作品番号 2025-61
迎新年
朔旦陽和瑞氣浮 朔旦は陽和にして瑞気浮かぶ
前年天禍好消憂 前年の天禍 好し憂を消さん
千官交替添新夢 千官の交替は 新夢を添え
椒酒陶然賦遠游 椒酒 陶然 遠游を賦す
<解説>
元旦はのどかな春の気候で、めでたい気も辺りに満ちている
前年の天災(能登の地震・水害)の心配もあるが、それはそれとして正月気分に任せて一時的に忘れることにしよう
多くの議員が交替したので、新しい夢を持たせてくれることを期待する
屠蘇に酔ってうっとりした気分になり、遠く游びに出かけたことを作詩する。
作品番号 2025-62
迎新年
孤鳥悲啼除夕村 孤鳥悲しげに啼く除夕の村
C閑霜降国ロ痕 清閑として霜降りる緑苔の痕
夜中何處鐘聲至 夜中何れの処よりか鐘声至り
慰撫憂愁淨化魂 憂愁を慰撫して魂を浄化す
作品番号 2025-63
迎新年
幻否紅燈海 幻や否や 紅灯の海
春聯各在門 春聯 各(おのお)の 門に在り
嘉肴堆玉俎 嘉肴 玉俎(ぎよくそ)に堆(うづたか)く
美酒浹金樽 美酒 金樽(きんそん)に浹(あまね)し
禱地殃都滅 地に祷(いの)る 殃(わざは)ひ 都(すべ)て滅びんことを
祈天祿永存 天に祈る 祿(さいは)ひ 永く存(あ)らんことを
陳牢猶拂曉 牢を陳(つら)ぬるは 猶ほ払暁
撤器已黃昏 器を撤するは 已に黄昏
<解説>
幻なのか、それとも現実なのか。海かと思うほど大量の赤ちょうちんが飾られている光景は。
めでたい文句を書いた赤い紙は、家々の門や扉に貼られている。
立派なごちそうは、いけにえを載せる台にうずたかく積み重ねられ、
芳醇な酒は、黄金のたるいっぱいに詰まっている。
大地の神には、すべての災いがなくなるようにと祈り、
天の神には、幸せがいつまでも続くようにと祈る。
豪華な食事を並べるころには、まだ夜が明けきらず、
(宴会を終えて)からになった器を取り下げるころには、もう日が暮れてしまっている。
「紅灯」: 赤色の提灯。
「春聯」: めでたい文句を書いた赤い紙。正月を祝うために、門の両側や扉などに貼る。
「嘉肴」: おいしい料理。特に、酒のつまみについて用いる。
「玉俎」: 祭りや宴会の場で、いけにえを載せる台。
「金樽」: 黄金の酒樽、または美しい酒樽。
「牢」: 立派なごちそう。豪華な料理。牢屋のことではなく、「大牢」などの「牢」と同じ。
「払暁」: 夜明け。明け方。
「黄昏」: 夕暮れ時。
作品番号 2025-64
迎新年
陶然眼閲此迎新 陶然として眼に閲すれば此こに新を迎ふ
門巷風和淨莫塵 門巷風和らぎ浄く塵莫し
自老増齡身尚健 自ら老いて齢を増せども身尚すこやかなりて
履端獨喜太平民 履端独り喜ぶ太平の民
作品番号 2025-65
新年作
壇前酒一尊 壇前 酒一尊、
及見飾松門 松を飾る門を見るに及ぶ。
白髪長生寂 白髪 長生寂しく、
朋友訃報存 朋友 訃報存する。
愛妻乾皿笑 愛妻 皿を乾かし笑い、
老母入茶呑 老母 茶を入れ呑む。
宅室陽深射 宅室 陽深く射し、
喫煙浴日溫 喫煙 日を浴びて温か。
作品番号 2025-66
立春
創詩持筆紙 詩を創らんと筆紙を持ち、
散策出柴垣 散策 柴垣を出る。
足下遲霜白 足下 遅霜白く、
枝梢旭日溫 枝梢 旭日温か。
裏庭椿萎露 裏庭 椿露に萎み、
南路杏開園 南路 杏園に開く。
不遠東風至 遠からず東風至る、
春萌留五言 春萌 五言に留めん。
作品番号 2025-67
乙巳元旦作
人間四十八年生 人間 四十八年の生
天運兩宜陰與晴 天運 両つながら宜し 陰と晴と
可憐今日曉光裏 憐れむべし 今日 暁光の裏
歳歳春風心自輕 歳歳の春風 心自づから軽し
<解説>
この世に生をうけてから ことしで四十八年め
そらは晴れたり曇ったり どんな天気もまあいいさ
素晴らしいかなきょうの日の 朝の光を吹きわたる
年々変わらぬ春風に 心も自然と軽くなる
作品番号 2025-68
新年雜詠
天氣快晴青旆翻 天気 快晴 青旆翻り
行求杯酒已先溫 行きて杯酒を求むれば 已に先づ温かなり
大家好好新年好 大家好好 新年好
今日不憎人語喧 今日は憎まず 人語の喧しきを
<解説>
天気快晴見上げれば そらには酒屋ののぼり旗
入って一杯頼んだら 程良い加減に温かい
やあやあ皆さんおめでとう どうもハッピーニューイヤー
やけにうるさい人声も 今日のところは気にならぬ
作品番号 2025-69
迎新年
開歲誰無喜 開歳 誰か喜び無からん
方聞鳥語繁 方に聞く 鳥語の繁きを
韶光適心意 韶光 心意に適ひ
淑氣滿乾坤 淑気 乾坤に満つ
酌盡十千酒 酌み尽す 十千の酒
尋來三兩村 尋ね来る 三両村
春風芳草路 春風 芳草の路
緩步日暾暾 歩を緩うすれば 日暾暾たり
<解説>
喜ばない わけはないよね
ちょうど今 鳥も囀り
年明けの めでたい空気
思うまま 世界に満ちる
ぜいたくに きこしめしたら
村々を 尋ねてまわり
春風に 足を止めれば
お日さまも 輝いている
作品番号 2025-70
賀年
雖老今猶三趣留 老いたりと雖も 今猶ほ三趣留む
吟詩嗜酒楽覊遊 詩を吟じ酒を嗜み 覊遊(きゆう)を留む
随心随意因循性 随心随意 循性に因る
百壽目標何事求 百寿の目標 何事ぞ求めん
作品番号 2025-71
迎新年念能登
能登新歲憚嘉言 能登の新歳 嘉言を憚る
興復遲遲生路昏 興復遅々として 生路昏し
何赦怛然苛政酷 何ぞ赦さん 怛然苛政の酷きを
嚴風寒烈倘亡魂 厳風寒烈 亡魂倘ふ
作品番号 2025-72
迎新年
五雲瑞鶴萬家門 五雲瑞鶴 万家の門
新掲日章開祝樽 新たに日章を掲げて 祝樽を開く
翁媼日常俄變轉 翁媼の日常 俄に変転
團欒微酔戯慈孫 団欒微酔 慈孫と戯る
作品番号 2025-73
迎新年
到老歸ク迎六春 老いて帰郷し 六春を迎ふ
庭梅勿隨我衰身 庭梅 我が衰身に随ふこと勿かれ
願和氣象停爭戰 願はくは気象和らぎ 争戦停(や)み
安泰安心天地人 天地と人の安泰安心ならんことを
作品番号 2025-74
送歳
懇筆春聯後 懇に春聯を筆して後
逍遙區巷間 區巷の間を逍遙す
梅芳猶未至 梅芳、猶ほ未だ至らず
歲暮墨山 歳は墨青の山に暮れん
作品番号 2025-75
新春作
春鴉啼碧落 春鴉、碧落に啼き
晨日和行人 晨日、行人と和す
無作鄽頭席 作すこと無し 鄽頭の席
漫然思歳新 漫然、歳の新たなるを思ふ
作品番号 2025-76
立春新詠
春陽炙背太温柔 春陽 背を炙れば 太だ温柔
終日安居心事悠 終日 安居して心事悠なり
不管山廬無客訪 管せず 山廬客の訪ふ無きを
愛花談鳥擅風流 花を愛で 鳥と談じ 風流を擅(ほしいまま)にす
作品番号 2025-77
立春
暖律殷勤勤試解寒,
冰澌猶結北欄干。
梅腮早慣三分泪,
柳眼難窺半額歡。
幽竹影疏燈欲上,
素瓷香裊夜將闌。
拾階不管月深淺,
柳眼難窺半額歡。
作品番号 2025-78
新年書懷 一
改歳今朝萬物元 改歳の今朝 万物元(はじ)まる
東風習習野人門 東風 習習 野人の門
鳴鶯笑語梅花信 鳴鴬 笑語 梅花の信
纔有C香瑞靄村 纔かに清香有り 瑞靄の村
作品番号 2025-79
新年書懷 二
院落C閑野叟園 院落 清閑 野叟の園
和風瑞氣祝三元 和風 瑞気 三元を祝す
此生覺老光陰急 此生 老を覚ゆ 光陰急に
芳草欣欣萬物暄 芳草 欣欣 万物喧なり
作品番号 2025-80
正月偶成
韶景三朝旗影翻 韶景 三朝 旗影翻り
年頭賀宴笑聲繁 年頭の賀宴 笑声繁し
馬齡八秩長途夢 馬齢八秩 長途の夢
馥郁臘梅春意暄 馥郁たる臘梅 春意暄(あたた)かなり
作品番号 2025-81
歲朝卽事
嚮朝課罷出柴門 嚮朝 課罷(かは) 柴門を出づ
先賽ク~心自溫 先ず郷神に賽し 心自ずから温かなり
玉暦回來初旭上 玉暦 回り来りて 初旭上り
蓬蓬瑞氣滿乾坤 蓬蓬たる瑞気 乾坤に満つ
作品番号 2025-82
新年偶作 一
東風吹到攪梅根 東風吹き到り 梅根を撹し
花蕾含香生氣存 花蕾 香を含んで 生気存す
喜壽迎來身幸健 喜寿迎へ来たり 身幸ひ健なり
陜ホ椒酒賀三元 閨iしず)かに椒酒を斟み 三元を賀す
作品番号 2025-83
新年偶作 二
初陽燦燦照乾坤 初陽燦燦と 乾坤を照らし
紛郁卿雲紫氣屯 紛郁たる卿雲 紫気屯す
野寺履端無別記 野寺の履端 別に記すること無し
梅苞鼓起物光暄 梅苞鼓起し 物光暄(あたた)かなり
「梅苞」… 梅のつぼみ
「鼓起」… (中文で)膨らむ
作品番号 2025-84
新年偶作 三
曾經徒扣利名門 曽経(かつて)徒(いたず)らに叩く 利名(りみょう)の門
堪笑殘生已斂昏 笑ふに堪へたり 残生 已に斂昏
回首道貧寒衲子 首(こうべ)を回(めぐ)らせば 道の貧なる寒衲子(かんのっす)
新正又迓獨傾樽 新正 又迓(むか)へ 独り樽を傾く
「斂昏」… たそがれ 夕暮れ
「寒衲子」… 内容や中身のない禅僧
作品番号 2025-85
歳旦偶作
東風脈脈入梅梢 東風脈脈 梅梢に入り
數點玲瓏綻玉苞 数点 玲瓏 玉苞綻ぶ
賀歳客人談笑去 賀歳の客人 談笑し去り
舊詩又取試推敲 旧詩又た取り 推敲を試む
「苞」… つぼみ
作品番号 2025-86
立春 一
新晴韶景歩芳園 新晴 韶景 芳園を歩けば
琴曲梅花須和樽 琴曲 梅花 須らく 樽に和す
倒扇浮天巓雪茂 扇 天に浮いて倒れ 巓雪 茂る
媼翁談語到黃昏 媼翁 談語 黄昏に到る
作品番号 2025-87
立春 ニ
枝上禽聲隔市喧 枝上禽聲 市喧を隔つ
曉光先照柳垂門 暁光 先づ照らす 柳 門に垂らすを
梅花一里香千斛 梅花 一里 香り千斛
眞是春魁初夢魂 眞に是 春の魁 初夢の魂
作品番号 2025-88
憶乙巳年頭
極東熾烈核軍擴 極東 熾烈 核軍拡
近在混淆千里昏 近在 混淆 千里昏し
切實邦家求廢絶 切実なる邦家 廃絶求むるも
依稀傘下只徒蹲 依稀たり傘下 只徒に蹲る
唯唯裝備導從彈 唯々 装備す 導従の弾
諾諾指揮權黙跟 諾々 指揮の権 黙して跟(したが)ふ
大國動搖今切實 大国の動揺 今切実
即應覺悟緊張褌 即応覚悟せよ 緊張の褌で
作品番号 2025-89
乙巳初夢
自国優先喚 自国 優先の喚き
安便我意歌 安便 我意の歌
委蛇老翻滾 委蛇 老いて翻滾(のたうつ)
對處必除苛 対処 必ず苛だちを除け
作品番号 2025-90
元旦
孫臨考試正専書 孫は考試に臨み 正に書を専らにす
我洗身邊欲算餘 我は身辺を洗ひ 余を算へんと欲す
整整輪廻無順逆 整整たる輪廻 順逆無ければ
屠蘇馥郁一年初 屠蘇馥郁たり 一年の初め
<解説>
孫は入試の正念場で専ら勉強。
我は身辺を整理して残りの時間を考え遺言状を準備する。
整整たる輪廻 順逆無ければ、天に感謝あるのみ。
お屠蘇の芳香に酔う元旦。