2020年の投稿詩 第331作は静岡の芙蓉漢詩会の T ・ E さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-331

  日本丸出港        

殘雪富峰春日粧   富岳の残雪 春日の粧ひ

港灣波静白鷗翔   港湾波静かに 白鴎の翔ぶ

銅鑼高響登檣刻   銅鑼 高く響き 登檣の刻

一路滿帆千里洋   一路 滿帆 千里の洋

          (下平声「七陽」の押韻)

 帆船の出航は何度見ても感激です。



























 2020年の投稿詩 第332作は静岡の芙蓉漢詩会の T ・ E さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-332

  疫鬼        

寒暖錯行迷走穹   寒暖錯交する 迷走の穹

連纏有事渡來風   連纏事有りて 渡来の風

病原體禍懼然裏   病原体禍 懼然の裏

千萬英知必滅窮   千万の英知 必滅窮めん

          (上平声「一東」の押韻)

「疫鬼」: 流行病を起す疫病神
「連纏」: 連なり続く、つきまとうさま。
「懼然」: 恐れるさま。驚き見るさま。




























 2020年の投稿詩 第333作は静岡の芙蓉漢詩会の 柳 村 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-333

  苦熱        

途次解衣池水傍   途次 衣を解く 池水の傍

驚嘆苦熱汗如漿   驚嘆の苦熱 汗漿の如し

浮雲一片炎天下   浮雲一片 炎天下

向日葵開夏日長   向日葵開きて 夏日長し

          (下平声「七陽」の押韻)





























 2020年の投稿詩 第334作は静岡の芙蓉漢詩会の 柳 村 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-334

  無題        

東天日上曉雲長   東天 日上り 曉雲長し

滿地寥寥弄淑光   滿地寥寥として淑光を弄す

楓葉隨風秋一路   楓葉 風に随ひ秋一路

陶然緩歩轉凄涼   陶然 緩歩すれば 転た凄涼

          (下平声「七陽」の押韻)





























 2020年の投稿詩 第335作は静岡の芙蓉漢詩会の 柳 村 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-335

  中秋觀月        

朋友詩酒興   朋友 詩酒の興

把杯意氣投   杯を把れば 意気投ず

玲瓏三五月   玲瓏 三五の月

萬里一天秋   万里 一天の秋

喞喞蟲聲咽   喞喞 虫声咽(むせ)び

晶晶冷露稠   晶晶 冷露稠(しげ)し

寒光無限好   寒光 無限に好し

氣夜悠悠   気(こうき) 夜悠々

          (下平声「十一尤」の押韻)





























 2020年の投稿詩 第336作は静岡の芙蓉漢詩会の 甫 途 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-336

  蘭花開        

紙板防寒有用培   紙板の防寒 培ふに有用

朝修夕整一花開   朝に修し夕に整ふ 一花開く

拾株愛育眞慈母   株を拾ひて 愛育 眞の慈母

窓内蘭盆春色魁   窓内の蘭盆 春色の魁

          (上平声「十灰」の押韻)



 知人が捨てた蘭を頂き、設備のない窓で段ボール立てて寒さをしのいでようやく咲いた蘭をいつくしむ妻の姿、私が育てたと自慢していた風景。

























 2020年の投稿詩 第337作は静岡の芙蓉漢詩会の 甫 途 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-337

  落基山脈        

隆隆嶽嶽大連峰   隆隆 岳岳 大連峰

廻出晨光如恐龍   廻りて出づる晨光 恐竜の如し

遠近紅輪凝雙眼   遠近 紅輪 雙眼を凝らし

蕭蕭白黒聚山容   蕭蕭として白黒 聚山の容(かたち)

          (上平声「二冬」の押韻)

 ロッキー山脈は雄大であるが大きさが分からない。端が目に入らないのは当たり前で日本列島が縦にしていくつ入るかという大きさ。
 それよりも徐々に太陽が山を順番に照らしていく姿は、見たこともない恐竜が目を覚ましたような動きに見えたこと。
 積雪のためか山肌が滑らかに見えたことも一層興を添えた。




























 2020年の投稿詩 第338作は静岡の芙蓉漢詩会の 甫 途 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-338

  挿秧        

梅天郊外野煙沈   梅天の郊外 野煙沈み

禾役挿秧惜寸陰   禾役 挿秧 寸陰を惜しむ

時聽群蛙聲閣閣   時に聴く 群蛙 声閣閣(かくかく)

輕鍬歸路暮鐘音   軽鍬(けいしゅう)の帰路 暮鐘の音

          (下平声「十二侵」の押韻)

 田植えの時期になるといつも幼少年期の田舎の風景を思い出す。
 非農家で手伝わされることはない。
 いつもぼんやり眺めているだけであったが、お百姓さんは大変だなあ、という思いは沢山ある。




























 2020年の投稿詩 第339作は静岡の芙蓉漢詩会の 甫 途 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-339

  秋日遊行        

秋日楓林紅染衣   秋日 楓林 紅衣を染む

郷山蕭索白雲飛   郷山 蕭索 白雲飛ぶ

老筇留歩小橋上   老筇 歩を留む 小橋の上

野水淙淙朋未歸   野水 淙淙(そうそう) 朋未だ帰らず

          (上平声「五微」の押韻)

 山迫る里で秋の日を楽しむ。
 老環、学友は離村、里には帰らない。
 川の水は雨上がりで勢いよく流れている。
 水の音を聞きながら友達を懐かしむ。




























 2020年の投稿詩 第340作は静岡の芙蓉漢詩会の F ・ U さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-340

  祈新型疫病終息 二首之一        

新冠病毒襲寰中   新冠の病毒 寰中を襲ひ

感染頻煩勢莫窮   感染 頻煩 勢ひ窮むる莫し

讀誦觀音普門品   読誦す 観音普門品

專祈菩薩大神通   専ら祈る 菩薩の大神通(だいじんつう)

          (上平声「一東」の押韻)

 天台宗寺院主催の「世界疫病終息祈祷会(新型コロナウイルス終息を願い、百日間で観音経・般若心経などの経典を千巻読誦する誓願行)」に参加しての漢詩。

「新冠病毒」: 新型コロナウイルス
「寰中」: 世界、天下




























 2020年の投稿詩 第341作は静岡の芙蓉漢詩会の F ・ U さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-341

  祈新型疫病終息 二首之二        

疫病禍殃悲念深   疫病の禍殃(かおう) 悲念深し

新冠感染勢駸駸   新冠の感染 勢い駸駸(しんしん)

偏稱千巻普門品   偏(ひと)へに称(とな)ふ 千巻の普門品

願速消災觀世音   願はくは速に災を消し 世音を観じたまはんことを

          (下平声「十二侵」の押韻)

「駸駸」: 馬が速く走る様、転じて物事の進行がきわめて早いこと。
「普門品」: 「法華経」のうちで観世音菩薩のことを説いた章、「観世音菩薩普門品」の略称。観音経。
「観世音」: 観世音菩薩が世の人々の音声を観じて、苦悩を救済すること。




























 2020年の投稿詩 第342作は静岡の芙蓉漢詩会の F ・ U さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-342

  悼龍田山主 二首之一        

行雲流水本無依   行雲流水 本依る無し

孤錫隨縁一衲衣   孤錫(こしゃく) 縁に隨ふ 一衲(いちのう)衣(え)

惆悵老師何處去   惆悵す 老師 何(いず)れの処にか去る

龍田山嶺夕陽微   龍田(りゅうでん)山嶺 夕陽微かなり

          (上平声「五微」の押韻)

龍田山主俊英師辞世之句: 「秋風傘壽 去来隨縁 機輪転処 月照龍田」

「行雲流水」: 空行く雲、流れる水。心に執着する所なく生きる心境。禅の修道者の在り方。
「錫」: 錫杖。修行者が行脚にあたって携える杖。
「衲衣」: 袈裟。転じて僧、特に禅僧をいう。
「惆悵」: なげき悲しむ





























 2020年の投稿詩 第343作は静岡の芙蓉漢詩会の F ・ U さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-343

  悼龍田山主 二首之二        

機鋒英俊道心長   機鋒英俊 道心長し

来去隨縁八十霜   来去縁に随ふ 八十霜

一片白雲和涙去   一片の白雲 涙と和(とも)に去り

桂花郁郁送幽香   桂花郁郁 幽香を送る

          (下平声「七陽」の押韻)

「機鋒」: 鋭いほこ先、きっさき。修行で鍛えた心のはたらき。
「道心」: 仏道を求め、世の人を救おうとする心。
「幽香」: 奥ゆかしいかおり




























 2020年の投稿詩 第344作は静岡の芙蓉漢詩会の K ・ K さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-344

  詠佳人        

明眸玉腕細腰裙   明眸玉腕細腰の裙(くん)

指踊鋼琴即興君   指は踊る鋼琴 即興の君

豐溢高才無自顕   高才豊溢たるも自ら顕す無し

名花一朶郁芬芬   名花一朶 郁芬芬たり

          (上平声「十二文」の押韻)

美人ピアニストのコンサート。音楽よりも、姿かたちに目を奪われた。



























 2020年の投稿詩 第345作は静岡の芙蓉漢詩会の K ・ K さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-345

  秋日遊行無釣果        

自足耕田一布衣   自足して田を耕す一布衣(ふい)

閑居近日客來稀   閑居の近日 客の来ること稀なり

秋天海隱遊漁艇   秋天海穏に 漁艇と遊ぶ

只見魚群無果歸   只魚群を見て 無果にして帰る

          (上平声「五微」の押韻)





























 2020年の投稿詩 第346作は静岡の芙蓉漢詩会の K ・ K さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-346

  無住寺        

苔階堆葉往來稀   苔階(たいかい) 堆葉(ついよう) 往来稀なり

石砌荒林要暖衣   石砌(せきさい)の荒林 暖衣を要す

止歩凝然窺破寺   歩を止め凝然 破寺(はじ)を窺へば

妖風分樹一燈微   妖風樹を分かち 一灯微なり

          (上平声「五微」の押韻)





























 2020年の投稿詩 第347作は静岡の芙蓉漢詩会の K ・ K さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-347

  雷光斬暑        

天邊爆裂震山扉   天辺の爆裂 山扉を震がす

斬暑雷光射眼威   斬暑の雷光 眼を射るの威

見雨農人放鎌走   雨を見て農人 鎌を投げて走れば

如追敗葉帯風飛   追ふが如く敗葉 風を帯びて飛ぶ

          (上平声「五微」の押韻)





























 2020年の投稿詩 第348作は静岡の芙蓉漢詩会の 洋 靖 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-348

  秋夜聽蟲        

夕照漸消残暑收   夕照漸く消え残暑収まる

天空如水月光幽   天空水の如く 月光幽なり

新蛩喞喞叢中咽   新蛩喞喞 叢中に咽ぶ

妙韻連綿坐惹愁   妙韻連綿 坐(そぞろ)に愁ひを惹く

          (下平声「十一尤」の押韻)





























 2020年の投稿詩 第349作は静岡の芙蓉漢詩会の 洋 靖 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-349

  歳晩書懐        

白駒過隙業成遲   白駒隙を過ぎ 業成る遅し

歳晩寒風月影移   歳晩 寒風 月影移る

百八鐘聲聴胸臆   百八鐘声 胸臆に聴く

人生無奈此時宜   人生奈(いかん)する無し 此の時宜(じぎ)を

          (上平声「四支」の押韻)

「白駒過隙」: ひまゆく駒の足早し



























 2020年の投稿詩 第350作は静岡の芙蓉漢詩会の T ・ H さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-350

  看櫻        

山寺一櫻誇物華   山寺の一桜 物華を誇り

鐘聲幽響獨看花   鐘声幽に響き 獨(ひとり)花を看る

風連片片昌辰短   風に連なる片片 昌(しょう)辰(しん)短く

多少殘紅生有涯   多少の残紅 生に涯(かぎり)有り

          (下平声「六麻」の押韻)





























 2020年の投稿詩 第351作は静岡の芙蓉漢詩会の T ・ H さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-351

  訪三蔵法師古道        

新疆古道似登仙   新疆(しんきょう)の古道 登仙するに似て

幽壑石梯風颯然   幽壑 石梯 風颯然たり

聳漢霊峰映湖面   漢に聳ゆ霊峰 湖面に映じ

遙遠絶徑白雲聯   遥遠なる絶径 白雲聯なる

          (下平声「一先」の押韻)

「新疆古道新疆維吾爾自治区絲綢路」: 新疆ウイグル自治区シルクロード



























 2020年の投稿詩 第352作は静岡の芙蓉漢詩会の 常 春 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-352

  梅雨感懐        

雨天書計晴除草   雨天は書計 晴れれば除草

交互適時疲不侵   交互 適時に疲れ侵さず

衰老貧婪追萬事   衰老 貧婪(どんらん) 万事追はんとするも

幸哉抑制是梅霖   幸なるかな抑制するは是れ梅霖

          (下平声「十二侵」の押韻)

 今年の梅雨、しとしとと降る梅雨特有の長雨ではなかった。
 強い雨が襲来、しばらくすると去って行き、また強い雨がとくり返す。
 南方に多いスコール急風驟雨であった。
 お陰で私は読書に飽きる頃の晴れ間は除草、疲れ一休み欲しいときに驟雨、書斎に戻る楽しみが出来た。




























 2020年の投稿詩 第353作は静岡の芙蓉漢詩会の 常 春 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-353

  秋日家居        

白露猶餘炎暑威   白露 猶余す炎暑の威

家居雜亂納涼衣   家居雑乱 納涼の衣

庭垣景致日殊異   庭垣の景致 日に殊異(しゅい)

朝夕枯榮秋色肥   朝夕の枯栄 秋色肥ゆ

          (上平声「五微」の押韻)

「白露」は立秋から三十日目、仲秋の始まりである。
 今年は九月七日。しかし真夏の気温で、暑かった。
 外出もままならず、家で肌着一枚で過ごす。




























 2020年の投稿詩 第354作は静岡の芙蓉漢詩会の 常 春 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-354

  野猫        

朱櫻樹下一猫横   朱桜樹下 一猫横たはる

半眼宛然觀世情   半眼 宛(さなが)ら世情を観るがごとし

外滿憂惶内沈靜   外憂惶に満つるも 内沈静ならん

人爲訓禦突如獰   人は為(な)せし訓禦(くんぎょ) 突如の獰(どう)を

          (下平声「八庚」の押韻)

例年花見客の一等席、満開の桜の下で寝そべる横着猫を見て。



























 2020年の投稿詩 第355作は静岡の芙蓉漢詩会の 常 春 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-355

  蝙蝠考        

漫畫名聲蝙蝠男   漫画の名声 蝙蝠男(バットマン)

幼童偏愛福音譚   幼童 偏(ひとえ)に愛す福音の譚(はなし)を

蝙蝠不知人感染   蝙蝠(こうもり)は知らず 人に感染せしを

逼蚊蠅遍夕眈眈   蚊蠅(ぶんよう)に逼(せま)ること遍く夕に眈眈(たんたん)たるに

          (上平声「十三覃」の押韻)

 コロナウイルスはこうもり由来、大変な悪者であるが、蝙蝠の漢字、つくりは、遍、偏。また福副逼と力強い文字である。
 古代、蚊蛾縄除去に珍重されたのであろう。

 猶、虫偏の字であるが、蝙蝠は哺乳類中唯一の飛行動物。

 この詩、敢えて蝙蝠の字重出とした。



























 2020年の投稿詩 第356作は静岡の芙蓉漢詩会の 岳 游 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-356

  夢幻泡影        

秋波口罩繞牀頭   秋波 口罩(こうとう) 牀頭繞る

遽見西施象潟遊   遽(にわ)かに見る 西施 象潟に遊ぶ

妙舞明眸孤枕去   妙舞の明眸 孤枕去るを

摧頽被上再來不   摧頽(さいたい) 被上 再び来るや不(いな)や

          (下平声「十一尤」の押韻)

 コロナ禍でマスクをした美人を多く見ますので、夢の中に西施が現われました。

「西施」: 春秋時代、中国の美人の代表者
「摧頽」: こわれくずれる
「被上」: ふとんの上




























 2020年の投稿詩 第357作は静岡の芙蓉漢詩会の 岳 游 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-357

  全米庭球選手権二度目女王稱大坂なおみ選手        

口罩人名義氣尤   口罩(こうとう)の人名 義気尤(とが)む

異才發信毅相求   異才の発信 毅(つよ)く相求む

正論跼蹐非無頼   正論跼蹐(きょくせき) 頼む無きに非ずも

勝報勇姿令解憂   勝報勇姿 憂を解かしむ

          (下平声「十一尤」の押韻)

大坂なおみが人種差別への抗議の意を示すため、名前がプリントされたマスクを着けて、試合ごと着け替え入場、七つめのマスクまで見せて優勝。

「口罩」: マスク
「跼蹐」: 跼天蹐地恐れびくびくするさま




























 2020年の投稿詩 第358作は静岡の芙蓉漢詩会の 岳 游 さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-358

  寄高野山宿坊「福智院」        

深山翠澗既斜陽   深山翆澗 既に斜陽

境寂靈臺至宿坊   境(きょう)寂(じゃく)霊(れい)台(だい) 宿坊に至る

佛殿如來成浄界   仏殿の如来 浄界を成し

高僧妙偈發C香   高僧の妙偈 清香を発す

偃松黛影龍鱗勢   偃(えん)松(しょう)黛(たい)影(えい) 竜鱗の勢ひ

磐石碧晶明月光   磐石 碧晶 明月の光

靜見前庭宜刮目   静かに見前庭 刮目し宜し

相歓儔侶繞回廊   相歓ぶ儔侶(ちゅうらりょ) 回廊を繞る

          (下平声「七陽」の押韻)

福智院は庭師(故)重森三(しげもりみ)玲(れい)氏による磐石の石組みとモダンな地割りで構成された庭園を有する。
昭和の傑作として世界的に高い評価を受けている。

「儔侶」: 遠州庭園同好のメンバー



























 2020年の投稿詩 第359作は静岡の芙蓉漢詩会の Y ・ H さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-359

  空屋        

閉門古壁擁城隅   古壁門を閉ざして城隅を擁す

累代舊家空屋蕪   累代の旧家 空屋蕪れる

後繼兒孫歸有否   後継の児孫帰ること有りや否や

高齢少子課題倶   少子高齢 課題を倶(とも)にす

          (上平声「七虞」の押韻)

 我が地域でも年々空家が増えております。
 後継者が定まらず老夫婦は施設に入居し、難しい問題です。




























 2020年の投稿詩 第360作は静岡の芙蓉漢詩会の Y ・ H さんからの作品です。
 今回も新型コロナウイルス感染拡大の関係で、合評会は各自の感想を文書でやり取りする形をとりました。
 会員の感想を受けて推敲をしたものを、『芙蓉漢詩集 第27集』として詩集としました。

作品番号 2020-360

  氣候變動        

地球温暖極危機   地球温暖 危機の極み

豪雨炎陽眞脅威   豪雨炎陽 真の脅威

大國思惟崩結束   大国の思惟 結束崩る

巴黎協定逹成微   巴黎(パリ)協定 逹成微かなり

          (上平声「五微」の押韻)

 地球温暖化は深刻な問題です。
 パリ協定、アメリカ離脱表明で、その実効性に大きな影響を与えることは否定できません。