[01]　参加者　　瓊泉　


　　初秋即事　　　　　　　　

金風玉露滿幽庭　　　金風　玉露　幽庭に満つ

坐看牽牛織女星　　　坐(そぞ)ろに看る　牽牛　織女の星

天漢如流涼似水　　　天漢　流るるが如く　涼水の似(ごと)し

吟情淡淡一燈��　　　吟情　淡淡として　一燈青し

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[02]　参加者　　忍冬　


　　初秋即事(渓亭獨酌)　　　　　　　　

臨秋一夜酌溪亭　　　秋に臨む一夜　渓亭に酌めば

喞喞蟲聲樹裏聽　　　喞喞たる虫声　樹裏に聴く

漾漾浮光流影見　　　漾漾たる浮光　流影に見て

陶然歡酔但憂醒　　　陶然として歓酔するも　但だ醒るを憂うなり

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[03]　参加者　　蘆馨（臺湾）　


　　初秋即事（秋郊縱目）　　　　　　　　

金風浩蕩迴清氣，　　　

目斷雲天鳥同孤。　　　

遠眺行人人似蟻，　　　

靜觀列嶼嶼如珠。　　　

登臨望盡青天外，　　　

賦詠眼窮滄海嵎。　　　

最愛郊原隨意好，　　　

幾回回首久踟躕。　　　

　　　　　　　　　　（上平声「七虞」の押韻）

[04]　参加者　　洋景　


　　初秋即事　　　　　　　　

天晴瑟瑟爽涼庭　　　天晴れて瑟瑟爽涼の庭

獨坐南軒風鐸聽　　　独り南軒に坐して風鐸聴く

溽暑漸収新月夜　　　溽暑漸く収まりて新月の夜

桂花芬郁自何馨　　　桂花芬郁何れより馨し

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[05]　参加者　　玄齋　


　　七夕即事　　　　　　　　

七夕快�ﾘ風洽泠　　　七夕　快晴　風　洽く泠し

江村茅屋飾窗櫺　　　江村の茅屋　窓櫺を飾る

忘勤廢業雙棲故　　　勤めを忘れ業を廃するは双棲の故

織女牽牛兩地星　　　織女　牽牛　両地の星

中夜別愁看落月　　　中夜の別愁　落月を看

深更酣燕見流螢　　　深更の酣燕　流蛍を見る

客人皆醉琴絃盛　　　客人　皆　酔ひて琴絃　盛んに

究藝祈天眠欲醒　　　芸を究めんと天に祈りて眠り醒めんと欲す

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

題：「陰暦七月七日の、七夕の節句の日の、その時の事を詠んだ漢詩です」 雅号・ペンネーム= 佐村（玄齋）です。 先ほど投稿した「七夕即事」の訂正二箇所です。口語訳の部分の、 題の部分の中で、「その時の事を詠んだ漢詩です」とありますが、 正しくは、「その場の事を詠んだ漢詩です」に訂正します。 あと、「川の畔（ほとり）の粗末な〜」とある部分を、 「川の畔（ほとり）の村の粗末な〜」に訂正いたします。 　陰暦七月七日の七夕の節句の日は、快晴で、風は隅々まで涼しく感じられ、
　川の畔（ほとり）の粗末な茅葺きの家では、連子窓（れんじまど）を飾っていました。

　（牛飼いの男と機織りの女が）勤めを忘れ、仕事を怠るのは、夫婦がいっしょに住んで離れないためなのです。
　（そのため）織女星（しょくじょせい：織姫星）と牽牛星（けんぎゅうせい：彦星）が、二つの場所に輝いていました。

　（牛飼いの男と機織りの女の）夜中の別れの悲しみを感じていた頃には、西に傾いた月を見て、
　深夜に盛んな酒盛りをしている頃に、飛行の定まらない蛍を見ていました。

　客人は皆酔って、琴の絃の音が盛んになり、
　芸を究めることを天に祈って、眠りから覚めようとしていました。

　どんな時も怠りなく、学んでいけたら良いなという気持ちで詠みました。
　これからも体調に気を付けて頑張っていきます。

[06]　参加者　　忍夫　


　　初秋即事　　　　　　　　

窗下蟲聲澄耳聽　　　窓下の虫声　耳を澄まして聴く

桂花冷夜放芳馨　　　桂花　倚るに冷ややかに　芳馨 を放つ

半生夢破迷行路　　　半生　夢破れて　行路に迷ひ

模索虛空導我星　　　虚空に模索する　我を導く星を

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[07]　参加者　　道佳　


　　初秋即事　　　　　　　　

怒髪雷神温暖刑　　　怒髪す雷神　温暖の刑

鬼吹炎暑襲生靈　　　鬼吹の炎暑　襲う生霊

紫薇天上推移理　　　紫薇は天上へ推移の理

后厦風來聞一鈴　　　后厦の風来　聞く一鈴

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[08]　参加者　　杜正　


　　初秋即事　　　　　　　　

暑退離家到北溟　　　暑さ退き　家を離れて　北溟に到る

昔時俳聖或來經　　　昔時の俳聖　或いは来経

荒波星漢兩相好　　　荒波　星漢　両　相好し

佳句吟情悦性靈　　　佳句の吟情　性霊を悦ばす

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

　暑さが退いた後、家を出て、北の海に出かけた、
　昔の俳聖（松尾芭蕉）も、訪れたかもしれない、
　海の荒波と空の天の川が、互いに好ましく対抗している、
　あの素晴らしい句の吟情に浸ると、心が悦びであふれる。

[09]　参加者　　深渓　


　　新秋即事　　　　　　　　

雨洗新涼蛩一聲　　　雨は洗ふ　新涼　蛩　一声

西郊門巷見秋生　　　西郊の門巷　秋生ずるを見る

吟邊永夜三更下　　　吟辺　永夜　三更の下

獨坐南軒爽氣清　　　独り南軒に坐す　爽気清し

　　　　　　　　　　（下平声「八庚」の押韻）

[10]　参加者　　信如　


　　七夕　　　　　　　　

江風澹澹書帷搖　　　江風 澹澹　書帷搖らぎ

竹葉珊珊露水零　　　竹葉 珊珊　露水零つ

一片深情仰牛女　　　一片の深情　牛女を仰ぎ

孤蛩細韻滌園庭　　　孤蛩の細韻　園庭を滌ふ

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[11]　参加者　　鮟鱇　


　　五絶・七夕　其一　　　　　　　　

花眼無銀漢，　　　花眼に銀漢無くも，

詩箋堪聚螢。　　　詩箋　蛍を聚（あつ）むるに堪ふ。

牛郎苦吟處，　　　牛郎　苦吟せるところ，

織女撒星星。　　　織女　星星を撒く。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[12]　参加者　　鮟鱇　


　　五絶・七夕　其二　　　　　　　　

織女穿雲錦，　　　織女は雲錦を穿（身に着）け，

牛郎卻馬齡。　　　牛郎　馬齢を却（しりぞ）く。

良宵望銀漢，　　　良宵　銀漢を望んで，

晩戀挂明星。　　　晩恋（晩境の恋）明星を挂（かか）ぐ。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[13]　参加者　　鮟鱇　


　　五律・七夕　　　　　　　　　　　

千年更重複，　　　千年　更に重複（繰り返）す，

約會絳河汀。　　　約會（デート）　絳河（銀河）の汀（みぎわ）。

織女穿蚕錦，　　　織女は蚕錦を穿（着）て，

牛郎加馬齡。　　　牛郎は馬齢を加ふ。

紅唇自如笑，　　　紅唇　自如として笑み，

白首盎然惺。　　　白首　盎然（おうぜん）として惺（さと）る。

晩境多情好，　　　晩境に情多きは好くも，

良宵怕曉星。　　　良宵　曉星を怕（おそ）る。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[14]　参加者　　鮟鱇　


　　五排・七夕　　　　　　　　　　　

花眼無銀漢，　　　花眼（老いの眼）に銀漢無く，

才思聚碧螢。　　　才思　碧（あお）き蛍を聚（あつ）む。

雲箋堪落墨，　　　雲箋　墨を落とすに堪へ，

夢想欲鑲星。　　　夢想　星を鑲（ちりば）めんとす。

織女揮眉筆，　　　織女　眉筆を揮ひ，

牛郎忘馬齡。　　　牛郎　馬齢を忘る。

小傾壺酒緑，　　　小（すこ）しく傾く　壺酒の緑なるを，

共望水流青。　　　共に望む　水の流れの青きを。

幽會多風趣，　　　幽会に風趣多く，

微言適太寧。　　　微言　太寧に適す。

暮年猶永續，　　　暮年　猶ほ永続するがごとく，

晩戀更瓏玲。　　　晩恋　更に瓏玲たり。

入眼朝霞燦，　　　眼に入りて朝霞　燦（あざや）かに，

傷心別涙零。　　　心を傷めて別涙　零（お）つ。

詩翁也悲送，　　　詩翁もまた悲しみ送る，

天媛去蒼冥。　　　天媛（織女）の蒼冥へ去るを。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[15]　参加者　　鮟鱇　


　　七絶・七夕　其一　　　　　　　　

不見銀河花眼瞑，　　　銀河は見えずも花眼瞑（と）づれば，

詩箋夢想聚青螢。　　　詩箋の夢想　青き蛍を聚（あつ）む。

牛郎織女比肩處，　　　牛郎織女　肩を比（なら）ぶるところ，

有恨東天滅曉星。　　　恨み有り　東天に滅せる暁星。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[16]　参加者　　鮟鱇　


　　七絶・七夕　其二　　　　　　　　

年年織女濃妝點，　　　年年　織女は妝点（化粧）を濃くし，

歳歳牛郎加馬齡。　　　歳歳　牛郎　馬齢を加ふ。

晩戀連綿能卻老，　　　晩恋　連綿として能く老いを却（しりぞ）け，

天人攜手絳河汀。　　　天人　手を携ふる絳河（銀河）の汀（みぎわ）。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[17]　参加者　　鮟鱇　


　　七律・七夕　其一　　　　　　　　

今年織女幾多歳，　　　今年　織女は幾多歳（何歳）ぞ，

怕否牛郎加馬齡？　　　怕（おそ）るや否や牛郎の馬齡を加ふるを？

詩人花眼無天漢，　　　詩人の花眼（老いの眼）に天漢無く，

筆底雲箋耀壽星。　　　筆底の雲箋に寿星耀く。

晩境相思能卻老，　　　晩境に相ひ思ひて能く老いを却（しりぞ）け，

良宵美醉共傾瓶。　　　良宵に美醉して共に瓶を傾く。

獨揮手翰擅遐想，　　　獨り手翰（ふで）を揮って遐想を擅（ほしいまま）にし，

廢寢推敲暫忘形。　　　寢るを廃して推敲し暫く形（肉体）を忘る。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[18]　参加者　　鮟鱇　


　　七律・七夕　其二　　　　　　　　

一年一次兩人逢，　　　一年に一次（一度）兩人逢ひて，

萬歳萬回銀漢汀。　　　万歳に万回　銀漢の汀（みぎわ）。

織女時妝猶卻老，　　　織女の時妝なほ老いを却（しりぞ）け，

牛郎酒量更煽情。　　　牛郎の酒量　更に情を煽る。

夜光瀲瀲浮流水，　　　夜光　瀲瀲として流水に浮き，

眼語綿綿惜伴生。　　　眼語　綿綿として伴生を惜しむ。

香夢難長共垂涙，　　　香夢　長らへ難く共に涙を垂らし，

朝霞炳煥不堪迎。　　　朝霞の炳煥たるは迎ふるに堪へず。

　　　　　　　　　　（中華新韻十一庚の押韻）

[19]　参加者　　鮟鱇　


　　五絶・初秋即事　　　　　　　　　　

晩年殘暑酷，　　　晩年に殘暑酷にして，

流汗仰檐鈴。　　　汗を流し檐鈴を仰ぐ。

斷響如生銹，　　　断響（途切れ途切れの響き）錆を生ずる如く，

思人加馬齡。　　　思ふ　人の馬齡を加ふるを。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[20]　参加者　　鮟鱇　


　　五律・初秋即事　其一　　　　　　　

山湖輝瀲瀲，　　　山湖輝いて瀲瀲として，

風爽入旗亭。　　　風爽やかに旗亭に入る。

好景催詩興，　　　好景　詩興を催（うなが）し，

吟懷伴酒瓶。　　　吟懷　酒瓶を伴ふ。

晩霞方耀眼，　　　晩霞　方に眼に耀き，

詩筆自含靈。　　　詩筆　自ずから靈を含む。

諷詠題秋似，　　　諷詠　秋を題として似る，

金蟬鳴忘形。　　　金蝉の鳴いて形（肉体）を忘るるに。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[21]　参加者　　鮟鱇　


　　五律・初秋即事　其二　　　　　　　

風爽含秋意，　　　風爽やかに秋意を含み，

黄昏涼水亭。　　　黄昏　涼しき水亭。

山湖輝瀲灔，　　　山湖　輝き瀲灔として，

檐鐡響瓏玲。　　　檐鐡　響き瓏玲たり。

蟬語猶求愛，　　　蝉語　猶ほ愛を求め，

人吟似念經。　　　人吟　經を念ずるに似る。

姑娘來勸酒，　　　姑娘　來たりて酒を勸め，

微笑兩眸青。　　　微笑して両眸　青し。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[22]　参加者　　鮟鱇　


　　五律（隔句對）・初秋即事　其三　　　　　　　

湖畔喜涼風，　　　湖畔に涼風を喜び，

黄昏坐水亭。　　　黄昏　水亭に坐す。

秋蟬晩年戀，　　　秋蝉　晩年に恋し，

哀訴匹儔鳴。　　　哀訴し匹儔に鳴く。

老叟醇醪醉，　　　老叟　醇醪に醉ひ，

閑吟酒興乘。　　　閑吟して酒興に乘ず。

孤愁難解悶，　　　孤愁　悶えを解きがたく，

諷詠自低聲。　　　諷詠　自ずから低。

　　　　　　　　　　（中華新韻十一庚の押韻）

[23]　参加者　　鮟鱇　


　　七絶・初秋即事　　　　　　　　　　

秋蝉晩境擅春情，　　　秋蝉　晩境に春情を擅（ほしいまま）にし，

醉叟無言坐水亭。　　　醉叟　言なく水亭に坐す。

空看山湖落暉碎，　　　空しく看る　山湖に落暉の碎くるを，

暮愁傷感抱壺瓶。　　　暮愁　感を傷めて壺瓶（酒瓶）を抱く。

　　　　　　　　　　（中華新韻十一庚の押韻）

[24]　参加者　　鮟鱇　


　　七律・初秋即事　其一　　　　　　　

白晝緑陰傾酒聽，　　　白昼　緑陰に酒を傾けて聴く，

亂蟬咒語繞山亭。　　　乱蝉の咒語（呪文）の山亭を繞るを。

競求佳配懷春意，　　　競ひ求む　佳配の春意を懐けるを，

高唱戀歌如震霆。　　　高唱す　恋歌の震霆（かみなり）の如きを。

蟲子晩年能蛻化，　　　虫子（むし）は晩年に能く蛻化し，

吾人夕暮益鏗瞑。　　　吾人（われ）は夕暮に益（ますます）鏗瞑（孤独寂寞）。

無端垂涙空傷感，　　　端無くも涙を垂れて空しく感を傷め，

目送落暉難忘形。　　　落暉を目送するも形（肉体）を忘れ難し。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[25]　参加者　　鮟鱇　


　　七律・初秋即事　其二　　　　　　　

黄昏白首倚窗聽，　　　黄昏　白首窗に倚りて聽く，

院落殘蟬鳴不停。　　　院落の殘蝉　鳴いて停（や）まざるを。

羽化暮年迷晩戀，　　　暮年に羽化して晩戀（老いらくの恋）に迷ひ，

仙遊霞洞忘頽形。　　　霞洞に仙遊し頽形（老躯）を忘る。

天開遐想詩魂動，　　　天　遐想を開けば　詩魂　動き，

人展雲箋香墨零。　　　人　雲箋を展（ひろ）げれば香墨　零（お）つ。

思慕嫦娥揮手翰，　　　嫦娥を思慕して揮ひし手翰（筆）は，

月光流處舞滄溟。　　　月光流るるところ滄溟に舞ふ。

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[26]　参加者　　陳興（中國上海）　


　　初秋即事　　　　　　　　

昨日臺風携雨來，　　　

江南江北感秋回。　　　

西風偸到還歸去，　　　

莫怪清凉不可追。　　　

　　　　　　　　　　（上平声「十灰」の押韻）

[27]　参加者　　觀水　


　　七夕　　　　　　　　

火雲何處散　　　火雲 何れの処にか散ず

爽氣滿閑庭　　　爽気 閑庭に満つ

昨日送三伏　　　昨日 三伏を送り

今宵思二星　　　今宵 二星を思ふ

牽牛飮河漢　　　牽牛 河漢に飲ひ

織女戲沙汀　　　織女 沙汀に戯る

藹藹永相語　　　藹藹として永く相語らん

歡聲應自聽　　　歓声 応に自ら聴くべし

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

　夏の雲　どこに行ったか　さわやかな　気配が満ちる
　暑いのも　昨日までかな　もうきょうは　七夕だから
　彦星の　牛牽くそばで　戯れる　織姫星よ
　楽しげに　語り合ってる　その声が　聴こえるようだ

[28]　参加者　　觀水　


　　初秋即事　　　　　　　　

新秋涼漸到　　　新秋 涼漸く到り

引帳謝流螢　　　帳を引いて流蛍を謝す

月落明紅燭　　　月落ちて 紅燭明らかに

風來冷畫屏　　　風来って 画屏冷ややかなり

三更清興溢　　　三更 清興溢れ

一盞濁醪馨　　　一盞 濁醪馨し

翫筆當聊樂　　　筆を翫び当に聊か楽しむべし

詩中醉不醒　　　詩中 酔醒めず

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

　だんだんと　秋の涼しさ　とばり引き　蛍にお別れ
　月落ちて　灯火あかく　風吹いて　屏風もひやり
　真夜中の　この面白味　かぐわしい　お酒を一杯
　筆もって　楽しむとしよう　詩の中じゃ　酔いも醒めない

[29]　参加者　　觀水　


　　七夕示妻　　　　　　　　

萬古相同七夕天　　　万古 相同 七夕の天

閑窓聊羨二星傳　　　閑窓 聊か羨む 二星の伝

合歡歳歳何能數　　　合歓 歳歳 何ぞ能く数へん

勝我將君十五年　　　勝れり 我と君との十五年に

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

　何万年も昔から　牽牛織女のものがたり
　星空ながめて思うこと　羨ましいよねちょっとだけ
　年に一度というけれど　数え切れないほどの夜
　結婚してから十五年　我々なんか目じゃないね

[30]　参加者　　岳城　


　　初秋即事　　　　　　　　

初秋素気滿中庭　　　初秋の素気　中庭に満つ

草莽虫声側耳聴　　　草莽の虫声　耳を側てて聴く

涼月半輪星漢燦　　　涼月　半輪　星漢　燦たり

身辺無事萬方寧　　　身辺　事無く万方　寧し

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

「草莽」：　草むら 　　　　　　　　　　　　　　　

[31]　参加者　　岳城　


　　七夕　　　　　　　　

九漢無雲落落星　　　九漢　雲　無く落落たる星

星河汎汎透明青　　　星河　汎汎　透明の青

一年一度憬逢瀬　　　一年　一度　憬(あこが)れの逢瀬

織女天梭今夜停　　　織女の天梭　今夜　停まる

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

「落落」：　多いさま
「汎汎」：　広々とみなぎるさま
「天梭(てんさ)」：　天上の機織り

[32]　参加者　　�黒浴@


　　初秋即事　一　　　　　　　　

夜空如水滿天星　　　夜空　水の如く　満天の星

院内孤燈涼氣熒　　　院内の孤燈　涼気の熒（ひかり）

叢莽暗蛩聲切切　　　叢莽の暗蛩　声　切々

幽齋獨坐響檐鈴　　　幽斎に独坐すれば　檐鈴響く

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[33]　参加者　　�黒浴@


　　初秋即事　二　　　　　　　　

雨洗殘炎向晩収　　　雨は　残炎を洗ひ　暮に向かって収まる

庭隅籬透早涼流　　　庭隅の籬　透り　早涼流る

四隣人靜相思夕　　　四隣の人　静かに　相思ふ夕べ

絡緯哀鳴轉引愁　　　絡緯の哀鳴　転た愁ひを引く

　　　　　　　　　　（下平声「十一尤」の押韻）

[34]　参加者　　趙文懷（臺湾）　


　　初秋即事　一　　　　　　　

一枕西風夢境幽，　　　

客懷領略故園秋。　　　

蓴鱸芳味猶沾齒，　　　

山水晴光宛在眸。　　　

魂自飄飄歸去後，　　　

身經曆曆記從頭。　　　

當年共友登高處，　　　

俯瞰湘江錦浪流。　　　

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[35]　参加者　　趙文懷（臺湾）　


　　初秋即事　二　　　　　　　

秋染層林月一痕，　　　

泉音如訴繞孤村。　　　

掃來楓葉烹茶葉，　　　

修去頑根補慧根。　　　

興致常依山水醉，　　　

情柔總覺自然純。　　　

時艱激我多情筆，　　　

留得清心傲骨存。　　　

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[36]　参加者　　常春　


　　初秋即事　　　　　　　　

籬落蟲聲側耳聽　　　籬落の虫声　耳を側だてて聴き

野邊荒徑見蜻蜓　　　野辺の荒径　蜻ていを見る

書生放浪懷中痩　　　書生放浪　懐中痩せ

林屋疎窓宿旅亭　　　林屋疎窓　旅亭に宿す

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

　「米を出しな、炊いてやるよ」と婆さんの声。
　だが、お菜だけもらって持参のパンを齧ったことを想い出しての作。
　宿は湖畔にある高校の寮、昭和２３年秋である。

[37]　参加者　　常春　


　　初秋訪原爆資料館　　　　　　　　

資料館内改場形　　　資料館内　場形改まる

七十三年時惨停　　　七十三年　時　惨ましく停まる

再訪倭人人後續　　　再訪の倭人　人後に続き

初回碧眼眼中釘　　　初回の碧眼　眼中に釘す

公園折鶴清鐘響　　　公園の折鶴　鐘の響き清らか

曬骨殘樓鎮降霊　　　曬骨の残楼　降霊鎮まる

非核希求原爆忌　　　非核希求す　原爆忌

立秋切想萬邦寧　　　立秋　切に想う　　万邦の寧を

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

　７月２９日台風一過の広島、新装の原爆資料館は混んでいた。
　３Ｄを駆使した原爆前後の街の変化、車馬行きかう街が一瞬に廃墟となる。

　数多の資料、その説明を食い入るように見つめる外国人の姿が目立った。
　すべて欧米系の人。アジア系は目立たない。

　日本人の流れはスムーズ。再訪も多いのだろう。僕自身前回来たのは２０年ほど前。
　館を出て、平和公園、ここでも外人の姿に圧倒された。
　原爆の街広島のイメージが国際的に定着したのであろう。

　８月６日広島の日、そして翌７日立秋であった。

[38]　参加者　　常春　


　　七夕（追隼二号）　　　　　　　　

何處龍宮尋仰天　　　リュウグウ何処　天を仰いで尋ねれば

流星瞬息線描鮮　　　流星瞬息　線描鮮やか

織烏嬰貮隼橋架　　　織烏の嬰貳　隼橋架けんとす

高犒凱還収載牽　　　高く犒わん　凱還収載牽くを

　　　　　　　　　　（下平声「一先」の押韻）

「織烏」：　太陽
「嬰貮」：　めぐる小個体、リュウグウを指す。貮はイトカワに次ぐ二番目の目標を示す。

　リュウグウは、最長部９００�b程度。太陽系の極小の遊星。イトカワは最長部５３５�b。

　転句結句は，ハヤブサ２号の活躍に七夕を借りた文字遊び。

[39]　参加者　　柳村　


　　初秋　其一　　　　　　　　

一窗燈火滿中庭　　　一窓の灯火　中庭に満つ

百日紅搖送暗馨　　　百日紅揺れて　暗馨を送る

涼月懸天蕭瑟夜　　　涼月　天に懸かる　蕭瑟の夜

無聊倚几聽檐鈴　　　無聊　几に倚り　檐鈴を聴く

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[40]　参加者　　柳村　


　　初秋　其二　　　　　　　　

雨洗餘炎山色青　　　雨は余炎を洗ひ　山色青し

吟懷沸沸坐孤亭　　　吟懐　沸沸　孤亭に坐す

新秋爽氣微涼動　　　新秋の爽気　微涼動き

百日紅搖占一庭　　　百日紅揺れて　一庭を占む

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[41]　参加者　　調布Ｔ．Ｎ　


　　初秋即事　　　　　　　　

高樹殘蝉噪夕陽　　　高樹の殘蝉　夕陽に噪ぎ

天空新雁作群翔　　　天空新雁　群を作して翔ける

察知白帝來當地　　　察知す　白帝の當地に来るを

獨坐幽思涼夜長　　　獨り坐し幽思す　涼夜長し

　　　　　　　　　　（下平声「七陽」の押韻）

　猛暑が去り涼やかな風が吹く秋の夜は長く、色々と思いを巡らし時間が経つのも忘れます。

[42]　参加者　　岳峰　


　　初秋即事（皎月灑灑）　　　　　　　　

秋涼一夕聽連筝　　　秋涼一夕　連筝を聴く

院落草蟲含露鳴　　　院落草虫　露を含んで鳴く

皎月玲瓏想千載　　　皎月玲瓏　千載を想ふ

深松颯颯到三更　　　深松颯颯として　三更に到る

　　　　　　　　　　（下平声「八庚」の押韻）

[43]　参加者　　岳峰　


　　初秋即事（漸次入秋）　　　　　　　　

細草啾啾犬吠聲　　　細草啾啾として　犬吠の声

十三夜月見秋生　　　十三夜の月　秋生ずるを見る

逍遥尋處桂香裡　　　逍遥尋ぬる処　桂香の裡

一片感懷涼意盈　　　一片の感懐　涼意盈つ

　　　　　　　　　　（下平声「八庚」の押韻）

[44]　参加者　　ニャース　


　　初秋即事　　　　　　　　

小忙澆水半坪庭、　　　

愛看開花一朶青、　　　

盛夏暑中將過去、　　　

蚊香不厭訪蜻蜓。　　　

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[45]　参加者　　翠空　


　　初秋即事　　　　　　　　

雨過雲散暮山��　　　雨過ぎ雲散じて暮山青し

荷氣細風池畔庭　　　荷気　細風　池畔の庭

夜讀未知先哲訓　　　夜読　未だ知らず先哲の訓

蛩聲切切仰天聽　　　蛩声　切々　天を仰いで聴く

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[46]　参加者　　（桐山堂半田） 健洲　


　　初秋即事　　　　　　　　

午熱消沈涼覆庭　　　午熱消沈して涼庭を覆ふ

西風颯颯夕陽亭　　　西風颯颯たり　夕陽の亭

書窗獨坐閑居老　　　書窓　独り坐す　閑居の老

籬下蟲聲側耳聽　　　何れの処か秋聲　耳を側てて聽く

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[47]　参加者　　（桐山堂半田）輪中人　


　　初秋即事　　　　　　　　

孤往閑村坐小亭　　　閑村を孤往し　小亭に坐す

野風爽氣満中庭　　　野風爽氣中庭に満つ

秋天浩浩黄昏月　　　秋天浩浩として　黄昏の月

蟋蟀愁聲側耳聽　　　蟋蟀の愁声　耳を側てて聴く

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[48]　参加者　　（桐山堂半田）輪中人　


　　七夕　　　　　　　　

小村七夕坐孤亭　　　小村　七夕　孤亭に坐す

籬角秋風霽色冷　　　籬角の秋風　霽色冷やか

銀漢鵲橋清夜興　　　銀漢の鵲橋　清夜の興

牽牛織女會雙星　　　牽牛　織女　双星会す

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[49]　参加者　　（桐山堂半田）醉竹　


　　初秋即事　　　　　　　　

日暮清涼滿小庭　　　日暮　清涼小庭に滿つ

微吟蟋蟀草中聽　　　微吟　蟋蟀　草中に聴く

獨斟長夜�ｪ心酒　　　独り斟む　長夜　心を寛くするの酒

明月新懸更一瓶　　　明月　新たに懸かり　一瓶を更む

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[50]　参加者　　（桐山堂半田）昇洲　


　　初秋山旅　　　　　　　　

山靄浮雲遠峰青　　　山靄　浮雲　遠峰青し

菊花芬郁滿中庭　　　菊花　芬郁　中庭に滿つ

蟲吟日暮暗叢裏　　　蟲吟　日暮　暗叢の裏

孤雁孤村拜二星　　　孤雁　孤村　二星を拜す

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[51]　参加者　　（桐山堂半田） 睟洲　


　　初秋即事（七夕）　　　　　　　　

夜陰涼氣洒窗櫺　　　夜陰　涼気　窗櫺に洒ぎ

珠玉滿天銀漢青　　　珠玉天に満ち　銀漢青し

牛女歡逢鵲橋畔　　　牛女　歓逢す　鵲橋の畔

願常自在會雙星　　　願ふ　常に自在に双星を会せんことを

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[52]　参加者　　（桐山堂半田）眞海　


　　初秋天災襲家屋　　　　　　　　

雲氣天昏煙雨坰　　　雲気　天昏く　煙雨の坰（けい）

梅霖重襲水無停　　　梅霖　重ねて襲ひ　水停まる無し

淤土洪濤入家屋　　　淤土　洪涛　家屋に入る

山容變貌地方腥　　　山容　變貌し　地は方に腥し

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[53]　参加者　　（桐山堂刈谷）老遊　


　　初秋即事　　　　　　　　

已拂殘炎夜半庭　　　已に残炎を払ふ　夜半の庭

銀河凛凛隔雙星　　　銀河　凛凛として　双星を隔つ

未歸機女別離恨　　　未だ帰がず　機女　別離の恨み

何日携奩佳士亭　　　何れの日にか奩を携へむ　佳士の亭

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[54]　参加者　　（桐山堂刈谷）聖峰　


　　初秋即事　　　　　　　　

雙星炳煥野燈青　　　双星　炳煥　野灯青し

戀慕雲迷夢幾醒　　　恋慕雲迷ひ　夢幾たびか醒む

秋氣籬邊風弄影　　　秋気　籬辺　風影を弄す

清涼七夕醉魂馨　　　詠吟　東壁　酔魂馨し

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[55]　参加者　　（桐山堂刈谷）Ｔ．Ｋ　


　　初秋即事　　　　　　　　

梧竹當窗涼滿庭　　　梧竹　窓に当たり　涼庭に満つ

碧花棚底蟋聲聽　　　碧花　棚底　蟋声聴く

今宵七夕秋天霽　　　今宵　七夕　秋天霽れ

萬里茫茫銀漢青　　　万里茫茫　銀漢青し

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[56]　参加者　　（桐山堂刈谷）藤佳　


　　七夕　　　　　　　　

天空銀漢隔雙星　　　天空　銀漢　双星隔つ

悲話傳承涙自零　　　悲話　伝承　自ら涙零つ

今昔願箋添竹葉　　　今昔　願箋　竹葉に添ふ

初秋風爽水邊亭　　　初秋風爽やかに　水辺の亭

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[57]　参加者　　（桐山堂刈谷）松閣　


　　初秋即事　　　　　　　　

書窗傾耳草邊聽　　　書窓　耳を傾け　草辺に聴く

喞喞新蛬占半庭　　　喞喞たる新蛬　半庭を占む

銀漢溶溶眉月上　　　銀漢溶溶として　眉月上り

約期一夜見威靈　　　期を約す一夜　威霊を見る

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[58]　参加者　　桐山人　


　　七夕　　　　　　　　

颯颯秋風涼覆庭　　　颯颯たる秋風　涼は庭を覆ふ

今宵巧夕滿天青　　　今宵　巧夕　満天青し

牽牛織女隔年會　　　牽牛　織女　年を隔てて会す

何奈妍妍河漢星　　　何奈ぞ　妍妍たる河漢の星

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）

[59]　参加者　　桐山人　


　　初秋即事　　　　　　　　

畦徑田坡草露零　　　畦径　田坡　草露零つ

携孫歩歩至黌庭　　　孫を携へて　歩歩　黌庭に至る

西風輕合體操曲　　　西風　軽やかに合す　体操の曲

秋在清晨一閃泠　　　秋は清晨一閃に在りて泠し

　　　　　　　　　　（下平声「九青」の押韻）