作品番号 2018-31
吟翫新春 方聯詩
占新元號吉生檐 新たなる 元号を占へば 吉 檐に 生じ
言問爲君佳氣添 言問は 君が 為に 佳気は添ふ
忝賀題詩應有意 賀を 忝うし 詩を題すれば 応に意有るべく
心機一轉百華沾 心機一転して 百華 沾はん
方聯詩とは、各句末尾の一部分が次句の冒頭に使われて連なる詩
占 新 元 號 吉 生 檐
沾 言↓
華 問
百 爲
轉 君
一 佳
機 氣
↑ 心 添
意 有 應 詩 題 賀 忝
作品番号 2018-32
新年偶成(其一)
遷鶯人日喚春來 遷鶯 人日 春を喚びて来る
淑氣蓬蓬綻早梅 淑気 蓬蓬として早梅 綻ぶ
宿志欲吟詩尚拙 宿志 吟ぜんと欲すれども詩 尚 拙く
幾重刪定亂書堆 幾たびも刪定を重ねて乱書 堆し
正月に苦吟をする様子を詠みました。
今年も漢詩作りを中心に諸々の勉強を頑張っていきます。
今年も苦吟を続けていきます。
陰暦の一月七日に、鶯(うぐいす)が低い谷間から高い木へと、春を呼んでやって来て、
春の穏やかな気が立ち上って、早咲きの梅の花が開きかけていました。
前々からの志を詩歌に思い付くままに歌おうと思っても、詩はまだ拙く、
何度も詩句を推敲して正すことを重ねて、乱れ書きをしたものが積み重なって高く盛り上がっていました。
作品番号 2018-33
新年偶成(其二)
新正先拂硯池埃 新正 先づ硯池の埃を払ひ
壯士胸中筆墨催 壮士の胸中 筆墨 催す
白紙縱描獨鶴 白紙 縦横 独鶴を描き
紅葩大小寫疎梅 紅葩 大小 疎梅を写す
飄飄動朶東風起 飄飄 朶を動かして東風 起こり
脈脈凝香春色開 脈脈 香を凝らして春色 開く
忽散宿陰天欲霽 忽ち宿陰を散じて天 霽れんと欲し
皇是自畫圖來 青皇は是 画図 自り来る
水墨画家が正月に絵を描く場面を詠みました。
今年も春の景色をしっかりと漢詩に描けていければ良いなと思います。
これからも頑張ります。
新しい年の正月に、先ず硯の水を入れる窪んだ所にたまった埃を払い、
気力の盛んな男の思いは、筆と墨を促していました。
白紙の紙に、自由自在に孤独な鶴を描き、
大小の赤い花が疎(まば)らに咲いた梅を写し取っていました。
物を翻して枝を動かして、春風が起こり、
続いて絶えず香りを凝り固まらせて、春の景色が広がっていました。
忽ちに長い曇り空が無くなって、空は晴れようとしていて、
春を司る神は、絵画からやって来ていました。
作品番号 2019-34
五絶・迎接己亥年偶感
亥豕易渾淆, 亥(カイ)と豕(シ)は渾淆し易く,
晩年多錯字。 晩年に錯字(誤字)多し。
三元酒滿杯, 三元酒 杯に滿ち,
春意張蝶翅。 春意 蝶翅を張る。
作品番号 2019-35
七絶・迎接己亥年試筆 其一
亥字古來紛豕使, 亥字 古來 豕と紛れ,
詩翁花費多箋紙。 詩翁をして多いに箋紙を花費(ついや)しむ。
年年注意力衰殘, 年年 注意力は衰殘し,
歳歳添増假牙齒。 歳歳 添増(増加)せるは假牙齒(入れ歯)。
作品番号 2019-36
七絶・迎接己亥年試筆 其二
三元醉筆潤瑤舟, 三元 醉筆 瑤舟(酒杯)に潤ひ,
笑鼓吟魂試勝遊。 笑みて吟魂を鼓し勝遊を試む。
同伴荊妻借丹臉, 荊妻の丹臉を借りをるを同伴し,
春航酒海轉風流。 春に酒海を航海し轉た風流。
作品番号 2019-37
七絶・迎接己亥年試筆 其三
猪突猛進戀詩神, 猪突猛進 詩神に戀し,
刻苦廿年求句新。 苦を刻んで廿年 句の新しきを求む。
不顧非才酒堪伴, 非才を顧みず酒 伴ふに堪へ,
醉揮禿筆喜開春。 醉って禿筆を揮ひ開春を喜ぶ。
作品番号 2019-38
七絶・一盞價千金
三元一盞價千金, 三元の一盞 千金に價し,
堪聳雙肩試醉吟。 雙肩を聳やかし醉吟を試みるに堪ふ。
不顧詩中聲病在, 詩中に聲病在るを顧みず,
擬唐高唱喜披襟。 唐に擬へ高唱し襟を披くを喜ぶ。
作品番号 2019-39
七絶・椒酒正堪斟
三元椒酒正堪斟, 三元の椒酒 正に斟むに堪へ,
美醉當然無苦吟。 美醉すれば當然 苦吟無し。
好句如泉涌金盞, 好句 泉の金盞に涌く如く,
聳肩高唱若丹禽。 肩を聳やかし高唱し丹禽(鳳凰)の若し。
作品番号 2019-40
七絶・三元喜醉吟
當喜天晴旭日臨, 當に天晴れて旭日臨むは喜ぶべく,
莫傾椒酒帶愁斟。 椒酒を傾くるに愁ひを帶びて斟む莫れ。
山妻如此説含笑, 山妻 此くの如く説(い)ひて笑みを含み,
勸盞愚生擅醉吟。 盞を勸(すす)む 愚生の醉吟を擅(ほしいまま)にするに。
作品番号 2019-41
七絶・三元酒美正堪斟
三元夢醒到于今, 三元夢醒めて今に到り,
紅旭燒霞煥煥臨。 紅旭 霞を燒いて煥煥と臨ず。
歳歳初思人更老, 歳歳 初めに思ふは人更に老ゆるも,
年年酒美善堪斟。 年年 酒美(うま)く善く斟むに堪ふることなり。
作品番号 2019-42
五律・迎新試筆中華新韻十四部各一首
其一 中華新韻一麻
三元寒夢醒, 三元 寒夢醒め,
椒酒涌山家。 椒酒 山家に涌く。
禿筆霑金盞, 禿筆 金盞に霑ひ,
硯池開墨花。 硯池に墨花開く。
雲箋詩眼耀, 雲箋に詩眼耀き,
旭日錦霞佳。 旭日 錦霞に佳なり。
吟志年年老, 吟志 年年老ゆるも,
歳歳興無涯。 歳歳 興に涯なし。
其二 中華新韻二波
夢醒迎新歳, 夢醒めて新歳を迎へ,
三元祝意多。 三元に祝意多し。
瑤舟浮酒海, 瑤舟(さかずき)酒海に浮き,
夫婦醉香波。 夫婦 香波に醉ふ。
乘興吟魂動, 興に乘って吟魂動き,
裁詩凍筆呵。 詩を裁くに凍筆呵す。
擬唐尋章巧, 唐に擬へ章を尋ぬること巧みに,
摘句競鸚哥。 句を摘むこと鸚哥(インコ)と競ふ。
其三 中華新韻三皆
巫女流紅涙, 巫女 紅き涙を流し,
雲中惜遠別。 雲中に遠き別れを惜しむ。
三元香夢醒, 三元 香夢醒め,
一閃曙光潔。 一閃 曙光潔し。
笑貌斟椒酒, 笑貌(笑顔)にて椒酒を斟み,
温顔傾玉爵。 温顔にて玉爵を傾く。
無言老妻看, 言無く老妻は看る,
野叟寫七絶。 野叟の七絶を寫(か)くを。
其四 中華新韻四開
夢醒人延壽, 夢醒めて人 壽を延ばし,
東天新旭開。 東天に新旭開く。
三元椒酒涌, 三元 椒酒涌き,
一醉繆斯來。 一醉 繆斯來たる。
笑勸詩隨意, 笑みて勸む 詩の意に隨ふを,
巧彈琴養才。 巧みに彈ず 琴の才を養ふを。
老翁乘雅興, 老翁 雅興に乘り,
吟歩上瑤臺。 吟歩し瑤臺に上る。
其五 中華新韻五微
三元尚寒冷, 三元なほ寒冷なるも,
新旭雪原輝。 新旭 雪原に輝く。
取暖爐邊酒, 取る暖は爐邊の酒,
洗塵胸裡灰。 洗ふ塵は胸裡の灰。
醉乘詩興好, 醉って乘る 詩興の好きに,
吟扮羽人飛。 吟じて扮す 羽人の飛ぶに。
千里騎仙鶴, 千里 仙鶴に騎り,
遐思欲適歸。 遐思 適歸せんと欲す。
其六 中華新韻六豪
三元啜杯酒, 三元 杯酒を啜り,
一醉扮詩豪。 一醉して詩豪に扮す。
察看庭梅雪, 察看す 庭梅に雪,
素描箋紙梢。 素描す 箋紙に梢。
芳春生筆底, 芳春 筆底に生じ,
字眼耀晴霄。 字眼 晴霄に耀く。
綴玉花魁美, 玉を綴りて花魁美しく,
暗香蝸舎飄。 暗香 蝸舎に飄ふ。
其七 中華新韻七尤
愛妻含笑勸, 愛妻 笑みを含んで勸む,
酒美轉風流。 酒美(うま)く轉(うた)た風流。
醉夢尋霞洞, 醉夢に霞洞を尋ね,
歳朝登蜃樓。 歳朝 蜃樓に登る。
欄干玉人慰, 欄干に玉人は慰む,
晩境老翁愁。 晩境に老翁の愁ふるを。
善感頻裁賦, 善感なれば頻りに賦を裁くも,
苦吟難罷休。 苦吟 罷休(結着)し難し。
其八 中華新韻八寒
詩翁茅舎恨, 詩翁茅舎に恨む,
陽暦歳朝寒。 陽暦の歳朝の寒きを。
取暖傾杯子, 暖を取るに杯子(さかずき)を傾け,
傷心花酒錢。 心を傷めては酒錢を花(ついや)す。
生涯功譽少, 生涯に功譽少なく,
作品墨痕凡。 作品に墨痕凡なり。
可愍吟魂老, 愍(あはれ)むべし吟魂老いて,
牢騷積廢箋。 牢騷(不平)廢箋に積むを。
其九 中華新韻九文
陽暦三元雪, 陽暦 三元の雪,
寒中傾老春。 寒中 老春(醇酒)を傾く。
山妻醉椒酒, 山妻 椒酒に醉ひ,
野叟鼓詩魂。 野叟 詩魂を鼓す。
鶴唳人呵筆, 鶴唳(な)いて人は筆を呵し,
墨流題就新。 墨流れて題は就新(迎新)。
幸得佳作後, 幸ひ佳作を得ての後,
更飲買餘醺。 更に飲んで餘醺を買ふ。
其十 中華新韻十唐
歳朝傾椒酒, 歳朝 椒酒を傾ければ,
妙想帶靈香。 妙想 靈香を帶ぶ。
瑤舟浮硯海, 瑤舟(さかずき)硯海に浮き,
醉筆弄時光。 醉筆 時光を弄ぶ。
回憶生涯好, 回憶せる生涯は好く,
承蒙年壽長。 承蒙(受け)し年壽は長し。
仰天當感謝, 天を仰いで當に感謝すべく,
詩翼正堪張。 詩翼 正に堪張るに堪ふ。
其十一 中華新韻十一庚
歳朝無世務, 歳朝 世務無く,
金盞正堪傾。 金盞 正に傾くるに堪ふ。
對飲賢妻笑, 對飲するに賢妻笑み,
察知遐想生。 察知す 遐想の生ずるを。
瑤舟浮硯海, 瑤舟(さかずき)硯海に浮き,
詩叟釣鯤鯨。 詩叟 鯤鯨を釣る。
揮筆求佳作, 筆を揮って佳作を求め,
心光花眼明。 心光 花眼(老眼)に明るし。
其十二 中華新韻十二斉
三元吟醉好, 三元 吟醉(吟詩醉酒)するが好く,
磨墨試新題。 墨を磨き新題を試む。
才筆霑杯酒, 才筆 杯酒に霑(うるお)ひ,
詩魂穿羽衣。 詩魂 羽衣を穿つ。
幸逢神媛笑, 幸ひ逢へる神媛笑み,
廉賣曼辭奇。 廉賣す 曼辭奇なり。
佳境欣然對, 佳境に欣然と對せる,
花容似老妻。 花容は老妻に似る。
其十三 中華新韻十三支
三元有金盞, 三元に金盞あり,
美醉伴詩思。 美醉すれば詩思を伴ふ。
禿筆霑椒酒, 禿筆 椒酒に霑ひ,
墨花開硯池。 墨花 硯池に開く。
天晴春意動, 天晴れて春意動き,
風暖賞心馳。 風暖かく賞心馳す。
遊目霞箋看, 目を遊ばせて霞箋に看る,
芳梅綴玉枝。 芳梅の玉を綴りし枝。
其十四 中華新韻十四姑
三元傾美酒, 三元 美酒を傾け,
午睡枕音書。 午睡するに音書を枕とす。
良夜嫦娥笑, 良夜に嫦娥笑み,
佳城詩鬼甦。 佳城に詩鬼甦る。
風流多未有, 風流に未だ有らざる多く,
韻事喜談無。 韻事は無を談ずるを喜ぶ。
欲解斯謎語, 斯の謎語を解かんとし,
騷翁迷夢途。 騷翁 夢途に迷ふ。
收尾 七言絶句
猪突猛進歳朝馳, 猪突猛進 歳朝に馳せ,
醉寫中華新韻詩。 醉って寫(か)ける中華新韻の詩。
不顧非才十四首, 非才を顧みざる十四首,
勞多功少若卮辭。 勞多く功少く卮辭のごとし。
作品番号 2019-43
五絶・迎新即亊
夢醒人延壽, 夢醒めて人 壽を延ばし,
東天新旭開。 東天に新旭開く。
愛妻含笑勸, 愛妻 笑みを含んで勸む,
椒酒洗心埃。 椒酒の心の埃を洗ふを。
作品番号 2019-44
七絶・迎新即亊
元旦笑迎孫子來, 元旦 笑って孫子來たるを迎へれば,
女兒夫婦報懷胎。 女兒(むすめ)夫婦 懷胎せるを報ず。
欣欣傾盞歡談處, 欣欣として盞を傾け歡談する處,
醉借朱顔喜酒災。 醉って朱顔を借り酒災を喜ぶ。
作品番号 2019-45
五律・迎新醉夢
美醉肱堪枕, 美醉すれば肱は枕とするに堪へ,
繆斯攜酒來。 繆斯(ミューズ)酒を攜へて來たる。
瑤舟浮硯海, 瑤舟(酒杯)硯海に浮き,
興趣促詩才。 興趣 詩才を促す。
磨墨靈思涌, 墨を磨けば靈思涌き,
仰天遐想開。 天を仰げば遐想(ファンタジー)開く。
花精眼前舞, 花の精 眼前に舞ひ,
筆路上春臺。 筆路は春臺へ上る。
作品番号 2019-46
七律・新年試筆
新年試筆醉翁哀, 新年 筆を試して醉翁哀し,
難斷苦吟嗟菲才。 苦吟斷ちがたく菲才を嗟(なげ)く。
眼底詩箋雪原耀, 眼底(眼の前)の詩箋に雪原耀き,
寒中思路旭光開。 寒中の思路に旭光開く。
詩魂奮起張鵬翼, 詩魂 奮起して鵬翼を張り,
手翰高馳上鳳臺。 手翰(ふで)は高く馳せて鳳臺へ上る。
空想自由無界限, 空想は自由にして界限なく,
春花繚亂滿蓬莱。 春花繚亂して蓬莱に滿つ。
作品番号 2019-47
五絶・立 春
老叟寒齋想, 老叟 寒齋に想ふ,
春風何日回? 春風 何(いつ)の日 回(かへ)らんや?
無言磨凍硯, 無言で凍硯を磨き,
呵筆試題梅。 筆を呵して試む 梅を題とするを。
作品番号 2019-48
七絶・立 春
春風遲鈍未歸回, 春風 遲鈍にして未だ歸回(かへ)らず,
老叟爐邊傾酒杯。 老叟 爐邊に酒杯を傾く。
醉借朱顔夢霞洞, 醉って朱顔を借りて霞洞を夢みれば,
眼前笑貌是花魁。 眼前の笑貌は是れ花魁。
作品番号 2019-49
五律・立 春
逍遙硯池畔, 逍遙す 硯池の畔(ほとり),
問候立春梅。 候を問ふ 立春の梅に。
未破紅花蕾, 未だ紅き花の蕾を破らずも,
羞傾緑酒杯。 羞(すす)む 緑酒の杯を傾むけよ と。
旗亭村婦似, 旗亭の村婦は似る,
詩境繆斯陪。 詩境に繆斯(ミューズ)の陪するに。
閑話含風韻, 閑話 風韻を含む,
清醪洗死灰。 清醪 死灰を洗へば。
作品番号 2019-50
七律・立 春
先磨香墨想池隈, 先ず香墨を磨いて池の隈を想ひ,
試筆立春題雪梅。 試筆 立春 雪梅を題とす。
日照氷魂寒水映, 日は照らす 氷魂の寒水に映るを,
人玩蓓蕾酒亭陪。 人は玩ぶ 蓓蕾(未開の蕾)の酒亭に陪するを。
横枝如袖綴珠玉, 横枝 袖の如くに珠玉を綴り,
老板傾壺勸酒杯。 老板(店の主人)壺を傾け酒杯を勸む。
美醉醺然空想裡, 美醉して醺然と空想する裡(なか)に,
花精巾舞扮花魁。 花の精 巾舞して花魁(おいらん)に扮す。
作品番号 2018-51
新春述懷 其一
益増風格老松梅 いや増す風格 老松梅
古竹枯猶多用材 古竹 枯れて猶 多用の材たり
執着人生有終實 人生有終の実に執着すれば
坦懷日日自招徠 坦懐なる日々 自ずから招来せん
作品番号 2018-52
新春述懐 其二
舊年多病半途恢 旧年多病 半途の恢
元旦屠蘇笑語陪 元旦の屠蘇 笑語陪す
望外高齡冥土近 望外なる高齢 冥土近からんも
虚心生活亦悠哉 虚心の生活 亦悠なる哉
作品番号 2018-53
新年述懷 其三
結婚前己亥 結婚 前の己亥
苦樂化醃醅 苦楽化して醃醅(えんばい)のごとし
今有聲欸乃 今は有り 声の欸乃(あいだい)す
互望存息災 互いに望む 息災に存(なが)らえるを
「醃醅」…醤油と酒 「欸乃」…船頭が舟を漕ぐときのかけ声。櫓の音。
作品番号 2018-54
歳晩偶成
窗前枯葉舞寒風 窓前 枯葉 寒風に舞ふ
百八鐘聲歳已窮 百八の鐘声 歳已に窮まる
詩債成山君勿笑 詩債 山と成る 君笑ふこと勿かれ
爐邊獨坐苦吟翁 炉辺 独り座す 苦吟の翁
作品番号 2018-55
年頭書懷
己亥茲迎春又回 己亥 茲に迎へ 春又回る
家眷無恙笑顔開 家眷 恙無し 笑顔開く
三元淑氣人如問 三元の淑気 人如し問はば
馥郁幽香瓶裏梅 馥郁たる幽香 瓶裏の梅と
作品番号 2018-56
新歳與孫遊 其一
親迎少孫春意回 親迎 少孫 春意回る
喜騎我背喚呼催 喜騎として我背で喚呼を催す
小兒發育瞬時刻 小児の発育 瞬時の刻み
私想何遊期再來 私は想ふ 何れの遊ぞ 再来を期せん
作品番号 2018-57
新歳與孫遊 其二
親迎和顏春色開 親迎す 和やかな顔 春色開く
叫聲近響狹房埃 叫声近く響き 狭房は埃
成人浮眼瞼更見 成人 眼に浮かぶ 瞼に更に見ゆ
煩悶捻身嘆老梅 煩悶として身を捻じり老梅に嘆く
作品番号 2018-58
新年
萬里歸ク春又囘 万里 郷に帰れば 春又た回る
鏡中今識六分催 鏡中 今識る 六分催すを
朱顔不見梅花主 朱顔 見えず 梅花の主
白屋無風香未來 白屋 風無く 香未だ来たらず
東京から故郷に帰れば、居ただけ春が回って来ます。
鏡には六十を過ぎた姿が映っています。
屠蘇を飲んだ私は梅の花の主(父母)を会うことも有りませんし、
貧しい家にはその香すら未だ届いてはいませんが。
作品番号 2018-59
盆梅詩興
寒梅殊有趣 寒梅 殊に趣有り
老木靜如禪 老木 静かに禅の如し
馥郁共相和 馥郁 共にに相和し
題詩幾変遷 詩を題すこと 幾変遷
作品番号 2018-60
新年(人生八十学雄魁)
老翁剛鋭對崔嵬 老翁は剛鋭にして 崔嵬に對す
秀麗作家銘賞杯 秀麗の作家は 賞杯に銘す
先進励精凡俗我 先進は凡俗の我を 励精す
人生八十學雄魁 人生八十 雄魁に学ばん
アコンカグアを目指す三浦雄一郎氏は86歳、昨年国際アンデルセン賞を受賞した角野栄子氏は84歳。
凡俗の私は83歳になった。年上の才覚ある人がまだ頑張っている。もう80歳を超えたからではなくてまだ80代、これからだという気持ちを持ち続けたい。
先輩の生き方から学び取らなければならないと思っている。
(過日三浦雄一郎氏の登頂断念のニュースを見たが 私の彼に対する見方は変わらない)