌雲 



  立春        

人生到處有悲哀   人生 到処悲哀有り、

故待街坊燕子回   故らに待つ 街坊 燕子の回るを。

痺足励禪春未近   痺れる足で禅に励むも 春未だ近からず、

病身新止酒肴杯   病身 新たに止められる 酒肴の杯。

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[11] 参加者  觀水 



  己亥歳朝        

日出雲開四海平   日出でて 雲開いて 四海平らかなり

賀詩欲裁快然成   賀詩 裁せんと欲すれば 快然として成る

尋常一樣新年事   尋常一様の新年の事なれど

何意今春有別情   何の意ぞ 今春 別情有るは

          (下平声「八庚」の押韻)


 日の出とともに雲も消え 世間しずかに事もなし
 春を慶ぶ詩を詠めば うまい具合に出来上がる
 いつもどおりの変わらない 年のはじめの事ですが
 どうしたわけかこの朝は 別れを惜しむ気分です



























[12] 参加者  觀水 



  答人        

四十二男子   四十二の男子

誰言多厄災   誰か言ふ 厄災多し と

平生足憂事   平生 憂事足る

可笑口須開   笑ふべし 口須らく開くべし

          (上平声「十灰」の押韻)


数え年 四十二
知るものか 厄年なんて
ふだんから 悩みは足りてる
口あけて 笑ってやるべし



























[13] 参加者  青眼居士 



  己亥新春述懐        

耽耽虎視覇圖爭   耽々虎視 覇図の争い、

驕慢一流將曷行   驕慢の一流 将に曷をか行わんとする。

猛進豬狶無轉倒   猛進豬狶 転倒すること無かれ、

平成終尾冀康平   平成の終尾 冀わくは康平ならんことを。

          (下平声「八庚」の押韻)


    

























[14] 参加者  亥燧 



  己亥新年書感        

四海春装一草堂   四海春装 一草堂

歳朝景物亦尋常   歳朝の景物 亦尋常

老來何歎氣康健   老来何ぞ歎かん 気は康健

子女共斟椒酒香   子女と共に斟む椒酒香し

          (下平声「七陽」の押韻)




























[15] 参加者  亥燧 



  己亥新年書感(二)        

干支六度瞬時過   干支六度 瞬時に過ぐ

鹵莽半生蹉且跎   鹵莽の半生 蹉且つ跎たり

貧計共斟履端酒   貧計なれど共に斟む履端の酒

謝天謝内奈欣何   天に謝し内に謝して 欣び奈何せん

          (下平声「五歌」の押韻)


    

























[16] 参加者  地球人 



  新年        

晨鶏爽氣曙光紅   晨鶏 爽気 曙光紅なり

四海昇平度惠風   四海 昇平 恵風度る

脱却竃Z閑日月   脱却 竃Z 閑なる日月

屠蘇快飲氣蓬蓬   屠蘇 快飲 気は蓬蓬

          (上平声「一東」の押韻)


    

























[17] 参加者  深溪 



  新正        

歳朝無恙此迎新   歳朝 恙無く 此に新を迎ふ

瑞氣賦詩天地春   瑞気 詩を賦す 天地の春

加一九旬身尚健   九旬に一を加へ 身は尚健なり

劫餘昨昔憶故人   劫餘 昨昔 故人を憶ふ

          (上平声「十一真」の押韻)


「歳朝」: 元日。
「無恙」: 無事。
「瑞気」: 目出度い氣。
「餘一九旬」: 九十一才。
「劫餘」: 戦後。
「昨昔」: むかし。
「故人」: 旧友。
    

























[18] 参加者  深溪 



  初春述懷        

平成最後迎新年   平成 最後の 新年を迎へ

餘一九旬人是仙   九旬に一を餘す 人是仙なり

惨憺劫餘懷往事   惨憺たる 劫餘 往事を懐ふ

風波無用太平天   風波 無用 太平の天

          (下平声「一先」の押韻)



「平成最後の新年」: 四月末改元、五月から元号が変わる。
「餘一九旬」: 九十一才。
「人是仙」: 世俗を離れた人。
「惨憺」:あれこれと心を痛める。
「劫餘」: 戦後。
「懐往事」: 戦時中や戦後の事を思う。
「風波」: 世の荒波。
「太平天」: 平和な天、平和な世界。                  雅号・ペンネーム=深渓     

























[19] 参加者  深溪 



  述懷        

健軀鶴髪愧凡才   健躯 鶴髪 憶凡才を愧ずも

九十一齡何足欸   九十 一齢 何ぞ欸に足らん

千里低徊輕薄子   千里の低徊 軽薄な子

人生行路思悠哉   人生 行路 思い悠なる哉

          (上平声「十灰」の押韻)



「鶴髪」: 白髪頭。
「千里低徊軽薄子」: 子は男なり。南北極を除き全世界と日本全国と島嶼部まで覊したり。
           九十一才の老齢を欸く莫れ、吾期頤まで生きようぞ。     

























[20] 参加者  陳興 



  己亥賀正        

野豬奔走入叢林   

獵戸フ蒼牽犬尋   

靈感流星天際去   

須於月下及時擒   

          (下平声「十二侵」の押韻)


    

























[21] 参加者  岳城 



  己亥新年書感        

放馥庭梅度惠風   馥を放つ庭梅 恵風 度る

蓬蓬天地曙光紅   蓬蓬たる天地 曙光 紅なり

欲迎新代平成世   新代を迎へんと欲す平成の世

旭日神州瑞氣籠   旭日の神州 瑞気 籠む

          (上平声「一東」の押韻)


    

























[22] 参加者  岳城 



  新年書感        

新正朝旭報春來   新正の朝旭 春の来たる報ず

馥郁盆梅次第開   馥郁たる盆梅 次第に開く

傾蓋佳朋詩酒會   傾蓋の佳朋 詩酒の会

芳筵美祿醉金杯   芳筵の美禄 金杯に酔ふ

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[23] 参加者  杜正 



  平成己亥年 勅題「光」        

旭日曈曈放瑞光   旭日 曈曈と瑞光を放ち

平成惜別拝年忙   平成 別れを惜しんで 拝年忙し

同僚相會論書處   同僚 相会うて 書を論ずる処

紙上龍蛇吐墨香   紙上の竜蛇 墨香を吐く

          (下平声「七陽」の押韻)


旭日が 曈曈と瑞光を放っている
元号の平成が別れを惜しんでいるかのようで 年初めの挨拶が多く忙しい
同僚が書き初め会で会って お互いの書を論じている
紙上に書いた字が 墨香を吐いているかのようだ


























[24] 参加者  東山 



  平成最后新年        

果苺已赧温室瑰   果苺 已に赧き 温室の瑰

青郊十里麥畦開   青郊十里 麦畦開く

新陽祈請斟椒酒   新陽祈請して 椒酒を斟み

尚是平成追憶杯   尚ほ是れ 平成追憶の杯

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[25] 参加者  東山 



  己亥正月        

久待新春格別杯   久しく待つ新春 格別の杯

始迎孫子喜心開   始めて孫子を迎へて 喜心開く

爲貽神矢賢還健   為に神矢を貽る 賢 還た 健

椒酒桃符邪鬼裁   椒酒桃符 邪鬼を裁つ

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[26] 参加者  明鳳 



  吟翫新春 方聯詩        

占新元號吉生檐   新たなる 元号を占へば  吉 檐に 生じ

言問爲君佳氣添   言問は 君が 為に 佳気は添ふ

忝賀題詩應有意   賀を 忝うし 詩を題すれば 応に意有るべく

心機一轉百華沾   心機一転して 百華 沾はん

          (下平声「十四塩」の押韻)


方聯詩とは、各句末尾の一部分が次句の冒頭に使われて連なる詩

  占 新 元 號 吉 生 檐
  沾              言↓
  華              問
  百              爲 
  轉              君 
  一              佳 
  機              氣 
↑ 心              添 
  意 有 應 詩 題 賀 忝 


























[27] 参加者  玄齋 



  新年偶成(其一)        

遷鶯人日喚春來   遷鶯 人日 春を喚びて来る

淑氣蓬蓬綻早梅   淑気 蓬蓬として早梅 綻ぶ

宿志欲吟詩尚拙   宿志 吟ぜんと欲すれども詩 尚 拙く

幾重刪定亂書堆   幾たびも刪定を重ねて乱書 堆し

          (上平声「十灰」の押韻)


 正月に苦吟をする様子を詠みました。
 今年も漢詩作りを中心に諸々の勉強を頑張っていきます。
 今年も苦吟を続けていきます。

 陰暦の一月七日に、鶯(うぐいす)が低い谷間から高い木へと、春を呼んでやって来て、
 春の穏やかな気が立ち上って、早咲きの梅の花が開きかけていました。
 前々からの志を詩歌に思い付くままに歌おうと思っても、詩はまだ拙く、
 何度も詩句を推敲して正すことを重ねて、乱れ書きをしたものが積み重なって高く盛り上がっていました。


























[28] 参加者  玄齋 



  新年偶成(其二)        

新正先拂硯池埃   新正 先づ硯池の埃を払ひ

壯士胸中筆墨催   壮士の胸中 筆墨 催す

白紙縱描獨鶴   白紙 縦横 独鶴を描き

紅葩大小寫疎梅   紅葩 大小 疎梅を写す

飄飄動朶東風起   飄飄 朶を動かして東風 起こり

脈脈凝香春色開   脈脈 香を凝らして春色 開く

忽散宿陰天欲霽   忽ち宿陰を散じて天 霽れんと欲し

皇是自畫圖來   青皇は是 画図 自り来る

          (上平声「十灰」の押韻)


 水墨画家が正月に絵を描く場面を詠みました。
 今年も春の景色をしっかりと漢詩に描けていければ良いなと思います。
 これからも頑張ります。

 新しい年の正月に、先ず硯の水を入れる窪んだ所にたまった埃を払い、
 気力の盛んな男の思いは、筆と墨を促していました。

 白紙の紙に、自由自在に孤独な鶴を描き、
 大小の赤い花が疎(まば)らに咲いた梅を写し取っていました。

 物を翻して枝を動かして、春風が起こり、
 続いて絶えず香りを凝り固まらせて、春の景色が広がっていました。

 忽ちに長い曇り空が無くなって、空は晴れようとしていて、
 春を司る神は、絵画からやって来ていました。



























[29] 参加者  鮟鱇 



  五絶・迎接己亥年偶感        

亥豕易渾淆,   亥(カイ)と豕(シ)は渾淆し易く,

晩年多錯字。   晩年に錯字(誤字)多し。

三元酒滿杯,   三元酒 杯に滿ち,

春意張蝶翅。   春意 蝶翅を張る。

          (中華新韻十三支去声の押韻)





























[30] 参加者  鮟鱇 



  七絶・迎接己亥年試筆 其一        

亥字古來紛豕使,   亥字 古來 豕と紛れ,

詩翁花費多箋紙。   詩翁をして多いに箋紙を花費(ついや)しむ。

年年注意力衰殘,   年年 注意力は衰殘し,

歳歳添増假牙齒。   歳歳 添増(増加)せるは假牙齒(入れ歯)。

          (中華新韻十三支上声の押韻)





























[31] 参加者  鮟鱇 



  七絶・迎接己亥年試筆 其二        

三元醉筆潤瑤舟,   三元 醉筆 瑤舟(酒杯)に潤ひ,

笑鼓吟魂試勝遊。   笑みて吟魂を鼓し勝遊を試む。

同伴荊妻借丹臉,   荊妻の丹臉を借りをるを同伴し,

春航酒海轉風流。   春に酒海を航海し轉た風流。

          (中華新韻七尤平声の押韻)





























[32] 参加者  鮟鱇 



  七絶・迎接己亥年試筆 其三        

猪突猛進戀詩神,   猪突猛進 詩神に戀し,

刻苦廿年求句新。   苦を刻んで廿年 句の新しきを求む。

不顧非才酒堪伴,   非才を顧みず酒 伴ふに堪へ,

醉揮禿筆喜開春。   醉って禿筆を揮ひ開春を喜ぶ。

          (中華新韻九文平声の押韻)





























[33] 参加者  鮟鱇 



  七絶・一盞價千金        

三元一盞價千金,   三元の一盞 千金に價し,

堪聳雙肩試醉吟。   雙肩を聳やかし醉吟を試みるに堪ふ。

不顧詩中聲病在,   詩中に聲病在るを顧みず,

擬唐高唱喜披襟。   唐に擬へ高唱し襟を披くを喜ぶ。

          (中華新韻九文平声の押韻)





























[34] 参加者  鮟鱇 



  七絶・椒酒正堪斟        

三元椒酒正堪斟,   三元の椒酒 正に斟むに堪へ,

美醉當然無苦吟。   美醉すれば當然 苦吟無し。

好句如泉涌金盞,   好句 泉の金盞に涌く如く,

聳肩高唱若丹禽。   肩を聳やかし高唱し丹禽(鳳凰)の若し。

          (中華新韻九文平声の押韻)





























[35] 参加者  鮟鱇 



  七絶・三元喜醉吟        

當喜天晴旭日臨,   當に天晴れて旭日臨むは喜ぶべく,

莫傾椒酒帶愁斟。   椒酒を傾くるに愁ひを帶びて斟む莫れ。

山妻如此説含笑,   山妻 此くの如く説(い)ひて笑みを含み,

勸盞愚生擅醉吟。   盞を勸(すす)む 愚生の醉吟を擅(ほしいまま)にするに。

          (中華新韻九文平声の押韻)





























[36] 参加者  鮟鱇 



  七絶・三元酒美正堪斟        

三元夢醒到于今,   三元夢醒めて今に到り,

紅旭燒霞煥煥臨。   紅旭 霞を燒いて煥煥と臨ず。

歳歳初思人更老,   歳歳 初めに思ふは人更に老ゆるも,

年年酒美善堪斟。   年年 酒美(うま)く善く斟むに堪ふることなり。

          (中華新韻九文平声の押韻)





























[37] 参加者  鮟鱇 



  五律・迎新試筆中華新韻十四部各一首        

     其一 中華新韻一麻

三元寒夢醒,   三元 寒夢醒め,

椒酒涌山家。   椒酒 山家に涌く。

禿筆霑金盞,   禿筆 金盞に霑ひ,

硯池開墨花。   硯池に墨花開く。

雲箋詩眼耀,   雲箋に詩眼耀き,

旭日錦霞佳。   旭日 錦霞に佳なり。

吟志年年老,   吟志 年年老ゆるも,

歳歳興無涯。   歳歳 興に涯なし。



     其二 中華新韻二波

夢醒迎新歳,   夢醒めて新歳を迎へ,

三元祝意多。   三元に祝意多し。

瑤舟浮酒海,   瑤舟(さかずき)酒海に浮き,

夫婦醉香波。   夫婦 香波に醉ふ。

乘興吟魂動,   興に乘って吟魂動き,

裁詩凍筆呵。   詩を裁くに凍筆呵す。

擬唐尋章巧,   唐に擬へ章を尋ぬること巧みに,

摘句競鸚哥。   句を摘むこと鸚哥(インコ)と競ふ。



     其三 中華新韻三皆

巫女流紅涙,   巫女 紅き涙を流し,

雲中惜遠別。   雲中に遠き別れを惜しむ。

三元香夢醒,   三元 香夢醒め,

一閃曙光潔。   一閃 曙光潔し。

笑貌斟椒酒,   笑貌(笑顔)にて椒酒を斟み,

温顔傾玉爵。   温顔にて玉爵を傾く。

無言老妻看,   言無く老妻は看る,

野叟寫七絶。   野叟の七絶を寫(か)くを。



     其四 中華新韻四開

夢醒人延壽,   夢醒めて人 壽を延ばし,

東天新旭開。   東天に新旭開く。

三元椒酒涌,   三元 椒酒涌き,

一醉繆斯來。   一醉 繆斯來たる。

笑勸詩隨意,   笑みて勸む 詩の意に隨ふを,

巧彈琴養才。   巧みに彈ず 琴の才を養ふを。

老翁乘雅興,   老翁 雅興に乘り,

吟歩上瑤臺。   吟歩し瑤臺に上る。



     其五 中華新韻五微

三元尚寒冷,   三元なほ寒冷なるも,

新旭雪原輝。   新旭 雪原に輝く。

取暖爐邊酒,   取る暖は爐邊の酒,

洗塵胸裡灰。   洗ふ塵は胸裡の灰。

醉乘詩興好,   醉って乘る 詩興の好きに,

吟扮羽人飛。   吟じて扮す 羽人の飛ぶに。

千里騎仙鶴,   千里 仙鶴に騎り,

遐思欲適歸。   遐思 適歸せんと欲す。



     其六 中華新韻六豪

三元啜杯酒,   三元 杯酒を啜り,

一醉扮詩豪。   一醉して詩豪に扮す。

察看庭梅雪,   察看す 庭梅に雪,

素描箋紙梢。   素描す 箋紙に梢。

芳春生筆底,   芳春 筆底に生じ,

字眼耀晴霄。   字眼 晴霄に耀く。

綴玉花魁美,   玉を綴りて花魁美しく,

暗香蝸舎飄。   暗香 蝸舎に飄ふ。



     其七 中華新韻七尤

愛妻含笑勸,   愛妻 笑みを含んで勸む,

酒美轉風流。   酒美(うま)く轉(うた)た風流。

醉夢尋霞洞,   醉夢に霞洞を尋ね,

歳朝登蜃樓。   歳朝 蜃樓に登る。

欄干玉人慰,   欄干に玉人は慰む,

晩境老翁愁。   晩境に老翁の愁ふるを。

善感頻裁賦,   善感なれば頻りに賦を裁くも,

苦吟難罷休。   苦吟 罷休(結着)し難し。



     其八 中華新韻八寒

詩翁茅舎恨,   詩翁茅舎に恨む,

陽暦歳朝寒。   陽暦の歳朝の寒きを。

取暖傾杯子,   暖を取るに杯子(さかずき)を傾け,

傷心花酒錢。   心を傷めては酒錢を花(ついや)す。

生涯功譽少,   生涯に功譽少なく,

作品墨痕凡。   作品に墨痕凡なり。

可愍吟魂老,   愍(あはれ)むべし吟魂老いて,

牢騷積廢箋。   牢騷(不平)廢箋に積むを。



     其九 中華新韻九文

陽暦三元雪,   陽暦 三元の雪,

寒中傾老春。   寒中 老春(醇酒)を傾く。

山妻醉椒酒,   山妻 椒酒に醉ひ,

野叟鼓詩魂。   野叟 詩魂を鼓す。

鶴唳人呵筆,   鶴唳(な)いて人は筆を呵し,

墨流題就新。   墨流れて題は就新(迎新)。

幸得佳作後,   幸ひ佳作を得ての後,

更飲買餘醺。   更に飲んで餘醺を買ふ。



     其十 中華新韻十唐

歳朝傾椒酒,   歳朝 椒酒を傾ければ,

妙想帶靈香。   妙想 靈香を帶ぶ。

瑤舟浮硯海,   瑤舟(さかずき)硯海に浮き,

醉筆弄時光。   醉筆 時光を弄ぶ。

回憶生涯好,   回憶せる生涯は好く,

承蒙年壽長。   承蒙(受け)し年壽は長し。

仰天當感謝,   天を仰いで當に感謝すべく,

詩翼正堪張。   詩翼 正に堪張るに堪ふ。



     其十一 中華新韻十一庚

歳朝無世務,   歳朝 世務無く,

金盞正堪傾。   金盞 正に傾くるに堪ふ。

對飲賢妻笑,   對飲するに賢妻笑み,

察知遐想生。   察知す 遐想の生ずるを。

瑤舟浮硯海,   瑤舟(さかずき)硯海に浮き,

詩叟釣鯤鯨。   詩叟 鯤鯨を釣る。

揮筆求佳作,   筆を揮って佳作を求め,

心光花眼明。   心光 花眼(老眼)に明るし。



     其十二 中華新韻十二斉

三元吟醉好,   三元 吟醉(吟詩醉酒)するが好く,

磨墨試新題。   墨を磨き新題を試む。

才筆霑杯酒,   才筆 杯酒に霑(うるお)ひ,

詩魂穿羽衣。   詩魂 羽衣を穿つ。

幸逢神媛笑,   幸ひ逢へる神媛笑み,

廉賣曼辭奇。   廉賣す 曼辭奇なり。

佳境欣然對,   佳境に欣然と對せる,

花容似老妻。   花容は老妻に似る。



     其十三 中華新韻十三支

三元有金盞,   三元に金盞あり,

美醉伴詩思。   美醉すれば詩思を伴ふ。

禿筆霑椒酒,   禿筆 椒酒に霑ひ,

墨花開硯池。   墨花 硯池に開く。

天晴春意動,   天晴れて春意動き,

風暖賞心馳。   風暖かく賞心馳す。

遊目霞箋看,   目を遊ばせて霞箋に看る,

芳梅綴玉枝。   芳梅の玉を綴りし枝。



     其十四 中華新韻十四姑

三元傾美酒,   三元 美酒を傾け,

午睡枕音書。   午睡するに音書を枕とす。

良夜嫦娥笑,   良夜に嫦娥笑み,

佳城詩鬼甦。   佳城に詩鬼甦る。

風流多未有,   風流に未だ有らざる多く,

韻事喜談無。   韻事は無を談ずるを喜ぶ。

欲解斯謎語,   斯の謎語を解かんとし,

騷翁迷夢途。   騷翁 夢途に迷ふ。



     收尾 七言絶句

猪突猛進歳朝馳,   猪突猛進 歳朝に馳せ,

醉寫中華新韻詩。   醉って寫(か)ける中華新韻の詩。

不顧非才十四首,   非才を顧みざる十四首,

勞多功少若卮辭。   勞多く功少く卮辭のごとし。

          (中華新韻十三支去声の押韻)





























[38] 参加者  鮟鱇 


  五絶・迎新即亊        

夢醒人延壽,   夢醒めて人 壽を延ばし,

東天新旭開。   東天に新旭開く。

愛妻含笑勸,   愛妻 笑みを含んで勸む,

椒酒洗心埃。   椒酒の心の埃を洗ふを。

          (上平声十灰・中華新韻四開平声の押韻)




























[39] 参加者  鮟鱇 


  七絶・迎新即亊        

元旦笑迎孫子來,   元旦 笑って孫子來たるを迎へれば,

女兒夫婦報懷胎。   女兒(むすめ)夫婦 懷胎せるを報ず。

欣欣傾盞歡談處,   欣欣として盞を傾け歡談する處,

醉借朱顔喜酒災。   醉って朱顔を借り酒災を喜ぶ。

          (上平声十灰・中華新韻四開平声の押韻)




























[40] 参加者  鮟鱇 



  五律・迎新醉夢        

美醉肱堪枕,   美醉すれば肱は枕とするに堪へ,

繆斯攜酒來。   繆斯(ミューズ)酒を攜へて來たる。

瑤舟浮硯海,   瑤舟(酒杯)硯海に浮き,

興趣促詩才。   興趣 詩才を促す。

磨墨靈思涌,   墨を磨けば靈思涌き,

仰天遐想開。   天を仰げば遐想(ファンタジー)開く。

花精眼前舞,   花の精 眼前に舞ひ,

筆路上春臺。   筆路は春臺へ上る。

          (上平声十灰・中華新韻四開平声の押韻)




























[41] 参加者  鮟鱇 



  七律・新年試筆        

新年試筆醉翁哀,   新年 筆を試して醉翁哀し,

難斷苦吟嗟菲才。   苦吟斷ちがたく菲才を嗟(なげ)く。

眼底詩箋雪原耀,   眼底(眼の前)の詩箋に雪原耀き,

寒中思路旭光開。   寒中の思路に旭光開く。

詩魂奮起張鵬翼,   詩魂 奮起して鵬翼を張り,

手翰高馳上鳳臺。   手翰(ふで)は高く馳せて鳳臺へ上る。

空想自由無界限,   空想は自由にして界限なく,

春花繚亂滿蓬莱。   春花繚亂して蓬莱に滿つ。

          (上平声十灰・中華新韻四開平声の押韻)




























[42] 参加者  鮟鱇 



  五絶・立 春        

老叟寒齋想,   老叟 寒齋に想ふ,

春風何日回?   春風 何(いつ)の日 回(かへ)らんや?

無言磨凍硯,   無言で凍硯を磨き,

呵筆試題梅。   筆を呵して試む 梅を題とするを。

          (上平声十灰・中華新韻五微平声の押韻)




























[43] 参加者  鮟鱇 



  七絶・立 春        

春風遲鈍未歸回,   春風 遲鈍にして未だ歸回(かへ)らず,

老叟爐邊傾酒杯。   老叟 爐邊に酒杯を傾く。

醉借朱顔夢霞洞,   醉って朱顔を借りて霞洞を夢みれば,

眼前笑貌是花魁。   眼前の笑貌は是れ花魁。

          (上平声十灰・中華新韻五微平声の押韻)




























[44] 参加者  鮟鱇 



  五律・立 春        

逍遙硯池畔,   逍遙す 硯池の畔(ほとり),

問候立春梅。   候を問ふ 立春の梅に。

未破紅花蕾,   未だ紅き花の蕾を破らずも,

羞傾緑酒杯。   羞(すす)む 緑酒の杯を傾むけよ と。

旗亭村婦似,   旗亭の村婦は似る,

詩境繆斯陪。   詩境に繆斯(ミューズ)の陪するに。

閑話含風韻,   閑話 風韻を含む,

清醪洗死灰。   清醪 死灰を洗へば。

          (上平声十灰・中華新韻五微平声の押韻)




























[45] 参加者  鮟鱇 



  七律・立 春        

先磨香墨想池隈,   先ず香墨を磨いて池の隈を想ひ,

試筆立春題雪梅。   試筆 立春 雪梅を題とす。

日照氷魂寒水映,   日は照らす 氷魂の寒水に映るを,

人玩蓓蕾酒亭陪。   人は玩ぶ 蓓蕾(未開の蕾)の酒亭に陪するを。

横枝如袖綴珠玉,   横枝 袖の如くに珠玉を綴り,

老板傾壺勸酒杯。   老板(店の主人)壺を傾け酒杯を勸む。

美醉醺然空想裡,   美醉して醺然と空想する裡(なか)に,

花精巾舞扮花魁。   花の精 巾舞して花魁(おいらん)に扮す。

          (上平声十灰・中華新韻五微平声の押韻)




























[46] 参加者  常春 



  新春述懷 其一        

益増風格老松梅   いや増す風格 老松梅

古竹枯猶多用材   古竹 枯れて猶 多用の材たり

執着人生有終實   人生有終の実に執着すれば

坦懷日日自招徠   坦懐なる日々 自ずから招来せん

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[47] 参加者  常春 



  新春述懐 其二        

舊年多病半途恢   旧年多病 半途の恢

元旦屠蘇笑語陪   元旦の屠蘇 笑語陪す

望外高齡冥土近   望外なる高齢 冥土近からんも

虚心生活亦悠哉   虚心の生活 亦悠なる哉

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[48] 参加者  常春 



  新年述懷 其三        

結婚前己亥   結婚 前の己亥

苦樂化醃醅   苦楽化して醃醅(えんばい)のごとし

今有聲欸乃   今は有り 声の欸乃(あいだい)す

互望存息災   互いに望む 息災に存(なが)らえるを

          (上平声「十灰」の押韻)


「醃醅」…醤油と酒   「欸乃」…船頭が舟を漕ぐときのかけ声。櫓の音。     

























[49] 参加者  柳村 



  歳晩偶成        

窗前枯葉舞寒風   窓前 枯葉 寒風に舞ふ

百八鐘聲歳已窮   百八の鐘声 歳已に窮まる

詩債成山君勿笑   詩債 山と成る 君笑ふこと勿かれ

爐邊獨坐苦吟翁   炉辺 独り座す 苦吟の翁

          (上平声「一東」の押韻)


    

























[50] 参加者  柳村 



  年頭書懷        

己亥茲迎春又回   己亥 茲に迎へ 春又回る

家眷無恙笑顔開   家眷 恙無し 笑顔開く

三元淑氣人如問   三元の淑気 人如し問はば

馥郁幽香瓶裏梅   馥郁たる幽香 瓶裏の梅と

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[51] 参加者  石 甫途 



  新歳與孫遊 其一        

親迎少孫春意回   親迎 少孫 春意回る

喜騎我背喚呼催   喜騎として我背で喚呼を催す

小兒發育瞬時刻   小児の発育 瞬時の刻み

私想何遊期再來   私は想ふ 何れの遊ぞ 再来を期せん

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[52] 参加者  石 甫途 



  新歳與孫遊 其二        

親迎和顏春色開   親迎す 和やかな顔 春色開く

叫聲近響狹房埃   叫声近く響き 狭房は埃

成人浮眼瞼更見   成人 眼に浮かぶ 瞼に更に見ゆ

煩悶捻身嘆老梅   煩悶として身を捻じり老梅に嘆く

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[53] 参加者  信如 



  新年        

萬里歸ク春又囘   万里 郷に帰れば 春又た回る

鏡中今識六分催   鏡中 今識る 六分催すを

朱顔不見梅花主   朱顔 見えず 梅花の主

白屋無風香未來   白屋 風無く 香未だ来たらず

          (上平声「十灰」の押韻)


 東京から故郷に帰れば、居ただけ春が回って来ます。
 鏡には六十を過ぎた姿が映っています。
 屠蘇を飲んだ私は梅の花の主(父母)を会うことも有りませんし、
 貧しい家にはその香すら未だ届いてはいませんが。

   


























[54] 参加者  岳峰 



  盆梅詩興        

寒梅殊有趣   寒梅 殊に趣有り

老木靜如禪   老木 静かに禅の如し

馥郁共相和   馥郁 共にに相和し

題詩幾変遷   詩を題すこと 幾変遷

          (下平声「一先」の押韻)


    

























[55] 参加者  茜峰 



  新年(人生八十学雄魁)        

老翁剛鋭對崔嵬   老翁は剛鋭にして 崔嵬に對す

秀麗作家銘賞杯   秀麗の作家は 賞杯に銘す

先進励精凡俗我   先進は凡俗の我を 励精す

人生八十學雄魁   人生八十 雄魁に学ばん

          (上平声「十灰」の押韻)


 アコンカグアを目指す三浦雄一郎氏は86歳、昨年国際アンデルセン賞を受賞した角野栄子氏は84歳。
 凡俗の私は83歳になった。年上の才覚ある人がまだ頑張っている。もう80歳を超えたからではなくてまだ80代、これからだという気持ちを持ち続けたい。
 先輩の生き方から学び取らなければならないと思っている。

 (過日三浦雄一郎氏の登頂断念のニュースを見たが 私の彼に対する見方は変わらない)


























[56] 参加者  忍冬 



  早春看梅        

海畔泉ク淑景臺   海畔の泉郷 淑景の台

盈枝玉蕾曙光開   枝に盈つ玉蕾 曙光に開く

梅花的皪香千斛   梅花的皪 香千斛

可惜遷鶯未囀來   惜しむべきは遷鶯未だ囀り来らず

          (上平声「十灰」の押韻)


 昔、熱海梅園へ行った時の記憶を書きました。

























[57] 参加者  道佳 



  立春        

香魂門口一寒梅   香魂の門口 一寒梅

冷氣然而心滿開   冷気あれども心満開

霜降畦町如雪嶺   霜降の畦町 雪嶺のごとし

菜園不久美饒培   菜園 久しからずして美しく饒培

          (上平声「十灰」の押韻)


 近郊の菜園から一輪梅をもらい玄関に指している
 冷気は厳しいが心は和らぐ
 霜が降り畦の畑は白い嶺が連なっているようだ
 やがてこの菜園も美しく豊かに培われることだろう

 蝋梅が玄関に一輪
 仄かな色は 寒さの中で心和む
 霜が降り青物少なし
 やがて春野菜で胸膨らまん

   


























[58] 参加者  黒浴@



  観梅        

輕寒山麓待晴晨   軽寒の山麓 晴るるを待つ晨

馥郁香雲鶯作賓   馥郁たる香雲 鶯 賓を作す

佳人映水娟競影   佳人 水に映じ 娟 競ふ影

郊墟村園訪梅春   郊墟の村園 梅を訪ふ春

          (上平声「十一真」の押韻)


    

























[59] 参加者  凌雲 



  立春雪        

摩天高閣隱遙霞   天を摩する高閣 遥かな霞に隠れ、

減彩寒風凍菜花   彩りを減ずる寒風 菜の花凍えさせる。

靜舞零溶當節雪   静かに舞 零れて溶ける 当節の雪、

窗蒸結露我温家   窓は結露に蒸す 我が温家。

          (下平声「六麻」の押韻)


    

























[60] 参加者  觀水 



  立春還家        

立春氣滿故山隈   立春の気は満つ故山の隈

遊子道中詩合裁   遊子 道中 詩合に裁すべし

野野東風初欲到   野野 東風 初めて到らんと欲し

湖湖白鳥亦思回   湖湖 白鳥 亦回(かへ)らんことを思ふ

草萌郊外履殘雪   草萌(きざ)す郊外 残雪を履み

日暖門前看早梅   日暖かなる門前 早梅を看る

拈筆染箋乘興處   筆を拈り 箋を染め 興に乗ずる処

村童已語我歸來   村童 已に語る 我の帰来せるを

          (上平声「十灰」の押韻)


 春に向かって折り返す 昔なじみの山の隈
 旅のついでというわけで 詩を作るのにふさわしい
 野原をわたる東風 このあたりにも吹きはじめ
 水辺に憩う白鳥も 飛び立つことを思ってる
 村外れには草萌えて 残んの雪を踏みながら
 門の手前の日だまりに 早咲きの梅ながめやる
 筆を拈って箋を染め 楽しくなってきたところ
 村の子どものお喋りに 私の帰りが知られてる


























[61] 参加者  醉竹(桐山堂半田) 



  新年書懐(一)        

瑞光遍照淨塵埃   瑞光遍く照らし 塵埃を浄め

春氣滿庭今曉來   春氣滿庭 今暁来る

百八撞鐘聞幾歳   百八撞鐘 聞いて幾歳

七情煩惱未些摧   七情煩惱 未だ些かも摧かず

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[62] 参加者  醉竹(桐山堂半田) 



  新年書懐(二)        

瑞雲和氣自東來   瑞雲和気 東より来たる

移住迎春已六回   移り住みて 迎春已に六回

歳歳光陰加速畏   歳歳 光陰の加速を畏れ

年年履屐漸遲哀   年年 履屐の漸遅を哀しむ

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[63] 参加者  醉竹(桐山堂半田) 



  新春偶成        

新正瑞氣苦寒摧   新正瑞気 苦寒摧け

春信庭前一朶梅   春信 庭前 一朶の梅

陋屋幾多携酒客   陋屋幾多 携酒の客

放談賀宴笑千回   放談賀宴 笑ふこと千回

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[64] 参加者  睟洲(桐山堂半田) 



  寒梅        

早晨新雪白皚皚   早晨 新雪 白皚皚

崖畔南枝一朶開   崖畔の南枝 一朶開く

高潔幽姸香馥郁   高潔 幽妍 香馥郁たり

朔風微笑百花魁   朔風に微笑す 百花の魁

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[65] 参加者  靖芳(桐山堂半田) 



  平成最後迎新年        

春光水暖一枝梅   春光 水暖く 一枝の梅

松竹茅門詩興催   松竹 茅門 詩興を催す

感慨平成今歳盡   感慨す 平成のこと 今歳に尽くるを

元朝椒酒兩三杯   元朝の椒酒 兩三の杯

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[66] 参加者  靖芳(桐山堂半田) 



  新年即事        

瑞光四海拂塵埃   瑞光 四海に 塵埃を払ふ

風軟花香黄鳥來   風軟らかに 花香り 黄鳥來る

有客詩朋吟韻響   客有り 詩朋 吟韻響く

當年意氣身中回   當年の意氣 身中を回る

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[67] 参加者  健洲(桐山堂半田) 



  新年偶感        

新年淑景一枝梅   新年淑景一枝の梅

籬外鳴鶯去又來   籬外の鳴鶯 去りて又來たる

舊歳古稀身尚健   旧歳古稀も身は尚健なり

屠蘇快飲氣悠哉   屠蘇を快飲して 気悠なる哉

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[68] 参加者  輪中人(桐山堂半田) 



  新年作        

四海洋洋起瑞煙   四海 洋洋 瑞煙起る

融然淑氣萬峰懸   融然たる淑気 萬峰に懸かる

華箋試筆敲詩樂   華箋に試筆して 詩を敲くの楽しみ

淨几明窗己亥年   浄几 明窓 己亥の年

          (下平声「一先」の押韻)




























[69] 参加者  F.K(桐山堂半田) 



  首歳        

淑氣蓬蓬風緩回   淑気 蓬蓬として 風緩く回る

壽福欣然談笑回   寿福 欣然として 談笑回る

談笑團圓好友宴   談笑 団円 好友の宴

一觴一詠忘時哉   一觴 一詠 時を忘るる哉

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[70] 参加者  F.K(桐山堂半田) 



  新年初釜        

東風正旦報春來   東風 正旦 春を報じ来たる

若水點茶清宴開   若水 茶を点じ 清宴開く

五福心情千古遍   五福の心情 千古に遍し

和顏朋友手中杯   和顏の朋友 手中の杯

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[71] 参加者  靜巒(桐山堂刈谷) 



  新年護王神社        

正旦雲晴瑞氣回   正旦 雲晴れ 瑞気回る

護王院落早梅開   護王の院落 早梅開く

和顔笑語盈寺宇   和顔 笑語 寺宇に盈つ

摩利支天乗亥來   摩利支天 亥に乗じて来る

          (上平声「十灰」の押韻)


 護王神社は猪で有名な神社です。
 今年ご縁があり、お参りできました。
 天気も良く、守り神の摩利支天様が天からいらっしゃるようでした。


























[72] 参加者  W.I(桐山堂刈谷) 



  迎春        

鐘聲百八隔塵埃   鐘音 百八 塵埃を隔つ

四海太平氣來   四海 太平 祥気来たる

元旦春盤傾柏葉   元旦 春盤 柏葉を傾け

和風暖日彩雲開   和風 暖日 彩雲開く

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[73] 参加者  小禽(桐山堂刈谷) 



  迎春        

三元瑞氣喜春來   三元 瑞気 春来を喜ぶ

暖日鶯聲綻早梅   暖日 鶯の声 早梅綻ぶ

賀客佳肴醉芳酒   賀客 佳肴 芳酒に酔ふ

家人圓滿笑顔回   家人 円満で笑顔廻る

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[74] 参加者  M.O(桐山堂刈谷) 



  迎正月        

己亥新年曙色催   己亥 新年 曙色催す

早鶯朗囀喜春來   早鶯 朗囀し 春来るを喜ぶ

辛盤柏酒三元首   辛盤 柏酒 三元の首

家族團欒笑語回   家族団欒 笑語 回る

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[75] 参加者  小圃(桐山堂刈谷) 



  歳朝繞村        

無邉落木凜風回   無辺の落木に凜風回る

野徑韶光絶俗埃   野径の韶光 俗埃を絶つ

村社磴頭旛幟列   村社の磴頭 旛幟列し

衆民饗膳共含杯   衆民 饗膳 共に杯を含む

          (上平声「十灰」の押韻)


    

























[76] 参加者  T.K(桐山堂刈谷) 



  己亥年頭作        

戌去亥來今歳回   戌去り 亥来たって 今歳回る

春光萬里地無埃   春光 万里 地は埃無し

鶯聲清朗三元日   鶯声 清朗として 三元の日

家族安寧祈念催   家族の安寧 祈念を催す

          (上平声「十灰」の押韻)


    
























[77] 参加者  仁山(桐山堂刈谷) 


  新年作        

遙望御嶽白皚皚   遥望す 御嶽 白皚皚

籬角水仙春色催   籬角の水仙 春色催す

棋士驚嘆齡十歳   棋士 驚嘆 齢十歳

老翁吟懷樂ク哉   老翁の吟懐 楽郷哉

          (上平声「十灰」の押韻)


    
























[78] 参加者  T.S(桐山堂刈谷) 


  新年作        

好日迎春清宴開   好日 春を迎へ 清宴開く

麗裝孫子又佳哉   麗装の孫子 又 佳き哉

四人兄弟和顏續   四人の兄弟 和顏続く

無恙一年祈願杯   恙無き一年 祈願の杯

          (上平声「十灰」の押韻)


    
























[79] 参加者  松閣(桐山堂刈谷) 


  己亥新春        

送臘迎年窗外梅   臘を送り 年を迎ふ 窓外の梅

平成己亥已難回   平成 己亥 已に回ること難し

敲詩揮筆怡風雅   詩を敲き 筆を揮ひ 風雅を怡む

八秩星霜春復來   八秩の星霜 春復た来たる

          (上平声「十灰」の押韻)


    
























[80] 参加者  Y.N(桐山堂刈谷) 


  迎新年        

惠風瑞氣破寒來   恵風 瑞気 寒を破りて来たる

芳草香花暖意催   芳草 香花 暖意催す

椒酒三朝喜多幸   椒酒 三朝 多幸を喜ぶ

鶯聲樹樹報春回   鶯声 樹樹 春を報じて回る

          (上平声「十灰」の押韻)


    
























[81] 参加者  聖峰(桐山堂刈谷) 


  春色        

窗前纔看一枝梅   窓前 纔かに看る 一枝の梅

淑氣無窮曉色開   淑気 無窮 暁色開く

才藻家慈盡年逝   才藻の家慈 尽年に逝く

薫陶遺愛有餘哀   薫陶 遺愛 余哀有り

          (上平声「十灰」の押韻)


 年末に最愛の母を亡くし、詩を作る時に素直に思いが溢れました。
 入院中もずっと俳句を書き続けていた母への尊敬が伝わればと思います。   



























[82] 参加者  汀華(桐山堂刈谷) 


  新年作        

寒街除夜雪成堆   天街 除夜 雪は堆を成す

天響鐘聲瑞氣回   天に響く鐘声 瑞気回る

鬧熱衆人山上寺   鬧熱の衆人 山上の寺

新年甘酒共傾杯   新年の甘酒 共に杯を傾く

          (上平声「十灰」の押韻)


 近くのお寺では、除夜の鐘と共に甘酒がふるまわれます。
 新年を迎えたと実感するひと時です。

























[83] 参加者  老遊(桐山堂刈谷) 


  平成讓位春新年詩        

新歳門松瑞氣回   新歳の門松 瑞気回る

侵寒香骨一枝開   寒を侵して 香骨 一枝開く

平成將了乾坤改   平成 将に了り 乾坤改まる

兩帝徴春瑞鳥來   兩帝 春を徴し 瑞鳥来たる

          (上平声「十灰」の押韻)


    
























[84] 参加者  桐山人 


  立春        

南庭牆角一枝梅   南庭 牆角 一枝の梅

傲雪凌寒今日開   雪に傲り 寒を凌ぎ 今日開く

清冷花香適嘉節   清冷たる花香 嘉節に適ふ

陋翁飽醉慶春來   陋翁 飽酔し 春の来たるを慶ぶ

          (上平声「十灰」の押韻)