2022年の投稿詩 第301作は静岡芙蓉漢詩会の K・M さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-301

  重陽        

客裏殘燈古岸邊   客裏 残灯 古岸の辺

菊香凝霧倍凄然   菊香 霧に凝りて倍して凄然たり

秋衣耐冷想明月   秋衣冷たさに耐へ 明月に想ふ

親故奈何重九天   親故は奈何ぞ 重九の天

          (下平声「一先」の押韻)


 旅で灯りも消えそうな古岸で
 菊香が深い霧となって寂しさを増す
 秋衣は寒さに耐えて 明月に想う
 親や友達はこの重陽の日にどうしているかなぁ
























 2022年の投稿詩 第302作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-302

  散策        

爺婆意投合   爺婆(じじばば) 意投合し

出立勿蹌踉   出立 勿ち蹌踉(そうろう)

眼樂八方景   眼は楽しむ 八方の景

蹣西跚北望   西に蹣し北に跚して望む

胸期五千歩   胸は期す 五千歩

休石憩叢常   石に休み 叢に憩ふを常とす

足重喘牛緩   足重くして喘牛の緩か

心輕雀躍昂   心軽やか 雀躍の昂(たかぶ)り

得帰茶一二   帰り得て 茶一二

三碗潤枯腸   三碗 枯腸を潤す

          (下平声「七陽」の押韻)


 夫婦合わせて百八十歳、お互いの行動は日々縮小されていく。


 さあ散歩だよと
 出れば よよよろ
 よろめきながらも
 眺めは楽し
 休み休みに
 歩数確かめ
 歩み遅るも
 もうあと何歩
 帰った喜び先ずお茶だ
 三杯ごくごく あー美味しい

 第三四句と第五六句とを対とする、隔句対とした。























 2022年の投稿詩 第303作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-303

  夏椿(沙羅)        

朝開夕散華   朝(あした)に開き 夕(ゆうべ)に散華

在地白無邪   地に在りて白くして 無邪

清楚始終美   清楚 始終の美

沙羅五辨花   沙羅 五弁の花

          (下平声「六麻」の押韻)


 沙羅樹は、インド原産の常緑高木、フタバガキ科、ラワン材の一種である。
 釈尊涅槃の際、臥床の四方にあった沙羅樹が合して双樹となったという。
 我が国では夏椿を沙羅と呼ぶ。
























 2022年の投稿詩 第304作は静岡芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-304

  麥秋        

國家象徴麥秋旙   国家の象徴 麦秋の旙

鼓舞傳來義勇魂   鼓舞す 伝へ来たる義勇の魂

今年収穫硝煙下   今年の収穫 硝煙の下

來夏此時歌頌喧   来夏 此の時 歌頌喧ならんか

          (上平声「十三元」の押韻)


 空の青麥穂波の黄、ウクライナ国旗には麦秋という言葉が好く合う。
 国連、トルコの仲介により、小麦等穀物輸出は再開されたが、穀物畑の現状は無残。
 来期の作付けから収穫まで平和でありますよう切に祈りたい。

 それにしてもウクライナの抵抗、反撃に瞠目。
 我が国が侵攻された場合果たして国を挙げての防衛あり得ようか。
























 2022年の投稿詩 第305作は静岡芙蓉漢詩会の 岳游 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-305

  光陰一隅        

光陰一過寸心違   光陰一過 寸心違ふ

奉職專修汗欲揮   奉職 專修 汗揮はんと欲す

幼少昌昌携小鬼   幼少昌々として 小鬼を携ふ

壯年兀兀向晴暉   壮年 兀々として 晴暉に向かふ

誰知晩學燈淡   誰か知らん 晩学 青灯淡く

自覺精勤星夜歸   自ら覚ゆ 精勤 星夜に帰る

荏苒霜鬚身已老   荏苒(じんぜん) 霜鬚 身已に老い

餘生幾許巻舒微   余生 幾許(いくばく) 巻舒微(かす)かなり

          (上平声「五微」の押韻)


 工業高校卒業まで勉強は余り好きではなかったが、会社に入ってからは、生産技術部門という勉学せざるを得ない職場となり、今、振り返れば 誠にラッキーな会社生活であったと思われる。 「晶晶」: すみきって輝くさま
「蟲蟲」: 熱気のこもるさま
「荏苒」: 時がゆるゆる進む
「巻舒」: 才能をかくしたり現わしたりする

























 2022年の投稿詩 第306作は静岡芙蓉漢詩会の 岳游 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-306

  有感八十歳        

無端齢八秩   端無(はしな)くも 齢八秩

贏得自由身   贏(か)ち得たり 自由の身

鶴髪呈祥瑞   鶴髪 祥瑞を呈し

皺顔離俗塵   皺顔 俗塵離る

欽欽開壽域   欽々 寿域を開き

緩緩樂清貧   緩々 清貧を楽しむ

永契鴛鴦夢   永契 鴛鴦の夢

奇緣尺蠖伸   奇縁 尺蠖(せきかく)伸ぶ

          (上平声「十一真」の押韻)


 子どもらが育ち大学生になった時から、永く妻と二人で暮らしている。
 子育ては勿論、炊事、洗濯、掃除等妻が殆んどこなしてくれ、感謝の限りである。
 最近朝食の洗い上げ、トイレの清掃、買物、それに昼の食事創作等少しではあるが、実行している現況である。

「欽欽」: つつしむさま
「兀兀」: 努力するさま
























 2022年の投稿詩 第307作は静岡芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-307

  盛夏        

炎塵難耐火雲張   炎塵耐へ難く 火雲張る

朗月開窓無晩涼   朗月窓を開くも 晩涼無し

麥酒杯重催睡氣   麦酒 杯重なりて 睡気催す

曉蟬覺醒自家牀   暁蝉に覚醒 自家の床

          (下平声「七陽」の押韻)


























 2022年の投稿詩 第308作は静岡芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-308

  猛暑        

無風三伏汗濡襟   風無し 三伏 汗襟を濡らす

連日炎塵老不禁   連日の炎塵 老禁(おさえ)えず

節電遂行身限界   節電 遂行するも 身限界

地球異變積憂深   地球の異変 憂ひ積ること深し

          (下平声「十二侵」の押韻)


 異常気象、何が原因か考えさせられます。























 2022年の投稿詩 第309作は静岡芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-309

  悼安倍前首相        

應援魁偉演臺沈   応援の魁偉 演台に沈む

不測非常銃彈音   不測 非常の銃弾音

國葬表明分贊否   国葬 表明するも 賛否分る

奈何追悼問題深   奈何(いかん)ぞ 追悼 問題深し

          (下平声「十二侵」の押韻)


























 2022年の投稿詩 第310作は静岡芙蓉漢詩会の Y・H さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-310

  新秋即事        

暑退凉宵灝氣流   暑退(しりぞ)き 涼宵 灝気(こうき)流る

始聴蟲語意悠悠   始めて聴く 蟲語 意悠悠

追陪簷馬西風奏   追陪する簷馬 西風に奏で

獨坐把杯思故邱   独坐し 杯を把り 故邱を思ふ

          (下平声「十一尤」の押韻)


「簷馬」: 風鈴の一種























 2022年の投稿詩 第311作は静岡芙蓉漢詩会の 子方 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-311

  柴田家之庭        

少時借地種蔬園   少時 地を借りて蔬園を種(う)う

壹畝畦庭傍短垣   壱畝の畦庭 短垣の傍

返路薔薇馨夕照   返路の薔薇 夕照に薫り

胸懐慈訓憶遺恩   胸懐の慈訓 遺恩を憶ふ

          (上平声「十三元」の押韻)


 高一から三年迄、柴田桃圃先生の庭三十坪を借りて、農高のホームプロジェクトで野菜を作った。
 今になって人生の役に立っていると実感する。
























 2022年の投稿詩 第312作は静岡芙蓉漢詩会の 子方 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-312

  紫陽華        

百看不厭爛開花   百看厭はず 爛として開花

行路千紅紫白誇   行路は千紅紫白を誇る

挿穗成長英婉婉   挿穂の成長 英(はな)婉々

復遭野老惜年華   復た遭ふ野老 年華を惜しむ

          (下平声「六麻」の押韻)


 十数年前から穗を挿して畑の周囲へあじさいを植えた。大きな株になって毎年梅雨の時はあざやか。























 2022年の投稿詩 第313作は静岡芙蓉漢詩会の 子方 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-313

  駿河湾深夜景        

一望金波駿海隅   一望 金波 駿海の隅

泰然富嶽架空殊   泰然 富岳 空に架かりて殊にす

人稀釣叟徹宵渚   人稀にして 釣叟 渚にて徹宵

月落流星如雨于   月落ち 流星 雨の如く于(ゆ)く

          (上平声「七虞」の押韻)


 若い頃稲刈りを終え毎晩羽衣の松近くへ釣りに行った。深夜之海は美しかった。























 2022年の投稿詩 第314作は静岡芙蓉漢詩会の 子方 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-314

  訪長樂寺        

昔時長樂煮茶香   昔時 長楽 茶を煮て香(かぐわ)し

誕日先生在故郷   誕日 先生 故郷に在り

展墓傍存上人像   展墓 傍に存す 上人の像

ョ家歸路醉餘芳   ョ家の帰路 余芳に酔ふ

          (下平声「七陽」の押韻)


 昔、思い立ってョ新先生の誕生日に父と魚を持って出かけた。長楽寺のョ家の墓に案内していただいた。