作品番号 2019-61
早春看梅
海畔泉ク淑景臺 海畔の泉郷 淑景の台
盈枝玉蕾曙光開 枝に盈つ玉蕾 曙光に開く
梅花的皪香千斛 梅花的皪 香千斛
可惜遷鶯未囀來 惜しむべきは遷鶯未だ囀り来らず
昔、熱海梅園へ行った時の記憶を書きました。
作品番号 2019-62
立春
香魂門口一寒梅 香魂の門口 一寒梅
冷氣然而心滿開 冷気あれども心満開
霜降畦町如雪嶺 霜降の畦町 雪嶺のごとし
菜園不久美饒培 菜園 久しからずして美しく饒培
近郊の菜園から一輪梅をもらい玄関に指している
冷気は厳しいが心は和らぐ
霜が降り畦の畑は白い嶺が連なっているようだ
やがてこの菜園も美しく豊かに培われることだろう
蝋梅が玄関に一輪
仄かな色は 寒さの中で心和む
霜が降り青物少なし
やがて春野菜で胸膨らまん
作品番号 2019-63
観梅
輕寒山麓待晴晨 軽寒の山麓 晴るるを待つ晨
馥郁香雲鶯作賓 馥郁たる香雲 鶯 賓を作す
佳人映水娟競影 佳人 水に映じ 娟 競ふ影
郊墟村園訪梅春 郊墟の村園 梅を訪ふ春
作品番号 2019-64
立春雪
摩天高閣隱遙霞 天を摩する高閣 遥かな霞に隠れ、
減彩寒風凍菜花 彩りを減ずる寒風 菜の花凍えさせる。
靜舞零溶當節雪 静かに舞 零れて溶ける 当節の雪、
窗蒸結露我温家 窓は結露に蒸す 我が温家。
作品番号 2019-65
立春還家
立春氣滿故山隈 立春の気は満つ故山の隈
遊子道中詩合裁 遊子 道中 詩合に裁すべし
野野東風初欲到 野野 東風 初めて到らんと欲し
湖湖白鳥亦思回 湖湖 白鳥 亦回(かへ)らんことを思ふ
草萌郊外履殘雪 草萌(きざ)す郊外 残雪を履み
日暖門前看早梅 日暖かなる門前 早梅を看る
拈筆染箋乘興處 筆を拈り 箋を染め 興に乗ずる処
村童已語我歸來 村童 已に語る 我の帰来せるを
春に向かって折り返す 昔なじみの山の隈
旅のついでというわけで 詩を作るのにふさわしい
野原をわたる東風 このあたりにも吹きはじめ
水辺に憩う白鳥も 飛び立つことを思ってる
村外れには草萌えて 残んの雪を踏みながら
門の手前の日だまりに 早咲きの梅ながめやる
筆を拈って箋を染め 楽しくなってきたところ
村の子どものお喋りに 私の帰りが知られてる
作品番号 2019-66
新年書懐(一)
瑞光遍照淨塵埃 瑞光遍く照らし 塵埃を浄め
春氣滿庭今曉來 春氣滿庭 今暁来る
百八撞鐘聞幾歳 百八撞鐘 聞いて幾歳
七情煩惱未些摧 七情煩惱 未だ些かも摧かず
作品番号 2019-67
新年書懐(二)
瑞雲和氣自東來 瑞雲和気 東より来たる
移住迎春已六回 移り住みて 迎春已に六回
歳歳光陰加速畏 歳歳 光陰の加速を畏れ
年年履屐漸遲哀 年年 履屐の漸遅を哀しむ
作品番号 2019-68
新春偶成
新正瑞氣苦寒摧 新正瑞気 苦寒摧け
春信庭前一朶梅 春信 庭前 一朶の梅
陋屋幾多携酒客 陋屋幾多 携酒の客
放談賀宴笑千回 放談賀宴 笑ふこと千回
作品番号 2019-69
寒梅
早晨新雪白皚皚 早晨 新雪 白皚皚
崖畔南枝一朶開 崖畔の南枝 一朶開く
高潔幽姸香馥郁 高潔 幽妍 香馥郁たり
朔風微笑百花魁 朔風に微笑す 百花の魁
作品番号 2019-70
平成最後迎新年
春光水暖一枝梅 春光 水暖く 一枝の梅
松竹茅門詩興催 松竹 茅門 詩興を催す
感慨平成今歳盡 感慨す 平成のこと 今歳に尽くるを
元朝椒酒兩三杯 元朝の椒酒 兩三の杯
作品番号 2019-71
新年即事
瑞光四海拂塵埃 瑞光 四海に 塵埃を払ふ
風軟花香黄鳥來 風軟らかに 花香り 黄鳥來る
有客詩朋吟韻響 客有り 詩朋 吟韻響く
當年意氣身中回 當年の意氣 身中を回る
作品番号 2019-72
新年偶感
新年淑景一枝梅 新年淑景一枝の梅
籬外鳴鶯去又來 籬外の鳴鶯 去りて又來たる
舊歳古稀身尚健 旧歳古稀も身は尚健なり
屠蘇快飲氣悠哉 屠蘇を快飲して 気悠なる哉
作品番号 2019-73
歳晩作
青雲已遠鬢成糸 青雲 已に遠く 鬢は糸となる
辛苦春秋憔悴姿 辛苦 春秋 憔悴の姿
如矢光陰年暮早 矢の如き光陰 年暮早し
菲才淺学只餘詩 菲才 浅学 只だ詩を余す
作品番号 2019-74
新年作
四海洋洋起瑞煙 四海 洋洋 瑞煙起る
融然淑氣萬峰懸 融然たる淑気 萬峰に懸かる
華箋試筆敲詩樂 華箋に試筆して 詩を敲くの楽しみ
淨几明窗己亥年 浄几 明窓 己亥の年
作品番号 2019-75
首歳
淑氣蓬蓬風緩回 淑気 蓬蓬として 風緩く回る
壽福欣然談笑回 寿福 欣然として 談笑回る
談笑團圓好友宴 談笑 団円 好友の宴
一觴一詠忘時哉 一觴 一詠 時を忘るる哉
作品番号 2019-76
新年初釜
東風正旦報春來 東風 正旦 春を報じ来たる
若水點茶清宴開 若水 茶を点じ 清宴開く
五福心情千古遍 五福の心情 千古に遍し
和顏朋友手中杯 和顏の朋友 手中の杯
作品番号 2019-77
新年護王神社
正旦雲晴瑞氣回 正旦 雲晴れ 瑞気回る
護王院落早梅開 護王の院落 早梅開く
和顔笑語盈寺宇 和顔 笑語 寺宇に盈つ
摩利支天乗亥來 摩利支天 亥に乗じて来る
護王神社は猪で有名な神社です。
今年ご縁があり、お参りできました。
天気も良く、守り神の摩利支天様が天からいらっしゃるようでした。
作品番号 2019-78
迎春
鐘聲百八隔塵埃 鐘音 百八 塵埃を隔つ
四海太平氣來 四海 太平 祥気来たる
元旦春盤傾柏葉 元旦 春盤 柏葉を傾け
和風暖日彩雲開 和風 暖日 彩雲開く
作品番号 2019-79
迎春
三元瑞氣喜春來 三元 瑞気 春来を喜ぶ
暖日鶯聲綻早梅 暖日 鶯の声 早梅綻ぶ
賀客佳肴醉芳酒 賀客 佳肴 芳酒に酔ふ
家人圓滿笑顔回 家人 円満で笑顔廻る
作品番号 2019-80
迎正月
己亥新年曙色催 己亥 新年 曙色催す
早鶯朗囀喜春來 早鶯 朗囀し 春来るを喜ぶ
辛盤柏酒三元首 辛盤 柏酒 三元の首
家族團欒笑語回 家族団欒 笑語 回る
作品番号 2019-81
歳朝繞村
無邉落木凜風回 無辺の落木に凜風回る
野徑韶光絶俗埃 野径の韶光 俗埃を絶つ
村社磴頭旛幟列 村社の磴頭 旛幟列し
衆民饗膳共含杯 衆民 饗膳 共に杯を含む
作品番号 2019-82
己亥年頭作
戌去亥來今歳回 戌去り 亥来たって 今歳回る
春光萬里地無埃 春光 万里 地は埃無し
鶯聲清朗三元日 鶯声 清朗として 三元の日
家族安寧祈念催 家族の安寧 祈念を催す
作品番号 2019-83
新年作
遙望御嶽白皚皚 遥望す 御嶽 白皚皚
籬角水仙春色催 籬角の水仙 春色催す
棋士驚嘆齡十歳 棋士 驚嘆 齢十歳
老翁吟懷樂ク哉 老翁の吟懐 楽郷哉
作品番号 2019-84
新年作
好日迎春清宴開 好日 春を迎へ 清宴開く
麗裝孫子又佳哉 麗装の孫子 又 佳き哉
四人兄弟和顏續 四人の兄弟 和顏続く
無恙一年祈願杯 恙無き一年 祈願の杯
作品番号 2019-85
己亥新春
送臘迎年窗外梅 臘を送り 年を迎ふ 窓外の梅
平成己亥已難回 平成 己亥 已に回ること難し
敲詩揮筆怡風雅 詩を敲き 筆を揮ひ 風雅を怡む
八秩星霜春復來 八秩の星霜 春復た来たる
作品番号 2019-86
迎新年
惠風瑞氣破寒來 恵風 瑞気 寒を破りて来たる
芳草香花暖意催 芳草 香花 暖意催す
椒酒三朝喜多幸 椒酒 三朝 多幸を喜ぶ
鶯聲樹樹報春回 鶯声 樹樹 春を報じて回る
作品番号 2019-87
春色
窗前纔看一枝梅 窓前 纔かに看る 一枝の梅
淑氣無窮曉色開 淑気 無窮 暁色開く
才藻家慈盡年逝 才藻の家慈 尽年に逝く
薫陶遺愛有餘哀 薫陶 遺愛 余哀有り
年末に最愛の母を亡くし、詩を作る時に素直に思いが溢れました。
入院中もずっと俳句を書き続けていた母への尊敬が伝わればと思います。
作品番号 2019-88
新年作
寒街除夜雪成堆 天街 除夜 雪は堆を成す
天響鐘聲瑞氣回 天に響く鐘声 瑞気回る
鬧熱衆人山上寺 鬧熱の衆人 山上の寺
新年甘酒共傾杯 新年の甘酒 共に杯を傾く
近くのお寺では、除夜の鐘と共に甘酒がふるまわれます。
新年を迎えたと実感するひと時です。
作品番号 2019-89
平成讓位春新年詩
新歳門松瑞氣回 新歳の門松 瑞気回る
侵寒香骨一枝開 寒を侵して 香骨 一枝開く
平成將了乾坤改 平成 将に了り 乾坤改まる
兩帝徴春瑞鳥來 兩帝 春を徴し 瑞鳥来たる