作品番号 2020-31
五絶・謹賀新年
子年延壽處, 子年 寿を延ばせしところ,
椒酒滿金杯。 椒酒 金杯に満つ。
共願令和世, 共に願はん 令和の世,
天恩更炳輝。 天恩の更に炳輝せるを。
作品番号 2020-32
五絶・庚子迎春謝天恩
鼠鳴猪遯走, 鼠鳴けば猪は遯走し,
夢醒還延壽。 夢醒めればまた寿を延ばす。
夫婦謝天恩, 夫婦 天恩に謝し,
欣然啜椒酒。 欣然と啜る 椒酒を。
作品番号 2020-33
七絶・庚子新春迎子女
鼠鳴香夢醒新春, 鼠鳴いて香夢 新春に醒め,
延壽喜傾椒酒醇。 寿を延ばし喜び傾く 椒酒の醇なるを。
感謝天公翁嫗喜, 天公に感謝して翁嫗喜び,
歡迎兒女伴孫孫。 歓迎す 兒女(息子と娘)の孫らを伴ふるを。
作品番号 2020-34
七絶・鼠年元旦黄泉醉
鼠鳴聲大猪逃散, 鼠鳴いて声大きければ猪は逃散し,
夢醒樗翁傾祝盞。 夢醒めて樗翁 祝盞を傾く。
孫子未來夫婦歡, 孫と子の未だ来たらずを夫婦歓び,
黄泉元旦天圓滿。 黄泉の元旦 天は円満。
作品番号 2020-35
七絶・庚子三元啜椒酒
鼠鳴聲大猪逃走, 鼠鳴いて声大きければ猪は逃走し,
夢醒三元又延壽。 夢 三元に醒めてまた壽を延ばす。
感謝天公慈老翁, 天公の老翁を慈しむに感謝し,
欣然傾盞啜椒酒。 欣然と盞を傾け椒酒を啜る。
作品番号 2020-36
七絶・三元試筆
鼠目寸光勤取材, 鼠の目の寸光 取材に勤しみ,
晩年韻事在寒齋。 晩年の韻事 寒斎に在り。
三元試筆朝陽裡, 三元の試筆 朝陽の裡(なか),
喜暖初心寫所懷。 初心を暖むるを喜びて所懐を写す。
作品番号 2020-37
七絶・庚子新年所懷
莫笑老翁裁屎詩, 笑ふ莫れ 老翁 屎のごとき詩を裁き,
鼠肝虫臂亂修辭。 鼠肝虫臂の修辞を乱すを。
暮年不拘世評處, 暮年(晩年)世評に拘らざるところ,
禿筆當然潤酒卮。 禿筆 当然 酒卮に潤ふ。
作品番号 2020-38
五律・夫唱婦聽含笑妍
鼠鳴猪遯走, 鼠鳴いて猪は遯走し,
夢醒叟延年。 夢醒めて叟は年を延ばす。
感謝天恩厚, 天恩の厚きに感謝し,
淺斟椒酒先。 椒酒の先ずるを浅く斟む。
旭光輝玉盞, 旭光 玉盞に輝いて,
詩興涌雲箋。 詩興 雲箋に涌く。
夫唱低聲處, 夫 低き声にて唱せるところ,
婦聽含笑妍。 婦(つま)は聴きて笑みを含んで妍なり。
作品番号 2020-39
七律・三朝夫婦醉閑聊
鼠鳴香夢醒三朝, 鼠鳴いて香夢 三朝に醒め,
樗叟更延年壽高。 樗叟 更に延ばす 年寿の高きを。
感謝天公恕夫婦, 感謝す 天公の夫婦に恕たるを,
笑傾祝酒解疲勞。 笑みて傾く 祝酒の疲労を解くを。
醉來回憶浮生路, 酔ひ来って回憶す 浮生の路,
老去欣歡引口醪。 老い去って欣歓す 引口の醪(口に入りやすき酒)。
緩帶醺然與妻子, 帯を緩めて醺然と妻と,
離題隨意樂閑聊。 題を離るること隨意に閑聊(閑談)を楽しむ。
作品番号 2020-40
醉公子・鼠年試筆題東壁
鼠鳴香夢醒, 鼠鳴いて香夢醒め,
延壽三元靜。 寿を延ばして三元静かなり。
椒酒滿金杯, 椒酒 金杯に満ち,
老妻伸黛眉。 老妻 黛眉を伸ばす。
〇 〇
醉試揮禿筆, 酔って試しに禿筆を揮ひ,
空想題東壁。 空想 東壁(壁宿)を題とす。
但願世安寧, 但(ただ)に世の安寧を願へば,
修辭含美聲。 修辞 美声を含む。
作品番号 2020-41
霜天曉角・三元夫婦交紅友
鼠鳴猪遁走, 鼠鳴いて猪は遁走し,
歳朝人益壽。 歳朝 人は寿を益す。
感謝上天恩惠, 上天の恩恵に感謝し,
傾金盞、啜椒酒。 金盞を傾け、椒酒を啜る。
〇 〇
偕老共白首, 偕(とも)に老いて共に白首,
夫婦交紅友。 夫婦 紅友(酒)と交はる。
美醉朦朧花眼, 美酔し朦朧たる花眼(老眼)に,
仙娥笑、是佳偶。 仙娥の笑ふあり、是れ佳き偶(つれあい)なり。
作品番号 2020-42
東坡引・鼠年元旦吟詩
鼠鳴猪遁走, 鼠鳴いて猪は遁走し,
元旦人延壽。 元旦に人は寿を延ばす。
夫妻感謝天恩厚, 夫妻 天恩の厚きに感謝し,
欣然傾美酒。 欣然と美酒を傾く。
〇 〇
屠蘇更促, 屠蘇 更に促す,
清濁可口, 清濁の口に可なるを,
乘佳興、佯詩叟。 佳興に乘り、詩叟の佯(ふり)をせるを。
尋章覓句題紅友, 章を尋ね句を覓(もと)むるに紅友を題とし,
吟詩成對偶, 詩を吟ずるに対偶を成す。
作品番号 2020-43
雙頭蓮令・三元翁嫗喜遊仙
鼠鳴香夢醒三元, 鼠鳴いて香夢 三元に醒め,
老叟壽還延。 老叟の寿 また延ぶ。
荊妻勸酒洗胸肝, 荊妻の勧めし酒 胸肝を洗ひ,
緩帶醉醺然。 帯を緩めて酔いて醺然。
〇 〇
自乘雅興仰晴天, 自ずから雅興に乘り晴天を仰ぎ,
携手喜遊仙。 手を携へて仙に遊ぶを喜ぶ。
紅唇媚笑撫琴弦, 紅唇 媚笑して琴弦を撫で,
尋章覓句題紅友, 章を尋ね句を覓(もと)むるに紅友を題とし,
白首舞詩箋。 白首 詩箋に舞ふ。
作品番号 2020-44
月宮春・新春迎子孫
鼠鳴香夢醒新春, 鼠鳴いて香夢 新春に醒め,
延年樗叟欣。 年を延ばして樗叟欣ぶ。
朝傾椒酒自醺醺, 朝に椒酒を傾ければ自ずから醺醺,
午餐迎子孫。 午餐 子と孫を迎ふ。
〇 〇
女婿酒豪狂飲醉, 女(むすめ)の婿は酒豪にして狂飲して酔ひ,
兒媳賢媛笑容温。 兒(むすこ)の媳(よめ)は賢媛にして笑容温(おだやか)なり。
各有千秋恰好, 各(おのおの)に千秋ありて恰も好し,
老妻慈幼裙。 老妻は幼裙を慈しむ。
作品番号 2020-45
陽臺夢・迎春在黄泉
鼠鳴將破詩翁夢, 鼠鳴いて將に破らんとせる詩翁の夢,
更延年壽三元醒。 更に年寿を延ばして三元に醒む。
老軀無恙謝天公, 老躯 恙なければ天公に謝し,
仰蒼穹靜靜。 仰ぐ 蒼穹の静静たるを。
〇 〇
欣傾夫婦酒, 欣び傾けたる夫婦の酒,
恭賀新禧酩酊。 恭賀新禧 酩酊す。
未曾期待子孫來, 未だ曾(かつて)期待せず 子孫の来たるを,
共在黄泉境。 共に黄泉の境に在れば。
作品番号 2020-46
玉漏遲・三元待盛春
鼠鳴香夢醒, 鼠鳴いて香夢醒め,
朝陽入眼, 朝陽 眼に入り,
贅翁延命。 贅翁 命を延ばす。
感謝天公, 天公に感謝す,
夫婦兩人無病。 夫婦 両人に病の無きを。
悦目荊妻卻老, 目を悦ばせて荊妻 老いを却(しりぞ)け,
點輕妝、笑傾清聖。 軽妝を点じ、笑みて清聖(清酒)を傾く。
香味好, 香味好く,
洗滌腸肚, 腸肚を洗滌し,
促乘詩興。 詩興に乗るを促す。
〇 〇
憶起舊歳行遊, 憶(おも)い起すは旧歳の行遊,
喜共賞櫻雲, 喜びて共に賞(め)でたる桜雲,
繞湖酣涌。 湖を繞りて酣(さかん)に涌けり。
艷雪飄零, 艶雪 飄零し,
泛水鱗鱗輝映。 水に泛んで鱗鱗と輝き映ぜり。
黄鳥碧天巧囀, 黄鳥 碧天に巧みに囀り,
正堪和、高聲吟詠。 正に和して、高き声にて吟詠するに堪へり。
裁小令, 小令を裁き,
三元待春佳境。 三元に待つ 春の佳境を。
作品番号 2020-47
瑞鶴仙・三元念春遊
鼠鳴猪遯散, 鼠鳴いて猪は遯げて散り,
香夢醒, 香夢醒め,
老骨延年開眼。 老骨 年を延ばして開眼す。
東窗旭光閃, 東の窓に旭光閃き,
謝天公, 天公に謝す,
寛恕樗材舒慢。 樗材の舒慢せるに寛恕たるを。
山妻笑勸, 山妻 笑みて勧む,
啜屠蘇、充盈玉盞。 屠蘇の玉盞に充ち盈つるを啜れ と。
賀新年靜謐, 新年の静謐たるを賀し,
歡談計劃, 歓談して計画す,
旅遊清晏。 旅遊の清晏なるを。
〇 〇
舊歳尋春嘆賞, 旧歳 春を尋ねて嘆賞せり,
櫻雲盛涌, 桜雲の盛んに涌いて,
繞圍湖畔。 湖畔を繞り囲むを。
風花爛漫, 風にとぶ花 爛漫として,
浮碧水, 碧水に浮き,
若銀漢。 銀漢のごとし。
望佳光, 佳光を望み,
求句寓情於景, 句を求めて情を景に寓(よ)せ,
吟競黄鶯巧囀。 吟じ競へり 黄鶯の巧みに囀ると。
喜馳思短算, 思ひを馳せて短算すれば,
詩魂已張彩翰。 詩魂はすでに彩翰を張る。
作品番号 2020-48
高山流水・三元子孫來
鼠鳴好夢醒三元, 鼠鳴いて好夢 三元に醒め,
有樗翁、無恙延年。 樗翁ありて、恙なく年を延ばせり。
花眼仰蒼穹, 花眼(老眼)蒼穹を仰ぎ,
欣欣感謝神天。 欣欣として神天に感謝す。
傾椒酒、美醉醺然, 椒酒を傾けて、美酔して醺然と,
褒妻子, 妻を褒む,
妝點芳姿艷麗, 妝点せる芳姿の艷麗にして,
卻老嬌妍。 老いを却(しりぞ)けて嬌妍なり と。
正徐娘淺哂, 正に徐娘 浅く哂(え)みて,
勸我盞圓圓。 我に勧む 盞の円円たるを。
〇 〇
怡歡, 怡び歓ぶ,
男孫笑來到, 男孫の笑って来たり到るに,
如率領、父母開顏。 父母の開顔せるを率領(したが)ふる如きを。
高擧祝杯餘, 高く祝杯を挙げてののち,
爭吃眼底佳餐, 争い吃(く)ふ 眼底(眼の前)の佳餐。
有一家、簇聚團欒。 一家の簇聚(つど)いて団欒せるあり。
兒媳婦, 兒(むすこ)の媳婦(よめ),
謙遜高深趣味, 高深なる趣味を謙遜せるも,
小聳吟肩。 小さく吟肩を聳やかす。
擬唐絶句, 唐に擬へたる絶句,
伴清韻, 清韻を伴ひ,
喚春暄。 春暄を喚ぶ。
徐娘:年を取るもなお風韻を保っている女性。
作品番号 2020-49
令和元年除夕遊横浜
港南餐館醉清觴 港南の餐館 清觴に醉ひ
散歩深更紅燭ク 散歩す 深更 紅燭のク
媽祖廟頭仙女舞 媽祖廟頭に仙女舞ひ
善隣門外瑞龍翔 善隣門外 瑞龍翔る
月沈平浪燈台耀 月は平浪に沈みて 燈台耀き
霜滿澄空汽笛颺 霜は澄空に滿ちて 汽笛颺る
偏願萬邦豐楽世 偏へに願ふ 萬邦豐楽の世
新春紫海候初陽 新春の紫海 初陽を候つ
「媽祖廟」: 横浜中華街にある廟、媽祖は天后とも云う。航海安全の守護神。
「善隣門」: 横浜の中華街大通りにある門
横浜港の南にある料理屋で酒杯に酔い
深夜、紅い提灯で彩られた中華街を散策する
媽祖廟の辺りでは仙女のような美人の舞踊
善隣門の近くでは瑞龍が飛翔する(装飾)
月が穏やかな浪の方に沈みゆく中、灯台は耀き
澄んだ空には霜の降りる気配が漂い、停泊する船が汽笛を鳴らす
(新年を迎えるにあたり)世界の人々が心身共に豊かで楽しく過ごせる世を願うばかり
(そういう想いで)新春の海を前に初日の出を待っている
作品番号 2020-50
立春偶成
狗兒遊歩早朝營 狗児の遊歩 早朝の営
暦日立春天欲明 暦日は立春 天 明けんと欲す
村野路旁霜如雪 村野の路旁 霜 雪の如し
四望靜淑一心平 四望 静淑 一心 平なり
作品番号 2020-51
籬垣梅
老筇郊野寂無聲 老筇 郊野 寂として声無し
白雨寒光不記萌 白雨 寒光 萌を記(しる)さず
漫視籬垣梅綻玉 漫ろに視る 籬垣 梅は玉を綻ばす
幽香豊艷獨怡情 幽香 豊艶 独り情を怡しむ
知多市岡田はかつて知多木綿織の産地、今も古民家が残っていて、狭い路地の籬垣に四季の花が咲く。
作品番号 2020-52
新年書懷
曉光瑞靄入新正 暁光 瑞靄 新正に入る
初詣村祠參道清 初詣 村祠の参道清し
祈念萬民災禍少 祈念す 万民災禍少きを
願望内外政經平 願望す 内外政経 平かなるを
大災害が多く発生し、貧富の格差が拡大した平成時代が終わり、令和の新年を迎え、皆が等しく安らかな生活を遅れることを祈ります。
作品番号 2020-53
新年作(一)
歳旦風和暖氣生 歳旦 風和らぎて 暖気生ず
緩行小院早鶯聲 緩行す 小院 早鶯の声
煕煕淑景吟情動 煕煕たる淑景 吟情動く
筆硯新詩心自平 筆硯 新詩 心自ら平らかなり
今年の元旦は晴れて、穏やかな日和でした。早春を感じさせる新年の始まりを詩にしてみました。
作品番号 2020-54
新年作(二)
正旦參宮神樂清 正旦 参宮 神楽清し
相和管弦祥氣生 相和す管弦 祥気生ず
花顏巫女浦安舞 花顏の巫女 浦安の舞
瑞雲韶景喜時平 瑞雲 韶景 時平らかなるを喜ぶ
元旦に近くの神社に参詣しました。新築の神楽殿で管弦や舞を見ました。
作品番号 2020-55
春日即事(一)
惠風送暖動紅情 恵風暖を送りて 紅情を動かす
樹上祥雲淑氣横 樹上の祥雲 淑気横たふ
ク友笑顔交柏葉 郷友 笑顔 柏葉を交す
茅門柳眼自生生 茅門の柳眼 自ら生生
正月に実家で会食した事を思い出して作りました。
作品番号 2020-56
春日即事(二)
韶光滿溢暖風輕 韶光 満溢 暖風軽し
一朶仙馨忘世情 一朶の仙馨 世情を忘る
茅屋春盤朋盡樂 茅屋の春盤 朋尽く楽しむ
長酣笑語已深更 長酣 笑語 已に深更
正月はゆっくり飲みます。
作品番号 2020-57
元日
門外星移残月明 門外星移りて残月明らかなり
寒窓入耳曙鶏聲 寒窓耳に入る曙鶏の聲
旧年処処天災遍 旧年処処天災遍し
今歳迎春念太平 今歳春を迎へ太平を念ふ
元日朝早く起きて新聞を読みながら、昨年は大きな災害が多くの地域で起きた、
今年は災害の少ない年であって欲しいとの気持ちで作ったもの。
作品番号 2020-58
立春探梅
近ク梅信促詩情 近郷の梅信 詩情を促し
習習融風歩午晴 習習 融風の午晴を歩む
馥郁幽香春尚淺 馥郁たる幽香 春尚浅く
閑吟頃刻暮寒生 閑吟頃刻 暮寒生ず
作品番号 2020-59
新年立春
遙遙山岳遠 遙遙 山岳遠く、
近澤雪融清 近き沢 雪融けて清し。
正月年年賀 正月 年年の賀、
東風日日晴 東風 日日の晴れ。
春躊遲散杏 春は躊し 遅く散る杏、
冬暖早開櫻 冬は暖かく 早く開く桜。
令和麒麟夢 令和 麒麟の夢、
謹謳是太平 謹んで是の太平を謳はん。
作品番号 2020-60
庚子初詣
雨過元朝樹色明 雨過ぎ 元朝 樹色明るし
淙琤石瀬瑞風生 淙琤の石瀬 瑞風生ず
携兒参詣門前路 児を携へて 参詣 門前の路
歡語笑顏嘉泰平 歓語 笑顔 泰平を嘉す
よちよち歩きの幼子と、令和最初の初詣に心穏やか。