2024年の新年漢詩 第1作は 観水 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-01

  令和甲辰新年作        

春風習習向堂吹   春風 習習として 堂に向って吹き

淑氣滿來心自怡   淑気 満ち来って 心自ずから怡ぶ

把筆須書吾所信   筆を把って須く吾が信ずる所を書すべし

新詩會勝去年詩   新詩は会(かなら)ず去年の詩に勝れり と

          (上平声「四支」の押韻)


<解説>

 新春の風そよそよと 部屋の中まで吹き入れば
 めでたき空気が満ち満ちて 自然と楽しくなってくる
 これは是非とも筆執って 思うところを書かないと
 これから作る詩はきっと 去年の詩よりも良い出来と


























 2024年の新年漢詩 第2作は 鮟鱇 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-02

  五絶・甲辰元旦所懷        

龍飛兎歸處,   竜飛んで兔帰るところ,

老骨更延年。   老骨 更に年を延ばす。

夫婦傾椒酒,   夫婦で椒酒を傾けて,

祈求和睦天。   祈り求む 和睦(平和)の天。

          (中華新韻八寒平声の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第3作は 鮟鱇 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-03

  七律・甲辰元旦所懷        

人醒甲辰元旦清,   人 醒めれば甲辰の元旦 清く,

望祈奎運世間興。   望み祈る 奎運(文運)の世間に興るを。

龍生九子才多彩,   竜の生みたる九子は才 多彩にして,

各有千秋筆縱横。   各(おのおの)に千秋ありて筆は縱横。

覓句花間搜雅韻,   句を覓(もと)めて花間に雅韻を捜し,

擧杯月下放吟聲。   杯を挙げて月下に吟聲を放つ。

歡欣詩酒堪延壽,   歓欣す 詩酒は壽を延ばすに堪へ,

共願寰球喜泰平。   共に願ふ 寰球(世界)が泰平を喜ぶを。

          (中華新韻十一庚平声の押韻)

<解説>

龍生九子:四字成語。竜が生む九つの子はそれぞれに才能があり多彩であることをいう。
各有千秋:四字成語。人にはそれぞれに長所があることをいう。
























 2024年の新年漢詩 第4作は 鮟鱇 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-04

  柳梢青・甲辰元旦願文運隆興        

龍生九子,     竜の生みたる九子,

各有千秋,     各(おのおの)に千秋あり,

雄飛此世。     此の世に雄飛す。

我戀繆斯,     我は繆斯(ミューズ)に恋し,

君乘奎運,     君は奎運(文運)に乗り,

競才娯恣。     才を競ひて恣(ほしいまま)を娯(たの)しむ。

   ○              ○

神遊免費堪耽,   神遊は免費(ただ)で耽るに堪へ,

揮柔翰、      柔翰(ふで)を揮ひ、

情玩文字。     情(こころ)のままに文字を玩ぶ。

莫笑壽翁,     笑ふなかれ 寿翁の,

欣然卻老,     欣然と老いを却(しりぞ)け,

更張鵬翅。     更に鵬(おおとり)の翅(はね)を張るを。

          (中華新韻十三支仄声の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第5作は 鮟鱇 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-05

  瑤華・甲辰元旦所懷        

龍生九子,     竜の生みたる九子,

各有千秋,     各(おのおの)に千秋ありて,

抱風雲之志。    抱けり 風雲の志。

皆從賦性,     皆 賦性に従ひ,

張壯翼、      壮翼を張り、

勇往直前出世。   勇しく直前(まっすぐ)に往きて世に出づ。

企業戀、      企業して恋す、

財神才智。     財神の才智に。

或入迷、      或ひは入りて迷ふに、

詩路堪登,     詩路は堪へり 登りて,

喜愛講文玩字。   文を講じ字を玩ぶを喜び愛するに。

   ○             ○

少傾椒酒醺然,   少しく椒酒を傾けて醺然たるに,

憶石火光陰,    憶(おも)ふ 石火の光陰,

似箭飛逝。     箭(や)の飛びて逝けるに似るを。

厭離穢土,     厭離穢土(おんりえど),

求寡欲、      欲を寡(すく)なくするを求め、

卻棄窮奢極侈。   奢を窮め侈を極むるを却(しりぞ)け棄つ。

但無功譽,     ただ功誉無く,

轉寂寞、      うたた寂寞、

灰心如死。     灰心 死せる如し。

坐歳朝、      歳朝に坐し、

重振精神,     重振精神(気を取り直し),

走筆面臨箋紙。   筆を走らせ箋紙に面と臨(むか)ふ。

          (中華新韻十三支仄声の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第6作は 地球人 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-06

  新年漢詩        

蓬蓬淑気一天晴   蓬蓬たる淑気一天晴れる

雪解春風草欲萌   雪解け春風草萌えんと欲す

快飲屠蘇宜買酔   快飲屠蘇宜酔いを買うべし

庭中玉骨一鶯鳴   庭中玉骨一鶯鳴く

          (下平声「八庚」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第7作は 東山 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-07

  甲辰新春(一)        

新旦CC多所思   新旦清々たるも 思ふところ多し

僅斟淑酒慼傾危   僅かに淑酒を斟んで 傾危を慼ふ

佞臣猾賊侵凌甚   佞臣猾賊 侵凌すること甚だし

切祷~龍護國基   切に祷る ~龍の国基を護らんことを

          (上平声「四支」の押韻)




























 2024年の新年漢詩 第8作は 東山 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-08

  甲辰新春(二)        

C峻旭旗壤俗塵   清峻たる旭旗 俗塵を壤ふ

應迎六紀祝回春   応に六紀を迎へて 回春を祝ふべし

些慚曠歳喜家泰   些か曠歳を慚ずるも 家の泰なるを喜び

微酔一吟正氣新   微酔一吟 正気新たなり

          (上平声「十一真」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第9作は 東山 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-09

  弔悼能登大地震犠牲者        

家山久闊履春慶   家山の久闊 履春の慶び

一瞬何尤災異殃   一瞬何の尤か 災異の殃ひ

孝子歸寧妻子伴   孝子帰寧するに 妻子を伴ひ

老親盛膳笑顔光   老親盛膳 笑顔光る

悲心切切無辜怨   悲心切々 無辜の怨

永訣哀哀萬煥慷   永訣哀哀 万煥の慷

噫我恨天天黙默   噫 我天を恨むも 天黙々

難離魂魄啼彷郷   離れ難き魂魄 啼いて郷を彷ふ

          (下平声「七陽」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第10作は 岳城 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-10

  立春偶成        

今年復報異常冬   今年 復た 報ず異常の冬と

暖気立春山雪溶   暖気の立春 山雪 溶る

香散梅花紅白亂   香 散ず梅花 紅白 乱れ

喬遷鶯韻洗塵胸   喬遷 鶯韻 塵胸を洗ふ

          (上平声「二冬」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第11作は 禿羊 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-11

  歳晩偶懐        

老去光陰算亦慵   老い去っては 光陰 算するも亦慵く

一年淡淡既残冬   一年 淡淡 既に残冬

衰躬明歳期何事   衰躬 明歳 何事か期せん

最喜慈孫屢到逢   最も喜ぶ 慈孫の屢々到り逢ふに

          (上平声「二冬」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第12作は 康寧堂 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-12

  看梅懷舊        

喈喈啼烏和春陽   喈喈たる啼烏、春陽と和し

池水潺潺濯麝香   池水、潺潺として、麝香を濯ふ

想忘不然衿又帶   忘れんことを想ふも然らず、衿又た帶

欲思無憶舊交裳   思はんと欲すれど憶ふ無し舊交の裳

          (下平声「七陽」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第13作は 常春 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-13

  新年醉詞        

海外凄惨攻   

国内何汚小金庫   

嗔喝乞神龍   

          (上平声「一東」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第14作は 柳村 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-14

  甲辰元旦        

旭日曈曨春又回   旭日 曈曨 春又回(めぐ)る

靈峯玉立白崔嵬   霊峯 玉立して 白崔嵬

三元淑氣生何處   三元の淑気 何れの処にか生ずる

先吐暖香庭上梅   先ず吐く 暖香 庭梅の梅

          (上平声「十灰」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第15作は 真瑞庵 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-15

  新年試筆        

東天欲曉瑞雲滋   東天 暁ならんと欲し 瑞雲滋し

萬壽千新歳披   万寿 千祥 新歳披く

何用仙丹長命藥   何ぞ用ひん 仙丹 長命の薬

一杯椒酒一來嬉   一杯の椒酒 一来の嬉び

          (上平声「四支」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第16作は 杜正 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-16

  令和甲辰年御題「和」        

元朝早起瑞雲多   元朝 早起すれば 瑞雲多く

柏酒椒盤一瞬過   柏酒 椒盤 一瞬に過ぐ

四海諸方交戰火   四海の諸方は戦火を交はす

肇年祈願萬邦和   肇年 万邦の和を祈願す

          (下平声「五歌」の押韻)


「柏酒」: お屠蘇
「椒盤」: 正月料理を盛った皿
「四海」: 世界
「諸方」: 多くの国々
「肇年」: 年のはじめ























 2024年の新年漢詩 第17作は 緑風 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-17

  新年        

齡九秩微長命禮   齢九秩 微かに長命に礼

回頭萬象感懷豊   頭を回らせば 万象 感懐滋し

老猶欲遂風流樂   老いて 猶ほ遂ふ 風流の楽しみ

隱遁人生意氣融   隠遁の人生 意気融なり

          (上平声「一東」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第18作は 柳田周 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-18

  新歳        

生年不満百   生年 百に満たず

幾許我餘齡   幾許ぞ 我が余齢

老倍光陰速   老いて倍(ますま)す光陰速く

所爲遲似停   所為の遅きは停まるに似たり

          (下平声「九青」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第19作は 凌雲 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-19

  新年作詩 其一        

転地明湾里   転地する明るい湾の里、

春来緑柳枝   春来れば 緑柳枝。

読書耽甘美   読書しては甘美に耽り、

対遇拓新奇   対偶 新奇を拓かん。

斟酌遺山句   斟酌する 遺山の句、

閑吟甌北詩   閑吟 甌北の詩。

帰還初学道   帰還 初学の道、

模古保矜持   古に模すに矜持を保たん。

          (上平声「四支」の押韻)


<解説>

 横須賀に転居して初めて本格的に作詞しました。
 横須賀なので軍港が近く部屋の窓から時折軍艦が通り過ぎたりするのが見えます。

























 2024年の新年漢詩 第20作は 凌雲 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-20

  新年作詩 其二        

二月風波雪   二月 風波の雪、

低雲接海回   低雲 海に接して回る。

峻崖松籟改   峻崖 松籟改まり、

拙宅暮寒来   拙宅 暮寒来たれり。

護岸堤礁暗   護岸 堤礁暗く、

艦船霧笛催   艦船 霧笛催せり。

無星非月出   星なく月の出るに非ば、

胸裏詠花開   胸裏 花開くを詠まん。

          (上平声「十灰」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第21作は 観水 さんからの作品です。
 観水さんからは已に新年漢詩をいただいています。
 今回の詩は一般投稿ということですが、新年早々の出来事でしたので、新年漢詩の枠で紹介させていただきました。

作品番号 2023-21

  令和六年能登半島地震有感        

誰知此景不傷~   誰か此の景を知りて神を傷めざらん

眼界荒涼震後晨   眼界 荒涼たり 震後の晨

墜瓦壞牆堆石礫   墜瓦 壊牆 石礫堆く

空車虚屋舞埃塵   空車 虚屋 埃塵舞ふ

點燈給水何無道   灯を点じ 水を給するに 何ぞ道無からん

配食補衣當有隣   食を配し 衣を補ふに 当に隣有るべし

偕對艱難所能越   偕に艱難に対(むか)ひて 能く越ゆる所

相期早晩訪時珍   相期す 早晩 時珍を訪ふを

          (上平声「十一真」の押韻)


<解説>

 能登半島地震については、支援のため現地入りしている同僚も多くいますが、地勢の条件もあり、なかなか復旧復興が進まないと聞いています。
 直に現地の事情を知らないでの能天気な感懐との批判もあるかもしれませんが、少しでも希望を持てるような詩をお寄せしたいと思いました。

 この有様に誰もみな 胸をいためずにいられない
 大地震から一夜明け 町々すっかり荒れ果てた
 屋根も垣根も崩れ落ち 瓦礫重なり山となり
 家も車も空っぽで 塵とほこりが舞うばかり
 電気・水道・ガス・通信 何とか手立てを尽くしてる
 食料・衣類・必需品 心を寄せる人がいる
 どんな難儀も助け合い 一緒に乗り越えられるはず
 今から約束また後で ご馳走食べに行きますよ


























 2024年の新年漢詩 第22作は 観水 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-22

  憶能登        

連山帶雪映蒼穹   連山 雪を帯びて 蒼穹に映じ

向海千村産物豐   海に向ふ千村 産物豊かなり

來日須遊復興處   来日 須く復興の処に遊ぶべし

倶欣盛饌醉春風   倶に盛饌を欣んで 春風に酔はん

          (上平声「一東」の押韻)


<解説>

 雪を抱いた山並みの ひときわ映える青い空
 海に連なる村々の もたらす恵みの豊かさよ
 復興の日を見きわめて 是非とも行かねばなるまいよ
 一緒にご馳走囲んでさ 春吹く風に酔わんかな


























 2024年の新年漢詩 第23作は桐山堂半田の 酔竹 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-23

  甲辰歳朝        

辛盤椒酒飾糕臺   辛盤 椒酒 飾糕(かがみもち)の台

家眷團欒笑幾回   家眷 団欒 笑ふこと幾回ぞ

瘟疫猛威衰退著   瘟疫の猛威 衰退著しく

歳晨老幼喜無災   歳新 老幼 災ひ無きを喜ぶ

          (上平声「十灰」の押韻)


<解説>

 やっとコロナの猛威が下火となり、親族集い新年の宴を開く。

























 2024年の新年漢詩 第24作は桐山堂半田の 福江 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-24

  甲辰即事        

曉天正旦彩雲開   甲辰の正旦 彩雲開く

ク寺經聲院落槐   郷寺 経声 院落の槐

賀客盤肴傾柏葉   賀客 盤肴 柏葉を傾ける

煕煕春意萬方來   煕煕として春意 万方に来たる

          (上平声「十灰」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第25作は桐山堂半田の 福江 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-25

  詠甲辰        

皇風日報春來   青皇の風日 春を報じて来る

庭樹絳梅香滿回   庭樹 絳梅 香満ちて回る

閑坐想朋揮禿筆   閑坐し 朋を想ひて 禿筆を揮ふ

淨窗和氣絶塵埃   浄窓和気 塵埃を絶つ

          (上平声「十灰」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第26作は桐山堂半田の 向岳 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-26

  正月        

三元東苑一枝梅   三元 東苑 竹松梅

意氣C新重酒杯   意気 清新 酒杯を重ぬ

有限命根生類理   命根には限り有ることは 生類の理なり

悠悠自適世途咍   悠悠 自適で 世途を咍しむ

          (上平声「十灰」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第27作は桐山堂半田の 向岳 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-27

  新歳祈願        

百八鐘聲歳月回   百八の鐘声で 歳月回る

忽迎正旦賀筵咍   忽ち迎ふ 正旦 賀筵を咍しむ

嫗翁偏喜孫成長   嫗翁 偏に喜ぶ 孫の成長

親族倶祈皆息災   親族 倶に祈る 皆の息災

          (上平声「十灰」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第28作は桐山堂半田の 輪中人 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-28

  蘇江頭迎新年        

旭日韶光掃海來   旭日 韶光 海を掃ひて来たる

東風春意瑞雲開   東風 春意 瑞雲開く

ク朋康健舊交久   郷友 康健 旧交久し

微暖履新蘇水隈   微暖 履新 蘇水の隈

          (上平声「十灰」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第29作は桐山堂半田の 輪中人 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-29

  韶光正旦        

新晴旭日映江臺   新晴 旭日 江に映ずる台

遙望紅雲掃面來   遥望す 紅雲 面を掃うて来たる

滿目春粧氣兆   満目の春粧 気兆し

花香馥郁早梅開   花香 馥郁たり 早梅開く

          (上平声「十灰」の押韻)


























 2024年の新年漢詩 第30作は 聲希 さんからの作品です。
 

作品番号 2023-30

  年頭所感        

陽出東峰彩歳晨   陽は東峰より出で 歳晨を彩る

謝天椒酒氣C新   天に謝して椒酒 気 清新なり

賀書未少交情切   賀書は未だ少なからず 交情切たり

自覺朋顏緩頬頻   自から朋顔覚え 頬緩むこと頻りなり

          (上平声「十一真」の押韻)