作品番号 2016-91
喜迎新春
新春祥瑞溢乾坤 新春の祥瑞 乾坤に溢れ
歳旦風光初計存 歳旦の風光に 初計存す
天候温和迎旭日 天候は温和にして 旭日を迎へ
皇居參賀祝慶旛 皇居の参賀に 祝慶の旛(はた)
1月2日、皇居一般参賀のTV中継を視ての感懐です。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-92
喜迎新年
初孫一歳新年門 初孫一歳の新年の門
託夢希望祝一呑 希望の夢託して一呑祝ふ
一度人生行我道 一度の人生我が道を行くなり
未来挑戦大和魂 未来に挑戦、大和魂なり
昨年待望の初孫同じ未年誕生嬉しさでいっぱいです。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-93
喜迎新年(二)
告曉晨鷄愕夢魂 晨鶏 曉を告げ 夢魂を愕かす
三餘三樂祝三元 三餘 三樂 三元を祝す
壽筵高唱南山曲 壽筵 高唱 南山の曲
何料衰殘聽暮猿 何ぞ料らんや 衰殘 暮猿を聽く
新年や喜悲交々の一里塚
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-94
迎新年參拜山西省懸空寺
恆山古廟映朝暾 恒山の古廟 朝暾に映じ
遠望其形似宙存 遠望するに 其の形 宙に存す似し
九脊飛樓三教奉 九脊の飛樓 三教を奉りたる
﨟烟盎盎惠風暄 祥烟 盎盎として 恵風暄なり
懸空寺は山西省大同市郊外の渾源にあります。「儒・釈・道教合祀」の寺です。
詩題の「元韻」から一昔以上前に訪れたこの地、この寺を思い起しました。
当時、年末年始のこの時期、雲崗石窟、平遥なども観光する人無く、夫と只二人だけでしたので存分に楽しめました。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-95
喜迎新年
歳日初陽入小園 歳日の初陽 小園に入り
慶風淑氣滿茅門 慶風 淑氣 茅門に満つ
裁詩先獻一杯酒 詩を裁し 先ず献ず 一杯酒
天地和平禱萬魂 天地 和平 萬魂に祷る
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-96
立春即事
気骨到猶存 気骨 猶存するに到も
難題殘子孫 難題 子孫に残す。
幾家流海嘯 幾家か海嘯に流るる、
何處鎮遊魂 何れの処にか遊魂を鎮めん。
掠燕懷舊交 掠燕 旧交を懐かしみ
開花想故園 開花 故園を想ふ。
春風如漂泊 春風 漂泊するが如く
未肯潛東門 未だ東門を潜ること肯ず。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-97
立春即事 其一
天變地災安敢論 天變 地災 安んぞ敢へて論ぜんや
寒波來襲復何言 寒波 來襲 復何をか言はん
暖冬再問杞憂否 暖冬 再び問ふ 杞憂なるや否や
遮莫誰知春自温 遮莫 誰か知らん 春自ら温し
天恩や春来りなば水温し
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-98
立春即事 其二
兩三日夜六花翻 兩三 日夜 六花翻る
異變暖冬無一言 暖冬 異變 一言無し
驚殺眼前銀世界 驚殺す 眼前の 銀世界
乾坤萬事不須論 乾坤 萬事 論ずるを須ひず
一夜明け国土悉皆銀世界
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-99
立春即事
立春暖氣覆乾坤 立春の暖気は 乾坤を覆ひ
年初風和徹夜温 年初風は和らぎ 夜を徹して温し
天候異常還作悪 天候の異常は 還た悪さを作さんか
災難事故弄頻喧 災難と事故は 頻喧を弄す
今年のお正月松の内は、北陸・北國と雖も好天に恵まれ、これを気象庁の用語でも「新春暖気」と謂う由である。
ところが、寒の入りと大寒と共に異常寒波の襲来で、沖縄や奄美でも初雪騒ぎと相成り、これを異常気象と言わずに何と謂う。
この様な次第で、ニュース報道も連日喧騒の極みで、これは「世の中の頻喧」と謂うべき乎。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-100
立春即事
世紀寒波六花昏 世紀の寒波 六花の昏
周囲靜寂閉柴門 周囲 静寂 柴門を閉ざす
庭隅梅蕾C香未 庭隅の梅蕾 清香いまだし
獨酌醇醪暖老魂 独り 醇醪を酌み 老魂を暖む
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-101
立春即事
東風解凍祝三元 東風 凍れるを解き 三元を祝ひ
佳節南窗日自暄 佳節の南窗 日 自ずと暄かなり
小院無人催午睡 小院 人無く 午睡を催し
不料夢裏入桃源 料(はか)らずも 夢裏 桃源に入る
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-102
立春即事
三竿日上太平村 三竿 日は上る太平の村
晏起豈言慵出門 晏起 豈に言はんや門を出ずるに慵しと
殘雪遠山風尚冷 残雪 遠山 風尚ほ冷やかなるも
早梅前路氣微温 早梅 前路 気微かに温む
偶聽鶯囀吟情動 偶たま鶯囀を聴きて吟情動き
過履泥流野趣存 過って泥流を履むも野趣存す
信歩探春白雲下 歩に信せ春を探ぬ白雲の下
可憐恰是別乾坤 憐れむべし恰も是れ別乾坤なるを
天下太平謳歌する 村にお日さま上ったら起きたところで出かけよう 面倒なんて言うものか
遠い山には残り雪 吹く風はまだ冷たいが 道の先には梅の花 空気も少し温かい
ウグイスのこえ耳にして 詩をつくる気になってくる うっかり泥んこはまってもそれも野はらの趣だ
足の向くまま春探し 歩いていこう雲の下 なんと素敵な別世界 まるで違って見えてくる
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-103
立春即事 其一
立春春早老 立春 春 早く老い
候鳥薄啼痕 候鳥 啼痕薄し
大雪六花少 大雪 六花少なく
小寒三界温 小寒 三界温かし
人間多齟齬 人間 齟齬多し
萬物爲頽煩 万物 為に頽煩
徒爾年頭感 徒爾 年頭の感
若何殘耳孫 若何ぞ 耳孫に残すのは
この冬、我が家の山茶花、半月ほど早かった。
例年蜜を求めて群がる目白、鵯も来ない。
ミカンの輪切りをぶら下げても干からびてしまった。
そして、寒い、と感じる日も僅か。
まさに地球温暖化。
だが、老人に出来ることは・・・。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-104
立春即事 其二
寒波覆全土 寒波 全土を覆ふ
豪雪亦氷痕 豪雪 また 氷痕
生活搖基幹 生活 基幹を揺るがし
交通守底根 交通 底根を守らんとす
龍如萬象馭 竜 万象を馭するが如し
春制一時奔 春 一時 奔るを制ふ
安堵追儺客 安堵す 追儺の客
憙心連足跟 喜心 足跟を連ぬ
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-105
立春即事
新春拝宮陽明門 新春拝宮する陽明門
極意行儀知三猿 行儀の極意三猿に知る
狂氣世情非道理 狂気の世情道理非ず
平和人類遠行宛 人類平和の行く宛遠し
年明け日光東照宮陽明門に三猿を見て現代の世情に痛感。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-106
立春即事
湖上煙波渡彩鴛 湖上 煙波 渡る彩鴛
天邊吹雪正銷魂 天辺 吹雪 正に銷魂
旱苗得雨田青稔 旱苗 雨を得て 田青く稔り
枯木逢春嫩緑繁 枯木 春に逢ふて 嫩緑繁る
歳月不居疎白髪 歳月 居らず 白髪を疎み
人生如颯恨黄昏 人生 颯の如く 黄昏を恨む
縦令吾滅捐刀戟 縦令(たとひ)吾滅し 刀戟を捐るとも
纔剩詩盟與筆痕 纔かに剰る 詩盟と筆痕
「刀戟」: 刀と戟。転じて生きる術。
「詩盟」: 詩を作る仲間。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-107
立春即事
暖冬更凜冽 暖冬 更って凜冽
愛日牖纔暄 愛日の牖(まど) 纔かに暄かし
春運人唯老 春は運るも 人は唯だ老ゆるのみ
誰知七生魂 誰か知る 七生の魂
「愛日」: 『左伝』文公七年、注に「冬日可愛(冬日は愛すべく)、夏日可畏也(夏日はおそるべきなり)」に基づく。
暖冬続きといわれていたが急に真冬日の寒さに変わり、
冬の日差しが入る窓だけがわずかに暖かい。
立春は蘇り巡ってくるけれど、人は老いていくほかはない。
七度生まれ変わるという魂を誰が知っていようか。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-108
立春即事(由維也納調) 立春即事(ウイーンからの調べ)
新歳欧州府樂園 新歳 欧州の楽府の園
指揮協奏自由魂 指揮と協奏 自由なる魂
史編七五周年紀 史編は七五周年の紀
調達C和響本根 調達清和す 本根に響かん
今年もニューイヤーコンサートがウイーン楽友教会から全世界へ衛生中継された。
指揮は今年で三回目となるマリス・ヤンソンスさんのもと、管弦楽団はのびやかに演奏を楽しんでいるかのようである。
歴史を経て七五年目という記念すべき新年の演奏、しかも昨年国連創設七〇年を迎えたということで、潘 基文(バンギムン)事務局長を招いて行われ、最初の曲は、「国連行進曲」が初めて演奏された。
美しく、平和で清らかな調べが、世の根本となるように世界中に響きわたっている。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-109
立春即事
報春忽覺早梅村 春を報ず忽ち覚めむ早梅の村
欲訪東君詩趣存 訪れんと欲す東君詩趣存す
一脈山光孤月照 一脈の山光孤月を照らす
陶然信歩惠風暄 陶然として歩むに信せて恵風暄なりめ
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-110
立春即事
韶光僅識早梅村 韶光 僅かに識る早梅の村
瞥見開花又杜門 開花を瞥見して又 門を杜ざす
寄信C~可凍筆 信を寄せんと神を清(す)ませて凍筆を呵し
忘寒啜茗憶春暄 寒を忘れんと茗を啜りて春暄を憶ふ
茅檐遷朶鶯聲澁 茅檐 朶を遷りて 鴬声渋り
草屋圍爐笑語喧 草屋 炉を囲みて 笑語喧し
養病今年無事否 養病の今年 無事なるや否や
封書報節案人言 封書 節を報じて人を案ずるの言
春の景色を僅かに識様になった早咲きの梅が咲く村で、
華が開くのをちらっと見てまた門を閉じていました。
手紙を送ろうと心を落ち着けて毛先が凍った筆に息を吹きかけて暖め、
寒さを忘れようとお茶を啜って春の暖かさを思っていました。
茅葺きの軒先では、まだ春が浅いので、木の枝を移る鴬(うぐいす)の鳴き声が未だ上手に出ないようで(鴬(うぐいす)は練習 をして上手く鳴くことが出来るようになります。)、
草葺きの家では囲炉裏を囲んで笑い声がやかましいほどになっていました。
病気の療養をする今年は、何事も無く過ごすことが出来るでしょうか。
封をした手紙には季節を知らせて人のことを考える言葉を綴っていました。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-111
立春即事 一
黃花荒徑未申繁、 黄花 荒径に未だ申び繁らず
絮種空庭已宿根。 絮種 空庭に已に宿り根ざせり。
冷氣萌芽零玉露、 冷気 萌芽に玉露を零し
陽光潤葉帶香魂。 陽光 潤葉に香魂を帯ぶ。
君巡宇宙攜新志、 君は宇宙に巡れ 新志を携へ
我待郊墟贈隻言。 我は郊墟に待たん 隻言を贈る。
日進如逢尋経緯、 日進 もし逢わば経緯を尋ね
春來若遇觀乾坤。 春来 もし遇わば乾坤を観ん。
「黄花」と「絮種」で蒲公英のつもりです。
「申」は伸の仮借。
「未申」、「宿根」、「乾坤」、ともに卜易の言葉。
「香魂」は花の精。
進むべき道が決まっていく季節、別れを予感させ、そして、また再び巡りあうことを淡く期待した詩歌です。
隻言一首
春立てる
しげらずと見し
この庭に
ひとつぶひかる
タンポポの露
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-112
立春即事 二
閑夜滿香遙昼喧、 閑夜 香満ち 昼喧遥けくし
東風奏樂喜春言。 東風 楽奏で 喜春の言。
少雲零雨來遊客、 雲少し 雨たれて 来たり客に遊び
燈下蕾梅幽幻門。 燈下 蕾梅は幽幻の門。
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-113
立春即事 一
水漲春池魚背奔 水は春池に漲り 魚背奔る
東風任意繞林園 東風 意に任せて林園を繞る
忽聞笑語幼童影 忽ち聞く 笑語 幼童の影
老杖遊吟午日暄 老杖 遊吟すれば 午日暄なり
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-114
立春即事 二
春池水漲鴨鳧屯 春池水漲り 鴨鳧屯し
此出彼沈漁影翻 此に出で 彼に沈む 漁影翻る
風動柳枝如翠髪 風動き 柳枝は翠髪の如く
四望好節適吟魂 四望 好節 吟魂に適ふ
※こちらの詩は世界漢詩同好會の参加詩になります。
作品番号 2016-115
水仙花 詠物体
吐香破蕾雪中花 香を吐き蕾を破る 雪中の花
名欲冒仙黄白葩 名は仙を冒さんと欲す 黄白の葩
何必欺霜陶令菊 何ぞ必ずしも霜を欺くは陶令の菊のみならんや
不如清艶向人誇 如かず 清艶にして人に向って誇るに
「雪中花」: 水仙
<感想>
2016年の一般投稿を始めました。
皆さん、本年もよろしくお願いします。
謝斧さんから水仙の詩をいただきました。
起句で香り、承句で色を出して水仙の様子を描いていますが、「人に在るを人仙と曰ひ、天に在るを天仙と曰ひ、地に在るを地仙と曰ひ、水に在るを水仙と曰ふ」という言葉が「水仙」の語源と言われますから、その「仙」に着目した謝斧さんの発想は十分に説得力がありますね。
承句と転句の「陶令菊」を受けて結句の「清艶」の語を見ると、単なる美しさだけでなく、脱俗、俗塵を払い落とした精神的な清らかさも浮かび上がってきますね。
立春らしい詩を読ませていただきました。
2016. 2.12 by 桐山人
作品番号 2016-116
春雪賦
月華三尺雪 月華 三尺の雪
天地抱春山 天地 春山を抱く
一犬哮虚冴 一犬 虚に哮えて冴ゆ
客愁残夢間 客愁 残夢の間
<感想>
芳原さんからは、先月の雪景色を見ての作品でしょうね、「春雪」の詩をいただきました。
月明かりの下、三尺の雪が積もり、犬の声が一つ寒空に響く中、旅人は寂しく夜を過ごしている、という場面はまとまりがあるのですが、承句の「天地抱春山」はどういう役割を果たしているのでしょうか。
そもそも「三尺の雪」が積もっている大雪の中で、どこから春を感じ取っているのかが分からないですし、詩の主題が雪の夜なのか春の山なのかぼやけているように感じます。
お気持ちとしては、「新春の時に思いがけずの大雪だった」ということで、春の雰囲気を出したかったのか、それとも「抱」で「抱え込んで包んだ」ということでしょうか。
「春山」を残すなら、そのまま「隠春山」としないと辻褄が合わないでしょうね。
前半を「早春三尺雪 蒼月抱孤山」のような形にすると、お気持ちと合うかと思いますが、いかがでしょうか。
2016. 2.12 by 桐山人
作品番号 2016-117
雪中作
冷雲寒月古松枝 冷雲 寒月 古松の枝
清景h花竹影奇 清景 h花 竹影奇なり
埋屋玲瓏三尺雪 屋を埋む 玲瓏三尺の雪
蕭蕭袖手酒醒時 蕭々 手を袖に 酒醒むるの時
<感想>
仲泉さんのこちらの詩も雪の日にお作りになったものですね。
老松の枝越しに、冷ややかな雲と寒そうな月、起句だけで十分な舞台が出来上がっています。
それを受けての承句ですが、「清景」は「美しい景色」ということでしたら余分な言葉で、その「清景」を色々な素材で描いているのに、あっさりと全体を表す「清景」と出してしまっては、元も子もないですね。
あるいは「清らかな月の光」という意味かもしれませんが、それでも承句の「寒月」とかぶります。どちらにしても、ここは検討が必要でしょう。
後半はうまくまとまっていると思います。
2016. 2.13 by 桐山人
作品番号 2016-118
靭竹
睡醒庭染白 睡醒 庭白に染む
風竹雪条垂 風竹 雪の条 垂る
猫座傾頭看 猫座して 頭を傾げて看
閑人待撥枝 閑人は撥枝を待つ
<解説>
雪を初めてみる猫が、あまりに不思議そうに、また、雪が落ちるのを待って、それにじゃれようとする様をみて、上記のように作りました。
「白」(起)→「雪」(承)が、鬱陶しく感じるのと、そもそも「雪条」で意味は通じるのか、とも。
訓読すると、白居易のアレに似た雰囲気だったので、思わず「撥」を使いたくなり、「条」(承)→「枝」(結)と近親語をまたも使ってしまいました。
雪で竹の枝がしなっているのを(雪条垂)、ややもして溶けるとき、枝がはねあがる瞬間を待っている(待撥枝)、というイメージです。
ちなみにですが(これも出来が良い句とも思えないので変更しましたが)、推敲前の結句は「倣観傍忘時:倣ひて観れば 傍らに時を忘る」でした。
<感想>
起句は「朝起きたら庭一面雪景色だった」ということでしょうが、「染」はいかにも俗っぽい比喩です。「睡醒窓外雪」とか「一朝庭院白(皓)」というシンプルな書き出しが良いと思います。
承句はご心配されているように、「雪条」ではわかりにくいですし、「風竹」の「風」も雪が落ちてしまいますから邪魔ですね。
書き出しを「雪竹」とまず書けば、枝が垂れると書いても分かると思いますので、「雪竹一条垂」という形が無難かと思います。
後半は猫と人の対比ですが、雪に見とれる猫が枝のはね上がるのを見たらどうするか、それを想像してじっと猫を眺めているというのは、まさに「閑」と言うのがふさわしい情景ですね。
ただ、それを「閑」と言ってしまっては詩になりませんので、この発想をどう伝えるかが工夫の要るところですね。
「簷下猫凝睇 坐須風撥枝」という感じでしょうか。
2016. 3. 1 by 桐山人
作品番号 2016-119
寄聖龍先生玉作「詠普羅霍羅夫塡戰役」
當時老虎砲哮穿 当時 老虎 砲 哮り穿つ
戰史唯論損失員 戦史 唯だ損失の員(かず)を論ずるのみ
不覺各兵生活樣 各兵の生き活くる樣を覚えず
令民賭命殺人傳 民をして命を賭けしむる殺人の傳
<解説>
我印象深刻,戰役的詠詩。
我沒有一個很好的詩語。
老虎是コ國坦克的名稱。
我也,是?沒有經?過戰爭的時代。
聖龍さんの「詠普羅霍羅夫塡戰役」に感銘を受けてヘタクソなりに、また戦争を知らない世代として一首。
「老虎」は当時のドイツの最高峰ティガー戦車のつもりです。
虚字ばかりで理屈っぽいのと「賭命」の語がいかがわしい感じです。
あのころティガーの砲がたけり穿っていった。
戦史はそれによる損害の数が印象にのこる。
兵のひとりひとりに生きざまもあったことだろうにそれは語られない。
命懸けで命を奪わせる、そういう記録なのだ。
<感想>
展開としては起句が浮いていて残念ですが、戦争に対する素直なお気持ちが出ている詩だと思いました。
戦争は、敵をどれだけ倒したか、味方の損害はどのくらいかという数の捉え方しかしないもので、彼我の兵士ひとりひとりにそれぞれの人生があることを見ようとしません。
そのこと自体がすでに人間性を喪失しているのですが、権力を握った輩は、自分たちが国を引っぱっていると思うのでしょうね。
その思い込みというか勘違いが、どれだけ悲惨な過去を生み出したか、歴史が教えてくれていると思いますが、誰もが近視眼的な見方しかできない現代では、一層危険を感じます。
若い方々と共に、戦争を考えて行きたいですね。
2016. 3. 1 by 桐山人
作品番号 2016-120
春節即時
丙申迎幾度 丙申 迎ふこと 幾度
齡已古稀餘 齡(よわひ) 已に 古稀餘り
春日催萌起 春日は萌起を催(うなが)し
老殘遊逸書 老残は書に遊逸す
<感想>
題名の「即時」は「即事」でしょうね。
起句は斬新な表現ですが、「丙申」は六十年に一度なので、「幾度」となるとどのくらいでしょうか、大体三百年から四百年くらい、その感覚で承句を読むと「古稀餘」がいかにも短いという印象になります。
ここは「申年」の間違いでしょうね。
読み下しの「迎ふ」は「迎ふる」としないと活用が合いません。
結句はまとまりのある句ですが、転句は春節だからと取って付けたような印象で、「老残」と不調和です。
「萬物催萌起」あるいは「春草期萌起」という形で考えてはどうでしょうか。
2016. 3. 1 by 桐山人