2019年の投稿詩 第361作は静岡の芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-361

  梅雨書懐        

聽盡羣蛙十日霖   聴き尽す群蛙 十日の霖

天空漠漠雨聲深   天空 漠漠 雨声深し

紫陽花發書窓下   紫陽花発く 書窓の下

破屋閑人得一吟   破屋の閑人 一吟を得たり 

          (下平声「十二侵」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第362作は静岡の芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-362

  避暑偶作        

逃避炎威孤館中   炎威を逃避す 孤館の中

溪聲洗耳引涼風   溪声耳を洗ひ 涼風を引く

拷A日午華胥夢   拷A 日午 華胥の夢

微動窓前百日紅   微動す窓前の百日紅 

          (上平声「一東」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第363作は静岡の芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-363

  消夏雜詩        

蟬吟滿地暑如烘   蝉吟 地に満ち 暑烘(た)くが如し

水浴泠然小院中   水浴 泠然たり 小院の中

消夏三杯斟麥酒   消夏 三杯 麦酒を斟む

午陰一脈引清風   午陰 一脈 清風を引く

          (上平声「一東」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第364作は静岡の芙蓉漢詩会の 柳村 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-364

  松林散策        

夕照寥寥歩晩林   夕照 寥寥 晩林を歩む

殘蟬啼罷客愁深   残蝉啼き罷んで 客愁深し

龍蟠松樹千年翠   龍蟠の松樹 千年の翠

幽境裁詩秋可尋   幽境 詩を裁して 秋尋ぬべし

          (下平声「十二侵」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第365作は静岡の芙蓉漢詩会の 石甫途 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-365

  依元號令和        

一三七四歳鳴梭   一三七四歳 梭鳴りて

大化杼初維令和   大化の杼初 令和に維ぐ

元號象徴民庶絆   元号 象徴す 民庶の絆

人心堅固絶干戈   人心堅固 干戈を絶たんとす

          (下平声「五歌」の押韻)

大化の改新(645)以来元号が続いて(1374)年に当たる。

「梭」; 機織りの横糸を通す管
「杼」; 機織りの横糸を通す道具

 新号は船出したばかり どんな時代になるか判らない。
 元号の称号はその時代の安寧を必ず願ったはず。
 争うは必然がある。それでもなお戦禍は避けたい。    


























 2019年の投稿詩 第366作は静岡の芙蓉漢詩会の 石甫途 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-366

  行山間        

鳥語欣欣五月天   鳥語 欣欣 五月の天

喧騒壕組群遷   喧騒 緑蔭 群を組み遷る

峽風谷閣清清水   峡風 谷閣 清々の水

兩岸岩頭作拗川   両岸の岩頭 拗川を作る

          (下平声「一先」の押韻)

「谷閣」; 谷に掛かる大橋
「拗川」; 曲がりくねった川

 安倍奥千頭に入る前、渓谷とそれに掛かる大きな橋がある。
 橋のたもとで休憩した時の状景。
 爽やかな風と鳥の声が忘れられない。   


























 2019年の投稿詩 第367作は静岡の芙蓉漢詩会の 石甫途 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-367

  初夏山中        

拷e雛鶯在眼前   緑影雛鶯 眼前に在り

枝間踊躍様姿圓   枝間に踊躍 様姿円か

吃聲習練薫風裡   吃声 習練 薫風の裡

待望呼喉谷谷連   待望す 呼喉谷々に連なるを

          (下平声「一先」の押韻)

 鶯は人の前には殆ど姿を現さない。
 中学生の頃、早朝から鳥かごを持って主に目白を追っかけていた。
 そんな体験が奇遇の経験を得た。

  

























 2019年の投稿詩 第368作は静岡の芙蓉漢詩会の 石甫途 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-368

  龍孫        

龍孫雨後竹林穿   龍孫 雨後 竹林を穿つ

驚喜何多溢徑邊   驚喜す 何んぞ多し径辺に溢る

掘筍老夫彎曲體   筍を掘る老夫 弯曲の体

搖籠歸路夕陽前   籠揺れる 帰路 夕陽の前

          (下平声「一先」の押韻)

「龍孫」; たけのこ

 知人が筍堀に招いてくれた。
 掘り方を教えてくれた老人は、どんどん持ってけといって掘ってくれた。
 自分はたった二本だけ籠にいれて帰っていく。
 老人は季節の間、都度、食べ料だけ採って美味しく食べているんだろうなあ、と思ったが揺れる籠は、印象的であった。    


























 2019年の投稿詩 第369作は静岡の芙蓉漢詩会の F・U さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-369

  秋夜寄友        

雲漢轉西新雁過   雲漢西に転じて 新雁過ぎ

早涼瑟瑟透衣羅   早涼瑟瑟として 衣羅に透る

遙懐病臥叢林友   遥かに懐ふ 病臥 叢林の友

欲寄信書愁緒多   信書を寄せんと欲するも 愁緒多し

          (下平声「五歌」の押韻)

「叢林」: 樹木が群がって生えている林のように、多くの雲水が集って修行する禅林、道場

























 2019年の投稿詩 第370作は静岡の芙蓉漢詩会の F・U さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-370

  立天龍川鵲大橋畔憶七夕        

七夕驅車立鵲橋   七夕 車を驅って 鵲橋に立つ

江風颯颯夜蕭蕭   江風 颯颯 夜蕭蕭

迥思織女牽牛會   迥かに思ふ 織女 牽牛の会

燦爛雙星望碧霄   燦爛たる双星 碧霄を望む 

          (下平声「二蕭」の押韻)

「双星」; 牽牛星(わし座の星アルタイル) 織女星(こと座の星ベガ)

 鵲大橋; 浜松市笠井と磐田市匂坂を結ぶ天竜川に架かる橋。
 カササギという鳥と笠井の「かさ」、匂坂の「さぎ」をかけて「かささぎ大橋」と命名されたという。  
 

























 2019年の投稿詩 第371作は静岡の芙蓉漢詩会の F・U さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-371

  池畔觀蓮        

早響蜩聲克稠   早に響く蜩声 緑樹稠(おお)し

皢光燦燦彩霞流   皢光(きょうこう)燦燦として 彩霞流る

香風吹轉翠盤露   香風吹き転ず 翠盤の露

紅藕嬋娟池水頭   紅藕 嬋娟 池水の頭(ほとり)

          (下平声「十一尤」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第372作は静岡の芙蓉漢詩会の T・E さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-372

  想令和改元        

混濁世情何處移   混濁の世情 何処にか移らん

風評萬萬衆民姿   風評万万たり 衆民の姿

改元此定平成逝   改元此に定まり 平成逝く

歴史變遷安泰思   歴史の変遷 安泰思ふ

          (上平声「四支」の押韻)

 改元はいろいろのことを想起される機会でした。    

























 2019年の投稿詩 第373作は静岡の芙蓉漢詩会の T・E さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-373

  今年最初看滿月        

履端既去酷寒迎   履端既に去って 酷寒迎ふ

衾暖夢蘇窓外明   衾暖かく夢蘇(さ)めて 窓外明し

皎月三更清絶極   皎月三更に 清絶の極み

畫然陰影滿場盈   画然たる陰影 満場に盈(み)つ

          (下平声「八庚」の押韻)

 今年(二〇一九年)一月二十二日最初の満月を看る。近隣また別世界でした。  

























 2019年の投稿詩 第374作は静岡の芙蓉漢詩会の H・K さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-374

  想時        

汀洲遠望夕陽沖   汀洲 遠く望めば 夕陽沖(やわら)か

暮景深閑一日終   暮景 深閑 一日終る

今到古稀耽感慨   今古 稀に到り 感慨に耽る

人生萬事自然中   人生万事 自然の中

          (上平声「一東」の押韻)

「汀洲」; 浜辺 
    

























 2019年の投稿詩 第375作は静岡の芙蓉漢詩会の H・K さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-375

  訪鳳來寺        

閑林境寂鳳來通   閑林 境寂にして鳳来に通ず

參道蒼苔祗苑風   參道 蒼苔 祗苑の風

靜坐鐘音山上響   静かに坐せば鐘音  山上に響く

嶮阻峭壁法雲空   嶮阻の峭壁 法雲の空

          (上平声「一東」の押韻)

「祗苑風」; 寺の境内に吹く風
「嶮岨」; けわしいこと
「峭壁」; そばたつ山
「法雲空」; 仏法雲の空

    

























 2019年の投稿詩 第376作は静岡の芙蓉漢詩会の K・K さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-376

  祝登科        

今宵朗報破淺眠   今宵の朗報 浅眠を破る 

苦節修文十五年   苦節の修文 十五年

上帝爲君開大道   上帝 君が為(ため)に 大道を開く

秋江得意月輝天   秋江意を得れば 月天に輝く

          (下平声「一先」の押韻)

   十余年の努力、法科大学院を二回やって、ようやく司法試験に合格した。
電話は涙で声にならない。きっと神様が君のために道をつけてくれたんだろうよ。
得意の絶頂、川辺を名月が照らしている。

 


























 2019年の投稿詩 第377作は静岡の芙蓉漢詩会の K・K さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-377

  遠聴初雷        

雷光裂宙怪雲留   雷光宙を裂き 怪雲留まる

未到轟音搖稻頭   未だ到らざる轟音 稲 頭を揺らす

戴笠村夫視田憾   戴笠の村夫 田を視て憾(うら)みたり

先危盆雨帯泥流   先に危ぶむ 盆雨泥流を帯するを

          (下平声「十一尤」の押韻)

 黒々とした雲が迫ってくる。
 雷光もピカピカしている。
 この分では豪雨になりそうだ。
 田を見回る農夫は、集中豪雨が田を泥だらけにしないか、恐れている。  
 

























 2019年の投稿詩 第378作は静岡の芙蓉漢詩会の K・K さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-378

  初夏山中        

褶曲梯田滿水新   褶曲の梯田 水を満たして新たなり

藍天白日映如鱗   藍天の白日 映じて鱗の如し

營營育稻千年累   営営 稲を育くむ 千年の累

美景寧哀寸土貧   美景 寧ろ哀れなり 寸土の貧

          (上平声「十一真」の押韻)

 しわしわに曲がりくねった棚田は、水を満たして新鮮な風景だ。
 青空の太陽光が反射して、ちょうど鱗のようだ。
 営々と何百年もここで稲を育てていた人々は大変だ。
 貧しいが故に僅かな土地を作ってきたが、美しいという棚田は、かえって哀れを誘う。  
 

























 2019年の投稿詩 第379作は静岡の芙蓉漢詩会の K・K さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-379

  對鏡        

我家嬌女未知装   我家の嬌女 未だ装ふを知らざるも

興味津津坐鏡房   興味津津 鏡房に坐す

挿髪載頭眞満意   髪に挿し頭に載せ 眞とに意を満たす

元來餻飾塑膠琅   元来 餻飾 塑膠の琅

          (下平声「七陽」の押韻)

 四、五歳の娘はまだ装うことを知らないが、
 大きな鏡を膝にのせて何やらのぞき込んでいる。
 見れば髪飾りを挿した自分の姿のようだが、ご満悦の様子。
 だが、その飾りは先ほど食べたケーキに乗っていたプラスチックのつまだ。  
 

























 2019年の投稿詩 第380作は静岡の芙蓉漢詩会の M・S さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-380

  台風十九号被災        

被災唐突似龍蟠   被災 唐突 龍蟠るに似たり

洪水紛紛崩岸歎   洪水 紛紛 崩岸の歎き

満目消沈房総痛   満目 消沈 房総を痛み

萬民救濟復興闌   万民 救済 復興闌なれ

          (上平声「十四寒」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第381作は静岡の芙蓉漢詩会の 洋靖 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-381

  夜坐感秋        

半夜月光星火流   半夜月光 星火流る

籬辺蟲語使人愁   籬辺の虫語 人をして愁しましむ

空嘆君去黄泉遠   空しく嘆く君去って 黄泉遠し 

歳歳難堪搖落秋   歳歳堪へ難し 揺落の秋

          (下平声十一尤韻」の押韻)

「黄泉」; 地下に湧き出る泉。死後の世界。あの世
    

























 2019年の投稿詩 第382作は静岡の芙蓉漢詩会の 洋靖 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-382

  中秋望月        

碧天一筆玉輪描   碧天 一筆 玉輪描く

皓皓清光滿地饒   皓皓たる清光 満地饒(おお)し

信歩俳徊踏吾影   歩に信(まか)せ 俳徊 吾が影を踏む 

爽涼秋夜聴殘蜩   爽涼 秋夜 残蜩を聴く

          (下平声「二蕭」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第383作は静岡の芙蓉漢詩会の T・H さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-383

  訪宮古島        

風搖黍穂運微涼   風は黍穂を揺らし 微涼を運び

波滌珊瑚映夕陽   波は珊瑚を滌(あら)ひ 夕陽に映ず

千哩海南宮古島   千哩の海南 宮古島

麗花爭發世塵忘   麗花 争ひ発き 世塵を忘る

          (下平声「七陽」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第384作は静岡の芙蓉漢詩会の T・H さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-384

  爐邊讀書        

紙窓映月轉凄涼   紙窓は月に映えて 転た凄涼

獨坐爐邊夜正長   獨り炉辺に坐せば夜正に長し

添炭巻舒猶不倦   炭を添へて巻舒けば 猶ほ倦まず

臘梅半壁吐清香   臘梅 半壁 清香を吐く

          (下平声「七陽」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第385作は静岡の芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-385

  哀聖堂火災        

哥徳嚴森市島央   哥徳(ゴシック)厳森たり 市(シテ)島の央(なかば)

巴黎中世象徴香   巴黎(パリ)中世 象徴の香

茫然崩落惨凄報   茫然たり 崩落惨凄の報せに 

聖母慈顔修復光   聖母(マリヤ)の慈顔 修復に光(めぐみ)あらん

          (下平声「七陽」の押韻)

 パリ、ノートルダム大聖堂火災、尖塔が消失した。
 ケルンと並ぶゴシック建築の雄である。
 外観も素晴らしいが内部天井を仰ぎ見てその荘厳に打たれた。
 早期復旧に祈る。  
 

























 2019年の投稿詩 第386作は静岡の芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-386

  康復體操        

老氣横秋希遠冬   老気秋に横ふも 冬遠きを希み 

定期康復體操庸   定期 康復(リハビリ)体操 庸(つね)とす 

屈肢伸背須機械   肢屈し 背伸ばすに機械を須(もら)ふ

微汗身心當放鬆   身心微かに汗し 当に放鬆(ほうしょう)

          (上平声「二冬」の押韻)

 社会福祉会館にパワーリハビリの機械六機がある。
 お互い声を掛け合い、リズムを取って小一時間汗をながす。
 週一回の愉しみである。

「放鬆」; リラックス 


























 2019年の投稿詩 第387作は静岡の芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-387

  颶風有感        

疾風威力斷文明   疾風の威力 文明を断ち

停電日常生活縈   停電 日常生活に縈(まつわ)る

実感地球温暖急   実感す 地球温暖 急なるを

何猶抜本塞源行   何ぞ猶(ためら)ふ 抜本 源を塞ぐ行いを

          (下平声「八庚」の押韻)

 房総半島に集中被害をもたらした台風、小型ではあるが鋭利な刃物のようであった。
 近海の海水温度上昇が齎した新しい型、これからも威力増大するであろう。
 炭酸ガスを減らす。
 小出しの追加規制で原発を九年も止める愚、静岡県のたき火禁止、草木も高温燃焼で完全炭酸ガス化を奨励する愚、共に即刻見直しを。  


























 2019年の投稿詩 第388作は静岡の芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-388

  憶第九演奏百年        

板東俘虜逸材多   板東の俘虜 逸材多し

官史寛容可切磋   官史寛容 切磋を可とす

餘韻尤其衆心洗   余韻尤も其れ 衆心洗ふは

聞街歡喜混聲歌   街に聞こゆ 歓喜 混声の歌 

          (下平声「五歌」の押韻)

 第一次大戦期、青島等で俘虜となったドイツ軍兵士は板東収容所に集められた。
 所長松江豊寿は会津人、俘虜に対し公正友好的に処した。
 ここでの第九演奏が本邦初演となった。  
 

























 2019年の投稿詩 第389作は静岡の芙蓉漢詩会の 岳游 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-389

  中田島砂丘 遠州濱       

極目天連水   目を極むれば 天水に連なり 

翻波涼動風   波を翻して 涼風に動く

漣漪渦曲浦   漣漪 曲浦に渦まき

靉靆舞蒼空   靉靆 蒼空に舞ふ

傍母戯兒子   母の傍に 児子の戯れ

從夫奔幼童   夫に従(つ)いて 幼童の奔る

雙鷗來復去   双鴎来りて復た去り

孤艇彩霞中   孤艇 彩霞の中

          (上平声「一東」の押韻)

    

























 2019年の投稿詩 第390作は静岡の芙蓉漢詩会の 岳游 さんからの作品です。
 浜松市で11月31日に開かれた「芙蓉漢詩集25集」の合評会での作品です。

作品番号 2019-390

  奉賀 復元臼杵石佛群(大分)        

臼杵磨崖石佛姿   臼杵磨崖 石仏の姿

千年風雪有誰知   千年風雪 誰か有りて知らん

如來手足嘆顚倒   如來の手足 顚倒を嘆き

彌陀身頭傷隔離   弥陀の身頭 隔離を傷む  

精進近隣諸事補   精進の近隣 諸事補け

潔齋工匠復元司   潔斎せる工匠 復元司る

三尊立像森嚴極   三尊立像 森嚴極め

全土民心參観嬉   全土の民心 参観嬉しむ 

          (上平声「四支」の押韻)

  「臼井石佛」は、平安時代後期から鎌倉時代にかけて彫られ、遠く千年の歴史と文化を伝える六十余体の磨崖佛である。
 国の重要文化財の指定を永年の歳月をかけ、保存修理工事を平成六年三月に終える。
 頭部のみの姿であった大日如来も本来の姿に復元され、臼井磨崖佛四群五十九体が、平成七年六月国宝に指定された。
 復元に学者、技術者、工匠や村民達が四十余年の歳月を費す。