作品番号 2010-1
(新年漢詩)平成二十二年 年賀(一)
紛紛世上歳朝迎 紛々たる世上に 歳朝迎ふ
革命前途未究明 革命の前途 未だ究明なし
野老不関棲隠士 野老は関せず 棲隠の士
朋徒旅路楽交觥 朋徒と旅路 交觥(こうこう)を楽しまん
作品番号 2010-2
(新年漢詩)平成二十二年 年賀(二)
春回喜寿多所思 春回りて喜寿 所思多し
仙遊朋友漸増悲 仙遊する朋友 漸く増え悲し
余年幾許欲時止 余年 幾ばくぞ 時の止るを欲す
雨読晴耕円熟期 雨読晴耕 円熟の期
作品番号 2010-3
(新年漢詩)賀新年
革命年明喜壽齢 革命の年明け 喜寿の齢
政情遅緩世相冥 政情 遅緩 世相冥し
老翁堪忍隠棲境 老翁は堪忍 隠棲の境
朋友高談一草亭 朋友と高談 一草亭
作品番号 2010-4
(新年漢詩)賀新年
歳旦通佳気 歳旦 佳気が通じ
初陽草木馨 初陽 草木も馨しい
迎新千戸楽 迎新 千戸楽しく
四海萬民寧 四海 萬民 寧らかに
作品番号 2010-5
(新年漢詩)應制詩 光
良夜捲簾天宇晶
月華皓皓草菴明
酒筵秉燭詩人興
灯盞無油貧士清
冬映雪窓抄句努
夏輝蛍案読書精
還過開曙陽光遍
煦覆乾坤万物生
古来應制詩必要以七言律詩創。
亦御題「光」是詠物之題也。
便必全句用關于光句。
作品番号 2010-6
(新年漢詩・交流詩)与友賀新年 友と新年を賀す
放歌狂飲与朋談 放歌 狂飲して 朋と談ず。
況是新春日正酣 況や是れ新春 日 正に酣なり
人世此時長可好 人世 此の時 長しえに好かるべし
千秋萬歳亦宜耽 千秋萬歳 亦た宜しく耽(たのし)まん
作品番号 2010-7
(新年漢詩・交流詩)賀新年(一)
迎新毎憶舊年慚 新を迎えて毎に憶う旧年の慚
宿志嘆吟空再三 宿志 嘆吟すること空しく再三
幸得良師詩酒會 幸いに良師を得る詩酒の会
何時四坐入玄談 何れの時か四坐 玄談に入らん
<解説>
今年も少しでも良い詩が作れるように努力していきます。
今年もよろしくお願いいたします。
作品番号 2010-8
(新年漢詩・交流詩)賀新年(二)
年來窮境已難堪 年来の窮境 已に堪へ難きも
窺見前途苦亦甘 前途を窺ひ見れば 苦も亦た甘し
出谷早鶯啼雪上 谷を出づる早鶯 雪上に啼き
行逢梅朶樂春探 行々梅朶に逢うて 春探を楽しまん
<解説>
国内の状況が厳しい中、「賀新年」というお題も大変難しいですが、何とか絶句を作ってみました。
今年はもっと明るい世の中になることを願っています。
作品番号 2010-9
(新年漢詩・交流詩)賀新年(一)
瑞気蓬蓬及草庵 瑞気蓬々 草庵に及び
乾坤晴朗意央曇 乾坤晴朗なれど 意央(なか)ば曇る
環球温暖無良法 環球の温暖 良法無く
各国商量何処探 各国の商量 何処に探る
作品番号 2010-10
(新年漢詩・交流詩)賀新年(二)
歳暮怱忙歎婦女 歳暮 怱忙 婦女を歎かしめ
新年寛緩喜丁男 新年 寛緩 丁男(ていだん)を喜ばしむ
今朝許可貧家禁 今朝 許すべし 貧家の禁、
合酔桃源濁酒甘 合(まさ)に桃源に酔ふべし 濁酒の甘
作品番号 2010-11
(新年漢詩・交流詩)賀新年(三)
去歳無端襲豪雨 去歳 端無くも 豪雨に襲はれ
今年有待啓重曇 今年 待つ有り 重曇(ちょうどん)の啓くを
任他拙政屏営跌 任他(さもあればあれ) 拙政の 屏営(へいえい)の跌、
不管屠蘇慢慢含 管せず 屠蘇 慢々と含む
「屏営」: うろうろすること
「慢慢」: ゆっくりと
作品番号 2010-12
(新年漢詩・交流詩)賀新年(四)
年初神仏罩心参 年初 神仏 心を罩めて参ずるも
福沢尊翁避草庵 福沢尊翁 草庵を避く
遮莫清貧普詩客 遮莫(さもあればあれ) 清貧は 詩客に普(あまね)し
人生識足苦懐甘 人生 足るを識れば 苦懐甘し
作品番号 2010-13
(新年漢詩・交流詩)賀新年(五)
馬齢九八更加三 馬齢 九八 更に三を加へ
亦迓新年柏酒含 亦 新年を迓へて 柏酒を含む
福沢先生無投宿 福沢先生の 投宿無きも
初光均等訪蝸庵 初光は均等に 蝸庵(かあん)を訪ふ
作品番号 2010-14
(新年漢詩・交流詩)賀新年(六)
老去迎春作善男 老去 迎春 善男と作り
曳筇村社罩心参 村社に筇を曳いて 心を罩めて參ず
千家幸福加私欲 千家の幸福 加へて私欲
三盞屠蘇一蜜柑 三盞の屠蘇 一蜜柑
「盞」: さかずき
作品番号 2010-15
(新年漢詩・交流詩)思新年(一)
年来政策正邪含 年来の政策 正邪含む
野満遺賢隠遁罩 野に遺賢満ちて 隠遁罩(なが)し
景気蕭条匪他任 景気の蕭条たるは 他の任に匪らず
路頭失職幾人堪 路頭の失職 幾人か堪へん
「覃」: 長い
作品番号 2010-16
(新年漢詩・交流詩)思新年(二)
吹毛玉作述珍談 玉作に毛を吹いて 珍談を述べ
歳末蘇醒折筆慙 歳末 蘇醒して 筆を折って慙じる
天唾如同布麦浪 天に唾(つばき)するは 如同(さながら) 布麦浪(ブーメラン)
相公陳謝箴言含 相公の陳謝 箴言(しんげん)含む
「蘇醒」: ハットしてわれにかえる
「天唾」: 仰天而唾
作品番号 2010-17
(新年漢詩・交流詩)思新年(三)
拙哉民主罷図南 拙なる哉 民主は図南を罷め
有望青年遊手覃 有望なる青年 遊手覃(なが)し
勿与千金害矜恃 千金を与へて 矜恃を害する勿れ
須教就職伐新参 須らく就職を教て 新参を伐(ほこ)らしむるべし
「図南」: ここでは公共工事をいう
「拙哉」: 公共工事をやめるならば前もって代替案がなければ国家経済が沈滞・停止する。
「遊手」: 有能な人材が不本意に遊んで生活している
「千金」: それによって失業者の増加による、生活保護法をさす
「新参」: 善意に解釈
作品番号 2010-18
(新年漢詩・交流詩)賀新年
風軽岸柳映江潭 風は軽やか 岸の柳が江潭に映る
浴日汀邊水透藍 日を浴びた 汀の水が藍(あお)く透き通る
初發早梅添雅致 初發(さ)きの早梅 雅致を添へ
擧家歓飲宴闌酣 家挙って歓飲し 宴闌をたのしむ
作品番号 2010-19
(新年漢詩)迎春試吟(鶴頭格)
虎頭蛇尾壽猶長, 虎頭蛇尾に寿(ことぶき) 猶ほ長く,
口吻生花浮酒觴。 口吻は生ず 花の酒觴に浮くを。
拔樹撼山詩鬼似, 抜樹撼山 詩鬼は似たり,
牙牙學語入霞光。 牙牙学語として霞光に入るに。
<解説>
「虎頭蛇尾」: 四字成語。始めは声勢さかんで,先細りであること。
「口吻生花」: 談吐文雅であることの比喩。
「抜樹撼山」: 樹を抜き,山を動かすほどに声勢さかんであること。
「牙牙學語」: 嬰兒がヤアヤアと大人の言葉を学ぶこと。
「虎口抜牙」: 虎の口の中で牙を抜くこと。極めて危険であることの喩え。
あけましておめでとうございます。
小生,昨年12月に,拙作の漢詩3万首を超えました。漢詩を始めて13年,1998年の1月1日から数えれば12年で3万首です。
多分,わが国では先人を含め,有数の多作だと思います。自信が尽きました。これからはその自信をもとに,わが道を行く詩を作ろうと思いますが,いささか,鬼門,あるいは鬼道に入る感じもします。傲岸不遜と呼ばれようとも,わが道を登ろうと思うからです。
ならば,ということで,今年は鬼になって,虎口の牙を抜きに行きたいと思います。
作品番号 2010-20
(新年漢詩)迎新春
新正淑気満天中 新正淑気 天に満つる中
椒酒一杯吾亦空 椒酒一杯 吾も亦空し
傲世小鳩雲杳杳 世に傲る小鳩 雲は杳杳
党朋権制也何窮 党朋の権制やはり何ぞ窮めんとす。
作品番号 2010-21
(新年漢詩)迎庚寅歳
雲生虎吼処 雲生じ虎吼る処
当歳問新天 歳にあたり 新しき天に問へば
東海神泉湧 東海に神泉湧きて
吉祥白雪然 吉祥 白雪のごとくなり
<解説>
雲生じ虎吼る処にたちて
歳を迎えるにあたり 新しき天に問へば
東海に神泉湧きて
吉祥 降り積む白雪のごとくなり
庚寅を迎えるにあたり、ここに一篇を記して幸を祈念いたします。
『万葉集』集中の最後を飾る大伴家持の寿ぎの歌
新しき 年の初めの 初春の 今日降る雪の いやしけ吉事
よりモチーフを得ました。
夢と希望にあふれた良い年になりますよう、心からお祈りしております。
作品番号 2010-22
(新年漢詩)新年即事
紙窓寂寂梵鐘巡
灯盡牀前夜思頻
邊邑逸居名利外
又迎六十八齢春
作品番号 2010-23
(新年漢詩)歳首
笑声笑語賑清晨 笑声笑語清晨を賑はし
改歳諸家拝社神 歳改まれば諸家社神を拝す
一半暁天紅紫彩 一半の暁天紅紫の彩
冀逢好事古稀春 冀はくは好事に逢はん古稀の春
作品番号 2010-24
(新年漢詩・交流詩)賀新年(一)
初陽裂闇海紅柑 初陽闇を裂いて海紅柑たり
寒氣侵肌春已含 寒気肌を侵すも春已に含む
舊歳知新萌変革 旧歳 新を知り 変革萌す
今年温故鵠g涵 今年 故を温ね 緑波涵わん
作品番号 2010-25
(新年漢詩・交流詩)賀新年(二)
大綱一致徹宵談 大綱一致す 徹宵の談
細目縱横北與南 細目縦横たり 北と南
気候課題時不待 気候の課題 時待たず
新年切願実行覃 新年切に願ふ 実行覃(わた)るを
作品番号 2010-26
(新年漢詩・交流詩)賀新年
清旦迎新賀會酣
勸朋藍尾酌杯三
兒遊竹馬冒寒嬉
人改桃符除厄堪
試筆吟哦磨紫石
圍炉笑話剥黄柑
今春家國風波惡
冗子不關慵裏貪
「冒寒嬉 ●○●」
「除厄堪 ○●◎」孤仄
孤仄能拯孤平 是呉體也 杜工部多用是拗體也
作品番号 2010-27
(新年漢詩)詠竹
三友深交列歳寒 三友の深交 歳寒に列し
年初爆裂報平安 年初 爆裂 平安を報ず
清談琴酒七賢誼 清談 琴酒 七賢が誼(したし)み
君使子猷通肺肝 君は子猷(しゆう)をして 肺肝を通ぜしむ
<解説>
明けましておめでとうございます。本年も宜しくお願いいたします。
年頭にふさわしいと思いますので一詩を送稿いたしました。
四年ほど前、岡田嘉崇さんの「(交流詩)夏至」の詩中の「竹平安」の意味が分からずにいましたが、ネットを検索してようやく「竹報平安」だということが判明しました。
「三友」: 歳寒の三友。松竹梅。
「爆裂」: 「春節の歴史・爆竹」
「清談」: 竹林の七賢の故事。一説には七賢が清談したことは疑問とも言われる。
「子猷」: 王羲之(おうぎし)の第五男で王徽之(おうきし)の字(あざな)。
竹を愛して竹のことを「此君・しくん又はこのきみ」と称した。
「肺肝」: 心の奥底。
作品番号 2010-28
(新年漢詩)感泰平正旦
四海未戎絶 四海未だ戎が絶えず
我邦今若何 我が邦今若何に
昔師相識少 昔の師相識るは少なり
枯骨戦墟多 枯骨戦墟に多しを
<解説>
世界各地の戦乱が絶えない
戦後も遠く泰平を謳歌する我が民は
あの悲惨な戦争も知るものは希である
未だに南海に北地に枯骨が眠るのも
作品番号 2010-29
(新年漢詩)2010年庚寅 年賀
玉暦庚寅旭日新 玉暦庚寅 旭日新
乾坤瑞気保清真 乾坤の瑞気 清を保って真なり
全家寿福祈神祐 全家の寿福 神祐を祈る
椒酒三杯百慶春 椒酒三杯 百慶の春
【大意】
<解説>
暦は庚寅(かのえとら)に改まり、新しい朝を迎えた。
天地の気は瑞々しく清らかで満ち満ちている。
家族が皆健康で長生き出来る様に 神祐を祈ろう。
お屠蘇をひっかけて、なんともめでたい新春の日である。
作品番号 2010-30
(新年漢詩)庚寅年頭作
此心欲賦感懐滋 此の心賦せて欲して感懐滋し
前路茫茫多所思 前路茫茫所思多し
有限青春猶夢在 限り有る青春猶夢在り
三元立志望天涯 三元志を立てて天涯に望む
<解説>
この心は真心を頂いた思いがあたって
これから先は視野が広がって行くと思う
そんな思いがある限り夢の青春はある
元日に志を立てて空に望む