作品番号 2020-01
元日偶成
一歳新加四十三 一歳 新たに加へて四十三
百年天命尚堪貪 百年の天命 尚ほ貪るに堪へたり
世間多事暫忘却 世間 多事なれども 暫く忘却せん
今者合欣嘉宴酣 今者(いま) 合に欣ぶべし 嘉宴の酣なるを
本年もよろしくお願いいたします。
新たに一年加わって ことしで数えで四十三
おれは百まで生きるから この先まだまだ楽しめる
面倒事もあるけれど しばらく忘れておこうかね
今のところは正月を 祝い慶びそれでよし
作品番号 2020-02
歳晩偶成
除日苦憎詩債多 除日 苦(はなは)だ憎む 詩債の多きを
華箋未染更如何 華箋 未だ染まらず 更に如何せん
追思今歳諸般事 今歳 諸般の事を追思すれば
春夏秋冬一刹那 春夏秋冬 一刹那
作詩の宿題積み上げて さても苦しい大みそか
真っ白な紙前にして まったくどうしたものだろう
今年いろいろあった事 思い返してみるものの
春夏それと秋に冬 あっという間に過ぎ去った
作品番号 2020-03
新春
新春懶過在家郷、
慙愧家人作菜忙、
華髪年年心願少、
唯祈無恙拝朝陽。
作品番号 2020-04
年賀
門生六歳意軒昂 門生 六歳 意 軒昂
野叟清遊導吉慶 野叟の清遊に 吉慶を導かん
聲動梁塵吟士夢 声道梁塵 吟士の夢
詩歌百遍氣堂堂 詩歌 百遍 気 堂々
作品番号 2020-05
年賀(二)
卿雲靉靆麗初陽 卿雲 靉靆 初陽麗し
和氣満庭梅雪香 和気 庭に満ち 梅雪香る
白髪老軀猶壯健 白髪の老躯 猶 壮健
悠悠自適禱壽康 悠々自適 壽康を祷る
作品番号 2020-06
迎春
令和庚子曙光W 令和庚子 曙光Wく
遥看東天皓鶴飛 遥かに看る東天 皓鶴飛ぶ
「子」字肯云一加了 「子」字 肯えて云ふ 一を了に加へたり
積年至願決開扉 積年の至願 扉を開かんと決す
今年こそは長年の大願を成就し前進するぞという決意を詩にして、頑張っていこうと思っています。
作品番号 2020-07
庚子新春
寺鐘音絶入新正 寺鐘音絶えて新正に入る
少壯更須初日生 少壮は更に須つ 初日の生ずるを
老漢逢春有何喜 老漢春に逢ふも 何の喜びか有らん
賀詞故託聖賢罌 賀詞 故(ことさ)らに託す 聖賢の罌
作品番号 2020-08
令和二年新春
元朝旭日C 元朝 旭日清く
里社賽人明 里社 賽人明らかなり
唯尚無殃禍 唯だ尚はくは 殃禍無く
萬邦億兆平 万邦億兆の平らかなるを
本年も宜しくお願い致します。
作品番号 2020-09
壽令和二年新春
去年艾節令和聲 去年艾節 令和の声
新帝秋成儀典C 新帝秋成 儀典清し
瑞兆驚希玉虹架 瑞兆驚き希む 玉虹の架かるを
元朝還嘉一天明 元朝 還た嘉して 一天明らかなり
作品番号 2020-10
歳晩即事
媼為御節太匆匆 媼は御節を為り太だ匆匆たるも
翁作野詩猶夢中 翁は野詩を作ってなお夢の中
世路崢エ看世變 世路崢エ 世の変わるを看るも
草居風景古今同 草居の風景は古も今も同じ
本年もどうぞよろしくお願いします。
忙しい妻を尻目に本を読んだり詩を作ったり、たまに釣りに行ったり。
世の中大変というのに年が改まっても同じ。
相変わらずのぐうたら生活でお恥ずかしい。
作品番号 2020-11
欲作立春詩
春到曙鴉求友声 春到り 曙鴉 友を求むる声
燕来花笑集群英 燕来たり 花笑き 群英を集む
秀吟繚乱我興奮 秀吟 繚乱 我興奮す
終日苦辛詩不成 終日 苦辛 詩成らず
春になった。明け方、カラスの友を呼ぶ声がする。
その声に応じて、燕は来る、花は咲く、その春の気配が詩人たちを集める。
花が咲き乱れるように、素晴らしい詩が咲き乱れ、我も負けじと奮い立つ。
一日中悪戦苦闘するも、結局詩はできず。
作品番号 2020-12
年初雜詠 其一 梅蕾
日日暖冬梅蕾萌 日々暖冬 梅蕾萌え
嫩紅枝節待春情 嫩紅の枝節 春を待つ情
時移何u老還疾 時移るは何ぞuき 老還(ま)た疾し
未練猶期百囀鶯 未練 猶期す 百囀の鶯を
作品番号 2020-13
年初雜詠 其二 目白鳥
阪タ白眼二三声 緑翅白眼 二三の声
求蜜銜花彼此縈 蜜を求め花を銜え彼此縈(めぐ)る
過午庭前日光浴 過午 庭前 日光浴
放鬆至上老心平 放鬆至上 老心平か
作品番号 2020-14
年初雜詠 其三 百人一首
百人一首定家誠 百人一首 定家の誠
朗詠和歌覺有情 和歌を朗詠すれば有情覚ゆ
反映幾多承久影 反映幾多 承久の影
秘胸逆境斷魂清 胸に秘す逆境 断魂清し
作品番号 2020-15
年頭憂感
年頭殺戮自誇聲 年頭殺戮 自ら誇る声
即應高呼報復盟 即に応ず 高呼 報復の盟
統領胸中專選擧 統領の胸中 専ら選挙
尊師背後豈油阬 尊師の背後 豈油阬のみならんや
紛騷連累無辜恐 紛争の連累 無辜恐れ
經濟低迷有識評 経済の低迷 有識評す
優先家國與私意 家国と私意 優先すれば
今恃覇權何處迎 今恃む覇権 何処迎ふや
作品番号 2020-16
元朝仰富士
初旭冉冉萬境閑 初旭冉冉 万境閑かなり
玲瓏富嶽照塵寰 玲瓏たる富嶽 塵寰を照らす
乾坤一白神威儼 乾坤 一白 神威儼かなり
遠仰扶桑第一山 遠く仰ぐ 扶桑第一の山
作品番号 2020-17
新年雜詠
旭日曈曈瑞氣生 旭日 曈曈 瑞気生ず
窗梅數點好詩情 窓梅 数点 詩情好し
新年消息人如問 新年の消息 人如し問はば
自適悠悠杯酒傾 自適 悠悠 杯酒を傾けんと
作品番号 2020-18
新歳偶成
五彩瑞雲應太平 五彩の瑞雲 太平に応ふ
鷄聲告曉景風盈 鶏声 暁を告ぐれば 景風盈つ
南枝春信花香朶 南枝 春信 花香の朶
已有朝陽山色清 已に朝陽有り 山色清し
作品番号 2020-19
新春暖風
君容我弊気澄明 君我が弊を容れ 気澄明
我許君瑕意穏平 我君の瑕を許し 意穏平
五十親交無別事 五十親交 別事無し
光頭対酌恵風行 光頭対酌すれば 恵風は行く
人は皆欠点を持っているが、お互いに受容してやれば対立はない。
50余年にわたる付き合いも、何も特別なことは無かった。
新年に遠来の友を迎えて、禿げ頭同士が飲めば、何とも心地よい風が、そっと抜けて行く。
お互いの 癖欠点を 受け流し
五十余年を 飲みきたる哉
作品番号 2020-20
新春
歳朝会友把杯觴 歳朝 友と会し 杯觴を把る
唱和推敲意気揚 唱和し 推敲 意気揚がる
馥郁庭梅春信早 馥郁たる庭梅 春信早し
詩成快飲喜迎祥 詩成りて 快飲 喜び祥を迎ふ
作品番号 2020-21
迎新年
淑気洋洋天地清 淑気 洋洋として 天地清し
茅門草木已春聲 茅門の 草木 已に春聲
笑談喜色身多幸 笑談 喜色 身多幸
歳旦一家椒酒盈 歳旦 一家 椒酒盈たす
作品番号 2020-22
五輪新年
五輪歳旦曙鷄聲 五輪の歳旦 曙鷄の声
賀客来門瑞気生 賀客 門に来たりて 瑞気生ず
世界融和天地祭 世界の融和 天地の祭
紛争絶滅萬民盟 紛争の絶滅 万民の盟ひ
作品番号 2020-23
新年作
淑気東窗入五更 淑気東窗五更に入る
歳朝旭日転鮮明 歳朝の旭日は転鮮明
頽齢自寿身康健 頽齢自ら寿ぐ身は康健
賦欲新詩尚未成 賦せんと欲して新詩尚未だ成らず
作品番号 2020-24
庚子新年書感
瑞氣旁旁歳此新 瑞気 旁旁(ほうほう) 歳 此に新まる
光風齊月一閑人 光風齊月 一閑人
妻兒歡笑身康健 妻児 歓笑 身 康健なり
無恙餘生詩酒親 恙無く余生 詩酒に親しまん
「風動」: 風が激しく吹く
「雄強」: 勇ましく強い
「毅魄」: 何ものにも屈しない強い気魄
作品番号 2020-25
立春
暖冬小徑入新晴 暖冬の小径 新晴に入る
先訪野梅吟屐輕 先ず訪ふ野梅 吟屐 軽し
花發横斜春二月 花は発く横斜 春二月
三三五五聴鶯声 三三五五 鶯声を聴く
作品番号 2020-26
新年作
自改明令和二年 自ら改る 明けて令和 二年
東風放馥一枝妍 東風 馥を放ち 一枝妍なり
九旬餘二心身健 九旬 二を餘し 心身健なり
筆硯題詩寫碧箋 筆硯 詩を題し 碧箋に寫さん
作品番号 2020-27
庚子元旦
雲闖遠彩窗邊 雲間の初日 窓辺を彩り
戴雪茶梅紅国N 雪を戴く茶梅 紅緑鮮やか
一幅一篇應有此 一幅一篇 応に此に有り
殊更擇墨翕州前 殊更 墨を択す 翕州の前
「紅緑」: 紅花緑葉。
「一幅」: 書画の掛物の一つ。又、一つの景色。
「一篇」: 一つのまとまった詩や文章。
「翕州(きゅうじゅう)」: 「端渓」同様、産地名で呼ぶ、翕州産の硯です。
作品番号 2020-28
新春山行即事
寒風側面一山行 寒風を側面に 一(はじめて)の山行
緩歩老軀愉道程 緩歩の老躯 道程を愉しむ
瀬戸眺望談笑友 瀬戸の眺望 友と談笑す
謝恩不撓保心情 謝恩し 不撓の心情を保たん
今年の初山行は 六甲山でした。
いつまで歩けるかわかりません。
ゆっくり山行であってもくじけずに、今年も前向きに山行を楽しみたいと思います。
作品番号 2020-29
拜年有作
乾坤自改願年豐, 乾坤自ら改り 年豊を願ふ
世上全傢笑語同。 世上の全傢 笑語同じくづ
瑞氣洋洋風日靜, 瑞気洋洋 風日静か
春光萬里喜無窮。 春光 万里 喜び窮まり無し
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。
最近は単体の漢詩よりも、叙事詩の中の挿入詩として、情景や登場人物を描くために作詩しています。
作品番号 2020-30
初春誓
箱根山谷早鶯聲 箱根山谷 早鶯の声
鳴響心滲詩思清 鳴響(めいきょう)心に滲みて 詩思清し
真似耽吟春尚淺 真似て眈吟するも 春尚浅し
初春堅誓一天晴 初春の堅き誓いに 一天晴れる
箱根を訪れると、早、鶯が鳴いている
その響きは心に滲み 清く美しい
鶯の鳴き声を真似て吟ずるも (私にとって)春はまだ浅い
庚子の年の新たな誓いが、爽やかな青空に届いて欲しい