2023年の投稿詩 第271作は 禿羊 さんからの作品です。
 お手紙では、「2019年の冬、まだコロナの流行が話題になる前、トライアスロンが趣味の娘の誘いで台湾環島輪行(台湾一周サイクリング)をやりました。
 そのときの印象です」とのことでした。

作品番号 2022-271

  台灣環島輪行 其一 「出発」        

阿女誘吾環島行   阿女 吾を誘ふ 環島行

痴翁喜喜遂雲征   痴翁 喜喜として 雲征を遂ふ

晴村喧市暮烟湊   晴村 喧市 暮烟の湊

到処詩情老脚軽   到る処の詩情 老脚軽し

          (下平声「八庚」の押韻)


<解説>

 長女愛好鉄人三項運動。

<感想>

 台湾一周をサイクリングで、というすごい計画ですね。
 トライアスロンが趣味というのは、さすが禿羊さんの娘さんですね。それに親孝行。
 章句の「喜喜」、結句の「老脚輕」がお気持ちを十分に表していると思います。

 連作ですので、以下、続けて楽しませていただきます。



2023. 3.31                  by 桐山人
























 2023年の投稿詩 第272作も 禿羊 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-272

  台灣環島輪行 其二 「憩村巷」        

異国輪行若転蓬   異国の輪行 転蓬の若し

炎天迷入巷衢中   炎天 迷ひ入る 巷衢(こうく)の中

廟前老樹爲供翳   廟前の老樹 爲に翳を供し

氷菓陶然坐好風   氷菓 陶然として好風に坐す

          (上平声「一東」の押韻)

























 2023年の投稿詩 第273作も 禿羊 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-273

  台灣環島輪行 其三 「向鵞鑾鼻」        

阿女力蹬牽鈍駑   阿女 力蹬して 鈍駑を牽き

長途南下転山嵎   長途 南下して 山嵎に転ずれば

緑崖一直白波縁   緑崖 一直 白波縁どる

遙向蒼溟海角駆   遙か蒼溟 海角に向ひて駆く

          (上平声「七虞」の押韻)


<解説>

「牽」: 自転車用語、縦列で走行する時、先頭走者は空気抵抗を受けますが、後ろは風除けのおかげで2、3割方軽く走れます。
     これを牽(引)くと表現します。

<感想>

 鵞鑾鼻(がらんぴ)は、台湾最南端の岬で、台湾尾(たいわんび)とも言われる場所ですね。



2023. 3.31                  by 桐山人
























 2023年の投稿詩 第274作も 禿羊 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-274

  台灣環島輪行 其四 「到最南端鵞鑾鼻岬」       

半旬千里到南垠   半旬 千里 南垠に到れば

狂颶怒濤猖曠浜   狂颶 怒濤 曠浜に猖る

哀叫群鴎翻海曙   哀叫の群鴎 海曙に翻り

雲開遠望旭光新   雲開きて 遠望す 旭光の新たなるを

          (上平声「十一真」の押韻)


























 2023年の投稿詩 第275作は 禿羊 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-275

  台灣環島輪行 其五 「台東鹿野郷」        

往昔邦人拓棘叢   往昔 邦人 棘叢を拓き

今時民俗見豳風   今時 民俗 豳風を見る

緩駆緑緑茶園道   緩駆す 緑緑たる茶園の道

閑喫芳芽茅店中   閑に芳芽を喫す 茅店の中

          (上平声「一東」の押韻)


<解説>

 ここは戦前日本人が開拓して、豊かな耕地に作り上げました。神社も復元されています。

























 2023年の投稿詩 第276作は 禿羊 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-276

  台灣環島輪行 其六 「十分天燈」        

喧噪埋渓三百廛   喧噪 渓を埋む 三百廛

墨書競費一銖銭   墨書 競ひて費やす 一銖の銭

喜顔既若得昌福   喜顔 既に昌福を得たるが若し

万願明燈満暮天   万願の明燈 暮天に満つ

          (下平声「一先」の押韻)


























 2023年の投稿詩 第277作は 凌雲 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-277

  誰警笛 其二     (誰かのクラックション 其二)   

高楼悲町景   高楼 悲しげな町景、

坐独想浮遊   坐独り 浮遊を想ふ。

警笛急先響   警笛 先を急いで響き、

尾灯為列流   尾灯 列を為して流る。

関山遼北夢   関山 遼かな北の夢、

都会晩西秋   都会 晩の西の秋。

夕霧如慈雨   夕霧 慈雨の如く、

全包碧影優   全て包んで碧き影優し。

          (下平声「十一尤」の押韻)


<解説>

 以前に投稿した。誰かのクラックションの続編です。
 尾崎豊の「誰かのクラックション」を聞いたことのない人には何を書いたのかぴんと来ないかと思います。

 ムードを書こうかと思ったのですが、その一同様テーマは都会人の孤独と安らぎです。


























 2023年の投稿詩 第278作は 凌雲 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-278

  頌農 其三        

豊年祈孟夏   豊年 孟夏に祈り、

献納酒樽封   献納する 酒樽の封ずるを。

祭主離人里   祭主 人里を離れ、

山雲朴吉凶   山雲 吉凶を朴す。

炎天頻請雨   炎天 頻りに雨を請ひ、

土着代営農   土着 代々農を営む。

降水充耕畔   降水 耕畔を充たし、

並田緑影濃   並田 緑影濃し。

          (上平声「二冬」の押韻)


























 2023年の投稿詩 第279作は 凌雲 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-279

  頌農 其四        

鋤鍬恐水尤   鋤鍬 水を恐れるは尤もなり、

閑日欲農修   閑日 農修を欲さば、

当備三千厄   当に備ふるべし三千の厄、

況知百八憂   況や知らん 百八の憂ひ。

仰天陰雨止   天を仰がば 陰雨止み、

臥地烈風収   地に臥さば 烈風収まる。

近里蜻蜓戻   近里 蜻蜓戻る、

黄昏出穂秋   黄昏 出穂の秋。

          (下平声「十一尤」の押韻)


























 2023年の投稿詩 第280作は 凌雲 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-280

  頌農 其五        

農豊善根芽   農豊かなれば 善根芽ばえる、

恒産不為邪   恒産あれば 邪を為さず。

残暑蝉声響   残暑 蝉声響き、

強光樹影遮   強い光 樹影遮る。

昨宵生啤酒   昨宵 生啤酒、

休息麦塩茶   休息 麦塩茶。

汗額人皆美   額に汗すれば人は皆美しい、

心当作務華   心は当に作務の華なり。

          (下平声「六麻」の押韻)


























 2023年の投稿詩 第281作は 凌雲 さんからの作品です。
 

作品番号 2022-281

  太古王朝滅亡        

上古崩殷雑怪奇   上古の崩殷 怪奇を雑へ、

無尊徳義政朝危   徳義を尊ぶなければ政朝危ふし。

妖狐好酷咍炮烙   妖狐 酷を好み 炮烙を咍(あざわら)ひ、

狡帝耽淫溺鬼姫   狡い帝は淫に耽り 鬼姫に溺れる。

秘恐諫憂逃外国   秘かに諫憂を恐れ 外国に逃れ、

難堪慙愧棄矜持   慙愧に耐へ難くして 矜持を棄つ。

漫過故地遺臣涙   漫ろに故地を過ぎ遺臣涙する、

夏日荒墟麦穂悲   夏日の荒れ墟 麦の穂悲し。

          (上平声「四支」の押韻)


<解説>

   上古の殷王朝の崩壊は怪奇をまじえ語られる。
   徳義を尊ばなければ政治の朝廷は危ないものである。
   妖狐 残酷な事を好み炮烙さえあざ笑うのである。
   狡賢い帝は 淫行に耽り 鬼姫に溺れた。
   秘かに諫言した咎が返ってくるのを恐れ 外国に逃れ。
   慙愧に耐え難くなり 誇りを棄ててしまった。
   たまたま 嘗ての地を通り過ぎることとなった遺臣は涙を流す。
   それと言うのも夏の日差しを浴びて嘗ての王宮の跡地は畑となり、
         麦の穂が悲しげに実っているかのようであった。


 こんな感じで読んでほしいと言う事で前回に続き訳文も添えました。

 殷と夏とかの太古の王朝は存在はしていたらしいのですが詳しい事はよくわからないとされていました。
 その前になると牛頭人身だったり上半身が人間で下半身が蛇だったとかの伝説の王がいたりして、もう神話の中の話です。

 夏傑殷紂などと呼ばれ(暴君の代名詞)とか言われていますが、実際は言われているほどは暴虐ではなかったのではないかと言う説も出てきているらしいです。
 殷の場合滅ぼした周王朝が歴史を編纂したので、尾ひれ背びれ胸鰭までついてしまったのではないかとも言われています。

 これはあくまでも中国の神話であり一応日本人の私としては人の話は眉に唾をつけて聞きましょうと言う事ですかね。

<感想>

 凌雲さんからいただいた詩、すみませんが、まとめて紹介という形にさせていただきます。



2023. 3.31                  by 桐山人
























 2022年の投稿詩 第282作は静岡芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-282

  夏日山居        

久雨俄晴竹意涼   久雨 俄かに晴れて 竹意涼し

山中無夏是仙ク   山中 夏無く 是れ仙郷

溪聲洗耳C風下   渓声 耳を洗ふ 清風の下

午下枕書閑夢長   午下 書を枕にして 閑夢長し

          (下平声「七陽」の押韻)


























 2022年の投稿詩 第283作は静岡芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-283

  秋日郊行        

晴空一碧白雲流   晴空 一碧 白雲流る

信歩西郊赤卒游   歩に信す 西郊 赤卒游ぶ

借問殘炎何處去   借問す 残炎 何れの処にか去る

秋櫻映日滿眸秋   秋桜 日に映じて 満眸の秋

          (下平声「十一尤」の押韻)


























 2022年の投稿詩 第284作は静岡芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-284

  秋夜讀書        

蟲聲滿地暑威疎   虫声 地に満ち 暑威疎なり

茅屋幽庭孤老居   茅屋 幽庭 孤老の居

時啜茶湯秋夜永   時に茶湯を啜る 秋夜永し

一窓明月樂三餘   一窓の明月 三余を楽しむ

          (上平声「六魚」の押韻)


























 2022年の投稿詩 第285作は静岡芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-285

  秋夜吟        

冷露風吹殘柳搖   冷露 風吹いて 残柳揺らぐ

獨聞庭上草蟲驕   独り聞く 庭上 草虫の驕(おご)るを

長空耿耿月如晝   長空耿々 月昼の如し

按句尤宜此半宵   句を按ずるに尤も宜し此の半宵

          (下平声「二蕭」の押韻)


























 2022年の投稿詩 第286作は静岡芙蓉漢詩会の 甫途 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-286

  舊友來訪        

客聲門戸黨朋姿   客聲 門戸 党朋の姿

問疾佳言促早治   疾を問ひ 佳言 早治を促す

視線常常情意篤   視線常々 情意篤し

霑胸失念謝恩辞   胸霑いて失念 謝恩の辞

          (上平声「四支」の押韻)


 耳石が領域から出て眩暈を起した。
 ふらふら歩く姿を見られたらしい。
 早速野菜をもって見舞いに来てくれた。
























 2022年の投稿詩 第287作は静岡芙蓉漢詩会の 甫途 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-287

  麥秋風物移        

郊外農夫忙急姿   郊外 農夫 忙急の姿

田園灌漑聴蛙吹   田園 潅漑 蛙吹を聴く

植秧剪草耐長雨   秧を植え草を剪り長雨に耐ふ

加減水量初夏時   水量を加減す 初夏の時

          (上平声「四支」の押韻)


 農事は門外漢だが、春から夏にかけて「農繁期」といわれて農夫は忙しい。
 今は機械化でアッという間に終わる。
 それでも季節はどんどん過ぎてやたらと急がされている感がある。
























 2022年の投稿詩 第288作は静岡芙蓉漢詩会の 甫途 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-288

  台風        

激甚雷鳴已轉遷   激甚 雷鳴 己に転遷

玄雲塊去月明天   玄(げん)雲(うん) 塊去(かいさ)り 月明の天

颱風一過得安堵   台風一過 安堵を得るも

各地何如憂未眠   各地何如ぞ 憂いて未だ眠れず

          (下平声「一先」の押韻)


 台風と言えば、毎回九州に来襲する。
 今年は春から夏にかけて青森にこれでもか、これでもか、というほど降った。
 その上の台風の雨であった。
























 2022年の投稿詩 第289作は静岡芙蓉漢詩会の 甫途 さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-289

  奈良井街道        

千年古道碧山連   千年 古道 碧山連る

往昔宿場懷舊先   往昔 宿場  懐旧先んず

板屋茅簷魅遊客   板屋(ばんおく) 茅簷 遊客を魅す

溪聲猿嘯舞天鳶   渓声 猿嘯 天に舞ふ鳶

          (下平声「一先」の押韻)


 中山道は山に挟まれて延々と続く。東西歩き続ければ都。
 この地域ではこの道を歩くほかに道はない。
 それでも車の時代に入れば新道ができ、宿や店はおいてけぼりをくった。
 街道、宿は懐古の人で賑わっている。
























 2022年の投稿詩 第290作は静岡芙蓉漢詩会の F・U さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-290

  端午        

南薫輯輯惚N娟   南薫輯輯(しゅうしゅう) 緑娟娟

鯉幟飄揚五月天   鯉幟(りし)飄揚す 五月の天

淺酌蒲觴初節宴   蒲觴(ほしょう)浅酌す 初節の宴

弄璋慶事笑盈筵   弄璋(ろうしょう)の慶事 笑い筵に盈(み)つ

          (下平声「一先」の押韻)


「輯輯」: 風がおだやかに吹くさま
「娟娟」: 美しく清らかなさま
「弄璋」: 男児が生まれること























 2022年の投稿詩 第291作は静岡芙蓉漢詩会の F・U さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-291

  稲荷秋祭祀        

稲雲紛郁耀斜陽   稲雲紛郁 斜陽に耀き

社鼓鼕鼕響滿堂   社鼓(しゃこ)鼕々(とうとう) 響き堂に満つ

荼枳尼天秋祭禮   荼枳(だき)尼天(にてん) 秋祭礼

豐登年穀賀禎祥   豊登の年穀 禎(てい)祥(しょう)を賀す

          (下平声「七陽」の押韻)


「紛郁」: 美しくさかんなさま
「鼕鼕」: 太鼓の鳴り響くさま
「茶枳尼天」: 稲荷神の本地仏とされる
「豊登」: 穀物がゆたかに実ること























 2022年の投稿詩 第292作は静岡芙蓉漢詩会の F・U さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-292

  虔悼道兄 其一        

哀音俄到發新愁   哀音 俄(にわ)かに到り 新愁を発す

寂寂悲風蒿里秋   寂々たる悲風 蒿里(こうり)の秋

一鳥低徊東谷嶺   一鳥低回す 東谷の嶺

夕陽西下水空流   夕陽西に下り 水空しく流る

          (下平声「十一尤」の押韻)


「蒿里」: 葬式のときにうたう歌。墓地
「東谷」: 寺の山号























 2022年の投稿詩 第293作は静岡芙蓉漢詩会の F・U さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-293

  虔悼道兄 其二        

吹起悲風東谷嶺   吹き起こる悲風 東谷の嶺

何爲倏忽耗音傳   何爲(なんす)れぞ倏忽(しゅくこつ)と耗音(こうおん)伝へしとは

訂交半百感恩切   交を訂(むす)ぶこと半百 感恩切に

追憶往時情慼然   往時を追憶すれば情(こころ)慼然(せきぜん)たり

          (下平声「一先」の押韻)


「倏忽」: たちまち。にわかに
「耗音」: 悪い知らせ。訃報
「訂交」: 交友を結ぶ
「慼然」: 悲しみ、痛む。憂えるさま























 2022年の投稿詩 第294作は静岡芙蓉漢詩会の K・K さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-294

  夏栗        

炎天酷暑栗枯多   炎天の酷暑 栗枯(くりが)れ多し

未熟終生小棘和   未熟にて生を終ふ 小棘和(やわら)か

嘗有親朋遭早逝   嘗(かつ)て親朋有り 早逝に遭ふ

吾重馬壽只凡過   吾は馬寿を重ね 只だ凡に過ぐ

          (下平声「五歌」の押韻)


 散歩道には山栗がたくさん落ちています。
 どうして熟さないうちに落ちるのかわかりませんが、将来を期待されていた友人が40代で死んでしまい、あまり優秀でなかった私は、平凡に生きて馬齢を重ねていることを想います。
























 2022年の投稿詩 第295作は静岡芙蓉漢詩会の K・K さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-295

  蟹        

親朋寄蟹舊情尊   親朋蟹を寄す 旧情尊し

煮久香香滿室溫   久しく煮れば香々満室温かなり

黙黙專心穿蓋醬   黙々として専心蓋醤(がいしょう)を穿(うが)てば

殘骸爲塊亂行痕   残骸は塊を為す 乱行の痕

          (上平声「十三元」の押韻)


 親友が旅先の北海道から毛蟹を送ってくれた。
 本当は味噌をすするとしたかったが、平仄の関係で、やむなくこのようになりました。
























 2022年の投稿詩 第296作は静岡芙蓉漢詩会の K・K さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-296

  京都回想        

洛北孤燈比叡山   洛北の孤灯 比叡山

讀書迎曉不厭艱   書を読みて暁を迎へ 艱を厭はず

青雲恃己夢中過   青雲己を恃み 夢中に過ぐ

八十微功得小閑   八十の微功 小閑を得たり

          (上平声「十五刪」の押韻)


 必死に勉強していたころ、比叡山の航空標識灯をよく見上げたものです。
 志は果たせず、たいした功績もなかったが、なんとか一生を無事に終えて、自分なりに悪くない人生だったと思っています。
























 2022年の投稿詩 第297作は静岡芙蓉漢詩会の K・K さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-297

  京都紅灯        

京洛連軒細路隅   京洛軒を連ぬる 細路の隅

開簾借問酒有辜   簾を開きて借問(しゃもん)す 酒は辜(つみ)有りや

艷聲細指頻招我   艷声 細指 頻りに我を招く

不飲今宵不算夫   飲まずんば 今宵 夫(おとこ)に算(かぞ)へず

          (上平声「七虞」の押韻)


 「酒もよう飲まんお人は、男やあらへん」とか何とかいわれて、その気になった頃です。























 2022年の投稿詩 第298作は静岡芙蓉漢詩会の H・S さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-298

  悼紫雲院殿政譽清浄晋壽大居士        

夢絶香消涕涙新   夢絶え 香消え 涕涙新たなり

世論不隔話常彬   世論を隔てず 話は常に彬たり

猶餘見識何非業   猶ほ余す見識 何たる非業ぞ

溫潤慈顔無疆人   温潤の慈顔 無疆の人

          (上平声「十一真」の押韻)


 安倍元首相を偲んでみました























 2022年の投稿詩 第299作は静岡芙蓉漢詩会の H・S さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-299

  夏日偶成        

朱明聞亂蟬   朱明 乱蝉を聞く

晝永火雲連   昼永くして火雲連なる

入夜鳴蛩賑   夜に入って鳴蛩賑ひ

些涼牀臥前   些涼 牀臥の前

          (下平声「一先」の押韻)


























 2022年の投稿詩 第300作は静岡芙蓉漢詩会の K・M さんからの作品です。
 11月28日に静岡市の鎌倉文庫にて合評会を開きました。
 完成作を『芙蓉漢詩集 第31集』としてまとめました。

作品番号 2022-300

  紅葉        

千樹萬枝霜後紅   千樹 萬枝 霜後紅

石苔林隙露玲瓏   石苔 林隙 露玲瓏

惜哉秋日年華促   惜しい哉 秋日 年華促す

墜葉暉暉流緒風   墜葉 暉々 緒風に流る

          (上平声「一東」の押韻)


 千の木々に万の枝が、霜の後に紅となった。
 石の苔 林の間は冷たい露で清らかである。
 惜しいのはこの秋の日、年を促すことだ
 ち葉はきらきらと 名残風が吹いていく――。