作品番号 2015-01
雪中新年
村鶏初報暁 村鶏初めて暁を報じ
天地吉祥催 天地吉祥を催す
莫謂寒波苦 謂ふ莫れ寒波苦しと
春先綻早梅 春は先ず早梅を綻ばす
暖冬予報に裏切られ、大雪の正月を迎えようとしています。父祖伝来の雪とあきらめています。春を待つこと切。
作品番号 2015-02
新年
自斟洋酒対難眠 自ら洋酒を斟みて 難眠に対す
浅酔孤床送旧年 浅酔 孤床 旧年を送る
催起鬨鐘房尚冷 起を催す鬨鐘 房尚ほ冷やか
惰待陽光入窓辺 惰して待つ 陽光の窓辺に入るを
作品番号 2015-03
新年口占
天地新正春又回 天地新正 春 又回る
一家無恙笑顔開 一家 恙無く 笑顔開く
馬齡雖纍未知老 馬齢累ぬると雖も 未だ老いを知らず
嬉戯児孫亦善哉 児孫と嬉しみ戯れるも 亦 善き哉
作品番号 2015-04
乙未正月
田居辭職九囘春 田居 職を辞して 九回の春
六十三翁尚漾塵 六十三翁 尚 塵に漾ふ
欲倣中陰斯不得 中陰に倣はんと欲して 斯を得ず
天命遮莫酒詩親 天命 遮莫 酒詩に親しまん
作品番号 2015-05
人間七十二年
未年七十二歓迎 未年七十二を歓迎
余命幾何炳燭明 余命幾ばくか炳燭明し
宇宙万物滄桑変 宇宙の万物は滄桑の変なり
来世天空楽園生 来世は天空の楽園に生きる
(大意)今年で人間七十二の未年なり、老いても毎日前向きに悔い無きよう来世へ・・・
作品番号 2015-06
憂愁二十一世紀
格差拡大多貧窮 格差が拡大し貧窮多し
経済低迷富集中 富の集中により経済が低迷し
環境汚染温暖化 環境の汚染で温暖化になり
自然災害地球充 自然災害が地球上に充つ
宗教思想危機雨 宗教思想に危機の雨
世界大国冷戦風 世界大国に冷戦の風
不徳公民社会溢 不徳な公民が社会に溢れ
憂愁先先不見終 先先憂愁終わり見えず
(大意)フランスの経済学者:トマ・ピケティの「二十一世紀の資本論」の問題もしかり
世界は数々の問題を抱え混迷の時、非常に難しい局面にあります。
作品番号 2015-07
迎新
邦家安穏世情和 邦家安穏 世情和らぎ
冗子迎新感慨多 冗子新を迎へて 感慨多し
魚躍鳶飛民撃壌 魚躍り鳶飛びて民撃壌し
今朝四海好風波 今朝四海 好風波
鳶飛戻天魚躍于淵 豈弟君子 遐不作人 詩
君主の恩徳が広く及び、人々がその能力などによって、それぞれ所を得ているたとえ
作品番号 2015-08
新春初日
霧暁寒林斜径行 霧暁の寒林 斜径を行く
迢遥冷気聴鶏鳴 迢遥たる冷気鶏鳴を聴く
那辺雲去軽陰散 那辺に雲去り軽雲を散らす
東嶺天明旭日生 東嶺天明らか旭日生ず
作品番号 2015-09
迎新春
除夜鐘声十里囲 除夜の鐘声十里を囲む
毒龍忽滅仏灯輝 毒龍忽ち滅し仏灯輝く
児孫還到桃山地 児孫還り到る桃山の地
今歳平安旭日祈 今歳の平安を旭日に祈る
作品番号 2015-10
歳次乙未(一)
雨水迎春娘子來 雨水 迎春 娘子来たり
鵝毛片片一枝堆 鵝毛 片片として 一枝に堆く
鶇歸故里如何囀 鶇(とう) 故里に帰り 如何に囀らん
坐欲思ク問酒杯 坐に思郷 酒杯に問はんと欲す
鈴木先生、明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。新年の漢詩をお送りいたします。
「雨水」: 2015年2月19日は春節(旧正月)で雨水ともなる。
「鵝毛」: 白くて軽い雪。
「鶇」: つぐみ、越冬のため飛来する冬鳥。夏季には鳴かず、口をつぐんでいるとも言われる。
作品番号 2015-11
歳次乙未(二)
迎春送臘掃塵埃 迎春 臘を送り 塵埃を掃き
自酌屠蘇注斗魁 自ら酌す 屠蘇 斗魁に注ぐ
包五辛盤鍋貼食 五辛盤を包み 鍋貼を食せば
家中燈火照窓梅 家中 燈火 窓梅を照らす
「斗魁」: 北斗七星の柄杓の器の部分にあたる四星。転じて大きな杯。
「鍋貼」: 餃子を鍋で焼くこと。(我が家では麺に韮や卵を包んで焼いて食べます)『四民月令』二月に記述あり。
作品番号 2015-12
待春風
惑歳星獅子蟹宮 惑ふ歳星、獅子、蟹宮
天狼光彩貫寒空 天狼の光彩、寒空を貫く
離郷里夜多愁夢 郷里を離れて、夜、愁夢多く
久待呼春万里風 久しく待つ、呼春、万里の風
十二年で天球を一巡りする木星が、今年はようやく冬の星座から春のしし座、かに座へと移ってきました。
「歳星」の名のとおり、木星の動きに、年月の移ろいを感じます。
一方、冬の一等星シリウス(天狼星)はその名の由来のとおり、澄んだ夜空を焼き焦がすように今年も輝いています。
いるべき場所を離れて、夜ごと思うところも多くありますが、春とともに大きな風による変化を想像するところです。
素敵な一年になりますように。
作品番号 2015-13
新歴史絵巻
元旦念和心一新 元旦 和を念じ 心一新
緘封亡国正邪倫 緘封す亡国 邪を正す倫
史編絵巻何描写 史編 絵巻 何ぞ描写せん
躍進天成踊衆民 躍進し天成 踊る衆民
日本には、四大絵巻といわれている『源氏物語絵巻』・『信義山』・『半大納言』・『鳥獣人物戯画』があります。
これから新しい絵巻物語をと思いました。
年明け平和を念願し心も新たにした
亡国の動きを封じ込め邪気を正す人の道を
歴史の絵巻にどのように描こうか
まさに躍進し世の中が平和で栄え民衆が踊る喜びの絵巻を描いてゆきたいものである
「天成」: 天の運行が順調で万物が栄える
作品番号 2015-14
除夜参拝
香煙盈寺域 香煙 寺域に盈つ
人海浪千重 人海 浪千重
賽客深祈願 賽客 深く祈願するところ
迎春除夜鐘 春を迎ふ除夜の鐘
作品番号 2015-15
乙未所懷
餘生任意歩羊腸 余生 意に任せ 羊腸を歩む
不見前途無敢遑 前途見えざるも敢て遑ぐなし
花鳥生生驚耳目 花鳥 生々 耳目を驚かし
山河出没入詩嚢 山河 出没して詩嚢に入る
作品番号 2015-16
平成乙未年勅題「本」
旭日曈曈放瑞光 旭日 曈曈 瑞光を放つ
新正天地野梅香 新正の天地 野梅 香し
昨今難事春風底 昨今の難事 春風の底
務本心魂不可忘 本を務むるの心魂 忘るべからず
「曈曈」: 朝日の昇る様。
「難事」: 公私ともに難事が多いですね。
「務本」: (もとをつとむ)「論語」の学而第一編
「君子は本を務む。本立ちて道生ず。」
何か難しいことに出会っても、根本に戻って努力すればよい。
作品番号 2015-17
新年賀正
悠悠自適既双旬 悠々自適 既に双旬
筆翰漢詩仍悔頻 筆翰 漢詩 なお悔ること頻り
傘寿星霜波乱紀 傘寿の星霜 波乱の紀(みち)
余生祈念楽天春 余生は楽天の春を祈念す
作品番号 2015-18
新年感懷 一
鶏鳴報暁復春回 鶏鳴 暁を報じ 歳朝来たる
老気軒昂福運開 老気軒昂 福運 開かん
筆翰漢詩未成就 筆翰 漢詩 未だ成就せず
希求熟達独傾杯 熟達を希求し 独り杯を傾く
作品番号 2015-19
新年感懐 二
案頭鏡餅賀書堆 案頭(あんとう)に鏡餅 賀書うず高し
拝読青春面影回 拝読すれば 青春の面影めぐる
傘寿馬齢逝朋大 傘寿の馬齢 逝く友多し
余生長命福祥開 余生は長命の 福祥開かん
作品番号 2015-20
迎接乙未年所懷
羊年前路旭光來, 羊年の前路に旭光來たりて,
和氣致祥天欲開。 和氣 祥(さいわい)を致して天 開かんとす。
夫婦淺酌椒酒願, 夫婦 椒酒を淺酌して願ふ,
譱隣四海譱消災。 善隣 四海に善く災を消すを。
作品番号 2015-21
勝勝令・迎接乙未年述懷
羊腸詩路, 羊腸たる詩路,
猶剩前途, なほ剩(あま)す前途,
老翁清醒仰金烏。 老翁 清らかに醒めて金烏を仰ぐ。
山居慶賀, 山居に慶賀す,
與荊妻, 荊妻と,
啜屠蘇, 啜る屠蘇,
帶藥效、滌洗壽樗。 藥效を帶び、滌洗す 壽樗を。
○ ○
醉借紅顔, 醉って紅顔を借り,
鼓詠志, 詠志を鼓し,
展鴻圖, 鴻圖を展(ひろ)げ,
試揮吟筆潤江湖。 試みに揮ふ吟筆 江湖に潤ふ。
題襟但願, 襟(こころ)にあるを題とし ただに願ふ,
世安寧, 世は安寧にして,
友相扶, 友は相ひ扶(たす)け,
過晩年、無恙暢舒。 晩年を過ごすに、恙なく暢舒たるを。
勝勝令 詞譜・雙調66字,前段七句四平韻,後段八句四平韻 曹勳ほか
○○△●,▲●○平。●○○●●○平。○○●●,●○△,●○平。●●▲、○●●平。
▲●○○,▲●●,●○平。●○○●●○平。○○●●,●○○,●○平。●●○、△●●平。
作品番号 2015-22
新年所懐
鍾聲肅肅歳華新 鍾声粛粛 歳華新たなり
淑氣洋洋萬戸春 淑気洋洋 万戸の春
白屋老梅花欲綻 白屋の老梅 花綻びんと欲す
謝天立志入佳辰 天に謝し 志を立て 佳辰に入る
病身ですが無事に新年を迎えることができたことを感謝し
年来の立願を今年こそ 成就せんと決意を新たにいたしました
「老梅」(古梅がよかったかもと迷っていますが)は私自身のことです
作品番号 2015-23
小隠即事
自尊心上是青天 自尊心上 是れ青天
検束孤行幾十年 検束 孤行して 幾十年
粗糲寒菹馴齒舌 粗糲 寒菹 齒舌に馴れ
褐衣硬榻害胸肩 褐衣 硬榻 胸肩を害す
竹聲拂拂人逾茫 竹声 拂拂として 人逾いよ茫たり
草色離離境自偏 草色 離離として 境自ら偏なり
誰料伏龍山底老 誰か料らん 伏龍 山底の老
一毛傾莫況三錢 一毛として傾く莫からん 況んや三銭をや
作品番号 2015-24
新春口占
落落乾坤瑞氣籠 落落たる乾坤 瑞気籠め
滔滔世路有窮通 滔滔たる世路 窮通有り
新詩欲賦生涯計 新詩賦さんと欲す 生涯の計
自愧半生尋碧翁 自ら愧づ 半生 碧翁に尋ねん
作品番号 2015-25
新年書懷
乙未新春祝氣爲 乙未 新春 祝気爲し
盆梅發處感懷滋 盆梅発く処 感懐滋し
天災地異人憂慮 天災 地異 人は憂慮
永遠霊峰八朶姿 永遠の霊峰 八朶の姿
作品番号 2015-26
元旦
歳朝淑氣曙光催 歳朝 淑気 曙光催す
萬戸千門春又回 万戸千門 春又回る
椒酒一杯宜買醉 椒酒一杯 宜しく酔いを買ふべし
草堂今日笑顔開 草堂 今日 笑顔開く
作品番号 2015-27
新年書懷
旭曦盎盎拝年初 旭曦
黄鳥一聲心自舒 黄鳥の一聲 心自ら舒ぶ
経紀庶人非我事 経紀は 庶人 我事に非ず
惟嘉好景喜閑居 惟だ好景を嘉し 閑居を喜ぶ
作品番号 2015-28
雪中即事
曉來茅屋紙窗明 暁来 茅屋 紙窓明らかなり
庭上鵝毛玉樹生 庭上 鵝毛 玉樹生ず
風穏舞花詩世界 風穏やかに花舞はす 詩世界
閑人載酒寸心傾 閑人酒を載し 寸心傾く
作品番号 2015-29
新年感懐
曈曈旭日喚春來 曈曈たる旭日 春を喚で來る
天地迎新又快哉 天地 新を迎へ 又快なるかな
一夢半生身亦老 一夢 半生 身亦老い
独酌白酒草堂隈 独り酌む 白酒 草堂の隈
作品番号 2015-30
又新年感懐
八十七齢春又回 八十七齢 春又回る
人生無恙笑顔開 人生 恙なく 笑顔開く
平成未歳三元首 平成の未歳三元の首
独酌椒觴亦快哉 独り酌む 椒觴 亦快なるかな