2014年の投稿詩 第181作は 澄朗 さんからの作品です。
 

作品番号 2014-181

  般若寺        

四辺新緑野人園   四辺 新緑 野人の園

千歳幽庭雅美元   千歳の幽庭 雅美の元

石仏鬼門何以報   石仏 鬼門 何を以て報ゆ

吟花香雨坐南軒   吟花 香雨 南軒に坐す

          (上平声「十三元」の押韻)



<解説>

 鈴木先生
 ご無沙汰しています。先生にはお変わりなくお過ごしの事と思います。
 私は腰痛のため、此の一年旅する事も出来ない有り様でした。

 漢詩創作ホームページは楽しく、此のぺージで自分なりの勉強をしていました。先日リハビリも兼ね奈良に行ってみました。其の時に立ち寄った般若寺の思いを作詩してみました。
 古典の世界の馴染み深い般若寺も今では花の寺(コスモス)として有名ですが、さすが石仏とその想いを詠った俳句、短歌には圧倒されました。

 古典の世界「平家物語」「太平記」でなじみの般若寺は、聖武天皇が平城京の鬼門を守るため「大般若経」を基壇に納め塔を建てられたのが般若寺名の起りだそうです。

<感想>

 お久しぶりですね。
 お身体の調子が悪かったのですか。お便りが無いことを心配していました。

 私も入院などで療養していた時、勉強はしっかりできましたが、詩作は精神的にしんどいからか、なかなかできませんでした。
 澄朗さんが詩作に復活されたということは、身体のリハビリと心の静養ができたということでしょうね。
 また、よろしくお願いします。

 今回の詩は、起句の「野人」がひっかかりました。
 「野人」と来ると、どうしても「風雅と縁遠い人」をイメージしてしまうのですが、誰のことを指しているのか、般若寺の縁起と何かつながりがあるのでしょうか。

 逆に承句の「雅美元」はストレートと言うか、味わいの無い表現で、「千歳幽庭」と雰囲気を出したのがくしゃんと壊れてしまう印象です。

 起句承句の下三字を検討されると、後半の詩情が生きてくると思います。



2014. 7. 22                  by 桐山人






















 2014年の投稿詩 第182作は 春空 さんからの作品です。
 

作品番号 2014-182

  偶成        

雨過夕映染江天   雨過ぎて夕映 江天を染む

雲去月光青白蓮   雲去って月光 白蓮に青し

辞職帰郷団塊士   職を辞して郷に帰る 団塊の士

初知風雅欲通仙   初めて知る風雅 仙に通じんと欲す

          (下平声「一先」の押韻)



<解説>

 東京で企業戦士として頑張ってきた同級生が帰ってきました。
 その友の言葉を詩に作ってみました。

 結句を「意悠然」も考えたのですが、しっくりこなくて「欲通仙」にしました。

<感想>

 起句と承句は対句として考えたのでしょうか。
 どちらも時間経過を表す「雨過」「雲去」で始まり、太陽と月の光が照らしているという構成で変化が無いので、同じ様なことを繰り返している印象です。
 この前半は自然の美しさを十分に出しておかないと、結句の「初知風雅」が生きてきません。
 承句はまだ「青白蓮」がインパクトがありますが、起句はまさに時間経過のみで、働いていない句です。
 「雨過」も必要性が感じられませんし、「映」「染」も言葉が重複しています。
 繰り返しますが、前半の景を見て、「ああ、故郷は良いなぁ」と感じるわけですので、その気持ちに釣り合うだけの美しさをどう出すか、がポイントです。
 ご友人が「夕焼けの景色も良いし、夜の蓮池もきれいだ」と仰ったのかもしれませんが、その気持ちを膨らませるのが詩ですので、もっとこんなに良い景色もあるよ、と教えてあげるつもりで検討してはいかがでしょう。

 結句は、「初知」という段階でいきなり「欲通仙」は望み過ぎです。それなら美しい故郷でずっと暮らしてきた人はとっくに仙人になれています。
 しっくり来ないかもしれませんが、「意悠然」の方が良いと私は思います。


2014. 7.22                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第183作は 越粒庵 さんからの作品です。
 

作品番号 2014-183

  聞田蛙     田蛙を聞く   

烏帰農務止   烏帰り 農務止む

蛙鼓到雲辺   蛙鼓 雲辺に到る

閤閤兼誰語   閤閤 誰にと語るや

斜陽染水鮮   斜陽 水を染めて鮮やかなり

          (下平声「一先」の押韻)



<解説>

 蛙の合唱は一種頓狂なもので、しみじみ耳を澄ます気分になれません。
 しかし時折、遠く救急車の音が混じったりすると、なにやら物悲しくなります。

<感想>

 芭蕉の「岩にしみ入る蝉の声」ではありませんが、蛙の鳴き声もあまりに繁き状態ですと、他の音を遮断し、逆に静寂を感じさせてくれるものでもあると私は思っています。
 その辺りが、解説に書かれた「遠く救急車の音が混じったりすると、なにやら物悲しく」というお気持ちとつながるのかもしれませんね。

 起句の日常性や承句の広がり感、それをまとめる結句の色彩感、短編の風景動画を見ているような感じで、うまく表現できていると思います。

 その分、転句の表現が、蛙の鳴き声に対して「うっとうしい」という心の動きが感じられ、他の句から浮いているような印象です。
 転句の効果としては面白いわけですが、私としては、蛙の声もこの時期の風物の一つとして認めてあげるような方向の方が、詩としての味わいが出るかと思います。



2014. 7.24                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第184作は 哲山 さんからの作品です。
 

作品番号 2014-184

  夏虫        

清流棲隠夏遊虫   清流 棲隠す 夏の遊虫

浮生謳歌数瞬夢   浮生 謳歌す 数瞬の夢

羽化卒然蒸湿夜   羽化 卒然なり 蒸湿の夜

螢群舞命火将窮   螢群舞って 命火まさに窮まらんとす

          (上平声「一東」の押韻)



<解説>

 螢の幼虫を購入して庭の池で現在やっと五匹羽化しましたが、その感動より詩に転化する難しさに心身消耗の有様です。
 「夏遊虫」を仄起式にしてでも夏虫としたかったのですが、そうすると結句の平仄がうまくいかず、また平起式にもどして、結局妥協の産物になりました。
 視点や発想を変えてみるという助言は頭の隅にはあるのですが、いざとなると固まってしまいます。

<感想>

 そうですね、仄起式から平起式に戻したりの作業の途中で、平仄がやや混乱したようですね。

 起句は平起式の律句になっていますが、そうすると承句は二字目が仄字にならないといけませんね。(反法)
 これは単純に「生」の平仄の確認ができなかったのだろうと思います。ただ、この「浮生」はキーワードのようにも思いますので、この語を中二字に置いて、例えば「湛楽浮生」のような形で考えても良いでしょう。
 しかし、この句は末字の「夢」が韻違いで、「夢を見る」場合には仄声ですから、この下三字も修正が必要です。

 転句の「羽化卒然」はちょっと意外で、承句の「浮生」は当然羽化した後の、一般に言うところの螢の姿の時期も含むのだろうと思っていましたので、何となくもやもやします。
 ここに「羽化」を持ってくるならば、承句の「浮生」も検討して、幼虫での様子や姿を描いた方が良いでしょう。

 結句は七言の区切れである「二・二・三」が崩れて、「三・四」という変形になっています。「螢群命火」と上四字にすれば解消することですので、もう一頑張りが必要でしたね。

 この結句の感慨から見ても、承句の「浮生を謳歌する」のはしっくりきませんので、承句全体を見直す方向ですね。



2014. 7.24                  by 桐山人






















 2014年の投稿詩 第185作は 真瑞庵 さんからの作品です。
 

作品番号 2014-185

  六月閑居慢述        

六月江村晴雨天   六月ノ江村 晴雨ノ天

一堤柳影淡濃烟   一堤ノ柳影 淡濃ノ煙

蛍光明滅暮鐘径   蛍光明滅ス 暮鐘ノ径

蛙鼓高低漲水田   蛙鼓 高低 漲水ノ田

造化多情淫物象   造化 多情ニシテ 物象ヲ淫ニシ

老生少意送余年   老生 少意ニシテ 余年ヲ送ル

乗閑望見雲間月   閑ニ乗ジ 望見ス 雲間ノ月

把酒陶遨酔御眠   酒ヲ把リ 陶遨ス 酔後ノ眠

          (下平声「一先」の押韻)



<感想>

 真瑞庵さんがご指導なさっていらっしゃる詩会に先日参加させていただきました。
 当日は昼食会にも加わらせていただきましたが、皆さん和気藹々と、楽しく詩作を楽しんでいらっしゃる様子でした。
 漢詩の仲間が沢山いらっしゃることに、とても幸せな気持ちになりました。

 真瑞庵さんは今回は全対格で作られたのですが、工夫をされていると思います。
 頸聯で大胆な表現を用いて人生の深みを考えさせて、尾聯ですっと日常の世界に戻るという展開は真瑞庵さんのお得意のところですが、前半の景が「柳」「螢」「蛙」とやや地味な分、「造化多情」が大げさすぎる印象が残ります。
 春の百花爛漫とか、全山紅葉などという情景ですと、案外すんなりと納得できるのでしょうが。



2014. 7.24                  by 桐山人






















 2014年の投稿詩 第186作は 謝斧 さんからの作品です。
 

作品番号 2014-186

  桃李満門        

重三佳節已春融   重三の佳節 已に春融

桃李門辺灼灼叢   桃李門辺 灼灼と叢がる

結社提壺弄花飲   社を提壺に結んで花を弄して飲す

妖姿競艶衆芳同   妖姿艶を競って衆芳同じ

          (上平声「一東」の押韻)



<解説>

 訪提壺吟社主宰大野先生 有感
 大野先生爲近畿漢詩連盟会長

「妖姿競艶衆芳同」: 詩を戦わすも詩風の高趣は同じ

<感想>

 近畿漢詩連盟が広域県連として結成されたのは三年前くらいでしょうか。
 大野先生は全日本漢詩連盟の会合でお顔を拝見したことが一二度ありますが、実力をお持ちの方のようですね。

 謝斧さんも連盟のますますの発展を予感されたのでしょうね。
 春らしい華やかさの出ている詩だと思います。



2014. 7.24                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第187作は ニャース さんからの作品です。
 

作品番号 2014-187

  於丹東観挿秧情景        

常道江城大米良   

雨中初夏始挿秧   

湿身不怨泥田裏   

但願金秋満谷倉   

          (下平声「七陽」の押韻)



<解説>

 お元気ですか?ニャースです。

 相変わらずの中国駐在、仕事は相当なプレッシャーですが、私生活では、京劇、昆曲を観たり、マラソン大会に出たりと、現地ならではの生活を楽しんでおります。

 先月、北朝鮮と鴨緑江で国境を分かつ、丹東という町に行き、フルマラソンに参加しました。
 ちょうど田植えの真っ最中でした。
 丹東は米が美味しいところでも知られています。



<感想>

 六月末に私が桂林に行きました時、上海経由でしたので、時間がうまく取れればニャースさんにお会いしたいと思っていましたが、残念ながら単なる乗り継ぎだけで、上海の街には足を踏み入れることもできませんでした。
 この時は日本を出発する時に既に二時間半ほど飛行機が遅れてしまい、その日の内に桂林に着けるかどうかという状態でしたので、とてもとても無理でしたが。

 お手紙にはフルマラソンを走られた折の写真も添えられていましたが、お元気で活躍なさっていらっしゃるようですね。

 後半の表現は実感が籠もっていて、日本の農家の方々も同じ気持ち、どこの国も思いは共通しているのでしょうね。

 承句は「挿」が仄字ですので、「挿新秧」とすると良いですね。



2014. 7.25                  by 桐山人



謝斧さんから感想をいただきました。

私感ですが、転句の「湿身不怨泥田裏」について、
「怨」は妥かでない感じがします。

「厭」ぐらいのほうがよいのではないでしょうか。

2014. 7.30           by 謝斧
























 2014年の投稿詩 第188作は 押原 さんからの作品です。
 

作品番号 2014-188

  雨中排悶        

首夏茅廬緑掩軒   首夏の茅廬 緑 軒を掩ひ

蝸牛不動乱蛙喧   蝸牛動かず 乱蛙喧し

梅霖日暮無人訪   梅霖の日暮 人の訪ふ無し

一酔傾杯楽亦存   一酔杯を傾け 楽しみ亦存す

          (上平声「十三元」の押韻)



<解説>

 つゆ時の不快さに感けて居ても仕方ない。

<感想>

 転句は「人が訪ねてこないからのんびりしている」、とも取れるし、「誰も来なくて無聊だから酒でも飲むか」とも取れて、ただどちらにしてもお酒を飲むことになるのが楽しいところですね。

 承句の「蝸牛不動」が発見、観察の妙、下の「乱蛙喧」との対比も効果的で、印象深い句になっていますね。

 起句の「首夏」は要らない言葉で、転句の「梅霖」があれば十分でしょう。



2014. 7.25                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第189作は芙蓉漢詩会の A.T さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-189

  初冬偶成 其一        

秋去霜降禽語喧   秋去らんとす 霜降 禽語喧し

水風枯葉屋廬翻   水風 枯葉 屋廬に翻る

庭前有否蠢蚯蚓   庭前有りや否や 蚯蚓の蠢き

野雀吾人一笑温   野雀と吾人と一笑温かなり

          (上平声「十三元」の押韻)



<感想>

 「秋去霜降」は「秋は去り霜降」と読む。その季節感と「禽語喧」はどうつながるのか。
 結句にも「野雀」と鳥があるので、ここは検討が必要。

 「水風」は「川風」のことでしょうか。川風が波を起こすのは良いですが、枯葉はどこから来たのでしょう。

 また、「屋廬」は川沿い、「庭前」はどこにあるのか疑問です。
 「蚯蚓」が蠢くのが何故気になるのでしょうね。
 雀と私が何を共通点として笑うのか、詩語が並んでいるだけの印象です。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第190作は芙蓉漢詩会の A.T さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-190

  初冬偶成 其二        

夜來雪片舞微風   夜来の雪片 微風に舞ふ

愛日連山楓葉紅   愛日の連山 楓葉紅なり

處處新加白銀燦   処々新たに加ふ 白銀の燦(かがや)き

靈峯富嶽玉玲瓏   霊峯 富岳 玉玲瓏

          (上平声「一東」の押韻)



<感想>

 雪かと想えば紅葉で、と思えばまた雪、色彩的にも「白」「赤」「白」とアンバランスです。
 富士山の美しさを出したいはずが、「連山楓葉紅」では、十分な美しさが出ていますので、結句が不要の印象さえあります。
 構成を検討することが必要でしょう。
 承・転・起・結の順でしょうか。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第191作は芙蓉漢詩会の 蘭君 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-191

  蘭州感懷        

歴代榮華餘綺樓   歴代の栄華 綺楼を余し

七層白塔望中收   七層の白塔 望中に収まる

山擁郭夕暉逗   青山 郭を擁して 夕暉逗(とどま)り

危塞連邊歳月遒   危塞 辺に連なりて 歳月遒し

立剣酒泉噴此地   剣を立つれば 酒泉 此の地に噴し

息征戎馬飲何洲   征を息めて戎馬 何れの洲にか飲(みずか)ひし

鵬程千里東瀛客   鵬程千里 東瀛の客

始信黄河悠久流   始めて信ず 黄河の悠久に流るるを

          (下平声「十一尤」の押韻)



<解説>

 日中友好条約締結の年(七十八年)、初めて中国を訪問する。
 以来、この国の悠久の歴史に魅せられ毎年各地を訪れたが、余りの広さと奥の深さに、未だ氷山の一角にも辿り着く事が出来ない。

 この詩は八十年代頃の作で、蘭州を流れる黄河の畔に立ちて眺めた風景への感懐である。

「邊」: 国境


<感想>

 結句の「黄河悠久流」を述べるには、前の部分で作者の立ち位置を表すことが必要でしょう。

 また「鵬程千里」は「万里」の方がすっきりします。

 頸聯の伝説や回想がとってつけたような印象なので、ここに河を感じさせるものを入れると、黄河への思いが表れるのではないでしょうか。



2014. 7.27                  by 桐山人



謝斧さんから感想をいただきました。

 七律の格律は非常にうるさいようで、私も破格の詩が多く、つねに推敲しています。

 以下の疑問が生じました。

1.山擁郭夕暉逗 危塞連邊歳月遒
「夕暉」と「歳月」は対句になりますか。

2.立剣酒泉噴此地
 剣を立てることにより酒泉が生じた故事があるんでしょうか。
もし出句が故事があれば落句も故事で応じなければ、「片枯」になります。
 対句が故事でなければ問題はないのですが

3.鵬程千里東瀛客 
「千里」は300kmのことではないでしょうか。

2014. 7.30         by 謝斧



1.については、仰る通り、対句に取りづらいところですね。
 合評会の時には私はあまり気にならずに読んでいたように思います。すみません。

「遒」は動詞として「あつまる」と読み、「積翠遒」と叙景にしておくところでしょうか。

2.については、霍去病の故事でしょうが、「剣を立てる」は「息征」と同じで戦を収束するということで使っていると思います。
 霍去病の故事は「酒泉」に関わるわけですが、故事というより古来からの地名という意識が強いのだと思います。

3.については、仰る通りで、「万里」が適当だと私も思いました。

2014. 8. 4          by 桐山人























 2014年の投稿詩 第192作は芙蓉漢詩会の 蘭君 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-192

  再遊湖南省        

悠悠羈客水雲艫   悠悠たる羈客 水雲の舮

遊屐印沙蹤已無   遊屐 沙に印して 蹤 已に無し

去歳洞庭蘆雪舞   去歳 洞庭 芦雪舞ふ

如今湘水與鴻倶   如今 湘水 鴻と倶にす

          (上平声「七虞」の押韻)



<解説>

 再度、中国湖南省を旅し、洞庭湖、君山、汨羅に遊ぶ。「衡陽の雁」「回雁峯」など、雁ゆかりの地、故「鴻爪雪泥」の故事をイメージする。

「與鴻倶」: 秋に来る渡り鳥の鴻と連れ立って、湘江の畔を逍遥する。

<感想>

 「再遊」ということで、前回と今回の旅を対比させたり、故事にゆかりの多い地ですので、これは律詩に持っていった方が良いですね。
 転句の「蘆雪舞」にしても、「與鴻倶」も、これだけでは「だから何?」という印象は避けられません。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第193作は芙蓉漢詩会の 蘭君 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-193

  客中聞鵑        

陸奥餘春花又稀   陸奥の余春 花 又稀なり

藏王山畔思依依   蔵王山畔 思ひ依依たり

樓窓破夢子規鳥   楼窓 夢を破る子規鳥

何苦千聲勸客歸   何ぞ苦(はなはだ)しく千声客の帰るを勧む

          (上平声「四支」の押韻)




<解説>

「蔵王」: 奥羽山脈の一部、蔵王連峰
「楼窓」: 旅館の窓
「勧客帰」: 子規の啼声が「不如帰」と聞こえると云うに由る

<感想>

 良い詩ですね。

 結句の「苦」「千声」はどちらかで良く、「何用千声」あるいは、「何苦裂声催客帰」。ホトトギスなので、「千声」よりも後者の方が良いでしょうか。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第194作は芙蓉漢詩会の 辰馬 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-194

  三保海岸春(一)        

富峰白雪對蒼穹   富峰の白雪 蒼穹に対す

駿海銀波戯恵風   駿海の銀波 恵風に戯る

千里春陽愉漫歩   千里春陽 漫歩を愉しむ

乃公閑適快然窮   乃公 閑適にして 快然の窮み

          (上平声「一東」の押韻)





<解説>

 世界遺産になった三保海岸は、冠雪の富士が素晴らしい景観で、我が家から7〜8分なのでいつもの散歩道です。

<感想>

 起句の「蒼穹」は「蒼」の色が入っているのが気になるところ。「円穹」「晴空」の方がまとまるかと思います。

 結句の「乃公」は自分を表す言葉で、「この儂はな」というニュアンス。軽妙な感じが出て良いですね。
 結びの「窮」はギリギリまで行って困ったという感じがするので、「充」「隆」を韻字にして、「隆隆」などで考えてみてはどうでしょうか。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第195作は芙蓉漢詩会の 辰馬 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-195

  三保海岸春(二)        

陽炎駿海舫船浮   陽炎の駿海 舫船浮かぶ

靡草堤塘雛語柔   靡草の堤塘 雛語柔らか

滿地飄然蝴蝶夢   満地飄然として 蝴蝶が夢

人寰平穏樂郊陬   人寰 平穏にして 楽郊の陬(ほとり)

          (下平声「十一尤」の押韻)



<感想>

 承句の「雛語柔」はやや唐突の感もありますが、許容範囲というところでしょうか。

 転句で「滿地」と言い、結句で「人寰」とあるのは、範囲が交錯していて、分かりにくい。「此地」としておくと良いでしょう。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第196作は芙蓉漢詩会の 辰馬 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-196

  老境(一)        

退休餘暇破顔時   退休の余暇 破顔の時

妻女賞花吾作詩   妻女花を賞で 吾詩を作る

齷齪星霜懐往事   齷齪の星霜 往事を懐み

顧瞻身世大都嬉   身世を顧瞻すれば 大むね嬉し

          (上平声「四支」の押韻)



<解説>

 定年後10年、満足と何か年月の過ぎ去る速さに、むなしい思いが交錯した毎日です。

<感想>

 起句の「破顔」は何か嬉しいことがあったのか、という感じです。「樂閑時」「湛然時」「侃然時」など。

 転句の「齷齪」は結句との整合が悪いので、ここでは「往事」についての感懐は省き、「幾十」「八十」と事実だけにするのが良いですね。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第197作は芙蓉漢詩会の 辰馬 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-197

  老境(二)        

古稀既去靖双肩   古稀 既に去りて 双肩を靖んじ

喜壽近來彷陌阡   喜寿 近く来たり 陌阡を彷ふ

相集舊儔談退隠   相集ふ旧儔 退隠を談じ

光陰似箭意凄然   光陰箭のごとし 意凄然

          (下平声「一先」の押韻)



<感想>

 承句は「喜寿近来」と来て「彷陌阡」では呆けたように感じます。
「彷夢邉」「忘俗縁」「塵事捐」でしょうか。

 結句の「凄然」はそれまでの記述を一転させる語でびっくり仰天。
「融然」「飄然」あるいは「陶然」でどうでしょう。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第198作は芙蓉漢詩会の S.G さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-198

  東遊雜詩        

函嶺三秋滿錦楓   函嶺 三秋 錦楓に満つ

千峯眺望奪天工   千峯 眺望 天を奪って工

遊人信歩羊腸徑   遊人 歩に信す 羊腸の径

濃淡山腰立晩風   濃淡 山腰 晩風に立つ

          (上平声「一東」の押韻)



<解説>

 車で行く陸奥の旅
 この度は、昨年、十月末に、晩秋陸奥の旅に行き、秋保、作並、猊鼻渓舟下り、鳴子峡と最上峡舟下りをして、酒田にも宿泊しました。

「白滝」: 白い激流・はやせ
「窈」: 奥ふかい

<感想>

 承句「奪天工」は「天工を奪う」、「叶天工」も可。

 結句の「立晩風」の主語は「遊人」でしょうが、「信歩」なので頂上なら良いが、「山腰」ではどうでしょうか。
 「山腰」を主語として、「鎖晩風」、あるいは「已晩風」と叙景にすると良いですね。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第199作は芙蓉漢詩会の S.G さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-199

  春陰閑居        

春色輕煙望藹如   春色 軽煙 望藹如

催花籬落野人居   花を催す籬落 野人の居

遲遲麗日多遊蜨   遅遅たる 麗日 遊蝶多し

鳥語吟風心自舒   鳥語 風に吟ずれば心自ら舒ぶ

          (上平声「六魚」の押韻)



<感想>

 題名が「閑居」ですので、当然、詩の中に人事を出さねばならないわけですが、ほとんどが叙景で、題名に沿っていません。
 「春陰即事」とするところでしょうか。

 結句は「吟風」と風を出すよりも「好吟」でどうでしょうか。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第200作は芙蓉漢詩会の M.S さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-200

  辯天島        

湖上巡遊華表邊   湖上巡遊すれば 華表の辺

濱名海口大橋連   浜名の海口 大橋連なる

悠然釣艇銀鱗躍   悠然たる釣艇 銀鱗躍る

殘照暎雲光彩鮮   残照 暎雲 紅彩鮮やかなり

          (下平声「一先」の押韻)



<感想>

 もう少し季節感がでると良いですね。
「悠然」は「飄揚」「飄然」などで考えてはいかがでしょう。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第201作は芙蓉漢詩会の M.S さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-201

  大學寮杏香        

學寮獨視舎窓櫻   学寮独り視る 舎窓の桜

孝子離家萬感生   孝子 家を離れ 万感生ず

宿志青雲何日達   宿志の青雲 何れの日にか達せん

蘭孫勉勵表丹精   蘭孫勉励 丹精を表す

          (下平声「八庚」の押韻)



<解説>

 孫娘の大学寮生活の始まりに詩を作りました。

<感想>

 承句の「万感生」は作者の心情、嬉しさと寂しさが混じり合ったという感じですね。
「孝子」「蘭孫」が重なりますので、結句の冒頭は「知新」でどうでしょうか。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第202作は芙蓉漢詩会の 修玲 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-202

  春陰閑居        

春陰犬睡午晴初   春陰 犬は睡る 午晴の初め

草色柳眼舒   草色青青 柳眼舒ぶ

風暖烟光花亂落   風暖かに烟光 花乱れ落つ

柴門無客野人居   柴門 客無く 野人の居

          (上平声「六魚」の押韻)

 淡青の空にのびたる細き枝
     若葉のびたる時となりたる

<感想>

 「春陰」は春のどんよりとしたかすんだ景色。それを「午晴初」と起句で裏切るのはきになります。

 転句の「烟光」はおぼろに霞んだ景色で、調和していますが、重複感もあります。
承句と転句に変化が乏しい、というより、この二句で一まとまりの叙景というのが難点。

  起句 春陰犬睡野人居
  転句 午下烟光花已落
  結句 柴門無客暖風徐

という流れが良いと思います。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第203作は芙蓉漢詩会の 修玲 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-203

  小集席上有作        

高樓趁約一堂親   高楼 約を趁ふ 一堂親しむ

契闊交情意氣伸   契闊 交情 意気伸ぶ

啜茗彈琴酬唱樂   茗を啜り琴を彈ず 酬唱の楽しみ

滿筵精彩喜色新   満筵精彩 喜色新たなり

          (上平声「十一真」の押韻)

 「あっ」という間にすぎゆく三時間
         杜甫を語りて李白を吟ず


<感想>

 承句の「意気」は「和気」でどうでしょうか。

 結句の「喜色」は平仄間違い。「喜声」くらいかと思います。



2014. 7.27                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第204作は芙蓉漢詩会の 洋靖 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-204

  五月祭        

碧空勇壯競風鳶   碧空 勇壮 風鳶競ふ

相撃剪絲操手鮮   相撃ち 糸剪らんとす 操手鮮か

激練笛聲精氣溢   激練り 笛声 精気溢れる

滿場感嘆醉陶然   満場 感嘆 陶然と酔ふ

          (下平声「一先」の押韻)



<解説>

 青空に激しく競い合っている糸切り合戦の凧と、地上で激連をしている人達の勝気あふれる笛の音色に思わず感動した、

<感想>

 祭りの熱気が伝わって来る詩になっています。

 起句は「碧空」「勇壮」ではおかしく、ここは「碧空亮亮」くらい。

 結句は「酔陶然」が良いのかどうか、「氣昂然」として、転句は下三字を「雄壮響」でどうでしょうか。



2014. 7.28                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第205作は芙蓉漢詩会の 洋靖 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-205

  初夏即事        

春夢無痕新国N   春夢 痕無く 新緑鮮やかなり

殘紅已盡初夏天   残紅 已に尽き 初夏の天

鯉旗遊泳薫風裡   鯉旗遊泳 薫風の裡

一日清涼意悠然   一日清涼 意悠然たり

          (下平声「一先」の押韻)



<感想>

 こちらは平仄の乱れが二箇所。承句は六字目が、結句も六字目が逆になっています。
 植物を承句に揃える形で、起句は「春夢無痕初夏天」、承句は「残紅已盡緑新鮮」と調整すれば良いでしょう。

 結句は「一日清涼自浩然」でどうでしょうか。



2014. 7.28                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第206作は芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-206

  與異邦之友        

近時民物顕東漸 近時民物 顕に東漸す

内陸疎迂外海淫 内陸疎迂となり外海に淫す

北浪魚場舳艫搏 北浪の魚場 舳艫搏ち

南潮境域幟船臨 南潮の境域 幟船臨む

昔聞極毀共工肘 昔聞く極毀れしは 共工の肘

今觀波騒何者琴 今観る波騒ぐは 何者の琴ぞ

天柱傾不君點驗 天柱傾きしや不や 君点験せよ

可温練石女媧心 温ぬべし石を練りし女媧の心

          (下平声「十二侵」の押韻)



<解説>

 読み下しに代えて

  人も物も東へ東へと
  内陸放って外海目指す  
  五島の魚場修羅となり  
  沖縄の海域虎豹の目  
  昔共工が天を壊したが
  今の騒ぎは誰の差金?
  国の支え大丈夫? 
  神話の女媧を見習えよ

 海洋大国を目指す隣国、目に余る。この詩はその国の知人に贈ったもの。
 百廿年前の甲午「眠れる獅子」だったが、今は「騎虎」ではずんでいるようだ。

<感想>

 七句目の「不」は文末に置く字ですので、「乎」と疑問形にするのが良いでしょう。



2014. 7.28                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第207作は芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-207

  現時體舞青少年        

幼童自選練成途   幼童自ら選ぶ 練成の途

演習機微深反芻   演習の機微 深く反芻す

亮直天眞曙星眼   亮直たり天真 曙星の眼

美哉鬱勃怒彪車   美しき哉 鬱勃 怒彪の躯

          (上平声「七虞」の押韻)



<解説>

 ローザンヌバレエコンクール、例年上位に日本人の名が挙がる。
 そしてグランプリに輝いた二山治夫。

 ソチオリンピックにも、溌剌たる十歳台の目立つこと、頼もしいなー。
 科学の世界にも若者の精進期待したいもの。

<感想>

 若い人達の鍛えられた技を見るのは、本当に勇気を与えてもらう気がしますね。

 「錬成」と起句で出ている分、承句の「演習」「反芻」が弱く感じます。
 流れとしては、ここに結句の描写を持ってきて、結句に常春さんの思いなどが入ると面白いかと思いました。



2014. 7.28                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第208作は芙蓉漢詩会の 常春 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-208

  茶会        

一朶花瓶一軸書   一朶の花瓶 一軸の書

茗爐煖盌靜閑居   茗炉 盌(わん)を煖む 静閑の居

和諧主客問還答   和諧(うちとけ)し主客 問ひ還た答ふ

喫得清風心自舒   清風喫し得て 心自ずから舒(のびや)かなり

          (上平声「六魚」の押韻)

 どちらもまとまった詩になっていると思います。

<解説>

 茶道、日本の水は旨い、お茶は必需ではない、だから様式化したとも言われる。

 家内は茶道に熱心、老いてますます力こもる。
 そして、時々お相伴に預かる。

<感想>

 起句の句中対が生きていて、最後まで一気に読み通せますね。

 転句の「問還答」は楽しい会話を表しているのでしょうが、茶室の静謐さを壊すような気がしますね。
 何か茶道に関わる言葉を持って来るのも良いでしょうね。

 それにしても、ご夫婦仲睦まじいことで、お幸せですね。



2014. 7.28                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第209作は芙蓉漢詩会の 緑楓林 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-209

  新春口占        

落落乾坤瑞気籠   落落たる乾坤 瑞気籠み

滔滔世路有窮通   滔滔たる世路 窮通有り

新詩欲賦生涯計   新詩 賦を欲す 生涯の計

麗日陶然問碧翁   麗日陶然 碧翁に問ふ

          (上平声「一東」の押韻)



<解説>

 正月の休日に机に向かって作詩してみました。

<感想>

  気持ちよく作っておられるのがわかりますが、結句の「問碧翁」は天に何を尋ねたのか、詩からは分からないのが難点です。



2014. 7.28                  by 桐山人
























 2014年の投稿詩 第210作は芙蓉漢詩会の 緑楓林 さんからの作品です。
 今年の5月30日に「芙蓉漢詩集第14集」の合評会が静岡市で開かれ、桐山人も参加しました。
 感想はその折のものをベースにしています。

作品番号 2014-210

  早春即興        

淡月模糊野老家   淡月模糊として 野老の家

吟箋磨墨薄寒加   吟箋墨を磨し 薄寒加ふ

蕭疎墻角横斜影   蕭疎なる墻角 横斜の影

一笑吹香冷艶花   一笑香を吹く 冷艶の花

          (下平声「六麻」の押韻)



<解説>

 近所の垣根の上にきれいな白梅が咲いておりました。

<感想>

 起句の「野老」は謙遜し過ぎで、承句の「吟箋」と不似合いで、そのため、作者の居場所が混乱しています。できれば「書窓」の語が欲しいです。

 後半は定番の語が並びますが、これはこれで良いとすると、作者の行為や気持ちを前半でまとめておく必要があるでしょう。
「淡月書窓閑適家」でしょうか?



2014. 7.28                  by 桐山人