2005年の新年漢詩 第1作は 緑風 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-1

  祝 新年        

除夜鐘声坊境昌   除夜の鐘声 坊境昌たり

客歳多変衆祈祥   客歳 災い多くして 衆 幸いを祈る

吾還開暦七旬過   吾 また開暦 七旬 過ぎる

祝乙酉翔万寿觴   乙酉の翔を祝し 万寿の觴

          (下平声「七陽」の押韻)






















 2005年の新年漢詩 第2作は 緑風 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-2

  祝 新年        

四海紛絋乙酉新   四海紛絋 乙酉新らし

泉丸改革稍逡巡   泉丸の改革 稍 逡巡

亦厳伊洛北鮮悒   亦 伊洛 北鮮の悒い

独祷乾坤万寿春   独り祷る 乾坤万寿の春

          (上平声「十一真」の押韻)

<解説>

国の内外の問題を憂慮しつつ迎えた新年の感想を纏めてみました。






















 2005年の新年漢詩 第3作は 諦道 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-3

  新年        

鶏鳴報暁歳華新   鶏鳴暁を報げて歳華新たなり

祝祷三元離六塵   祝祷三元して六塵を離れる

馥郁寒梅満禅刹   馥郁たる寒梅は禅刹に満ちている

千門万戸古今春   千門万戸古今春

          (上平声「十一真」の押韻)

<解説>

 お寺の行事を通じて新年を迎えた家々の喜びを詠みました






















 2005年の新年漢詩 第4作は 諦道 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-4

  賀正        

鐘声百八送迎新   百八の鐘声を送って新年を迎える

乙酉三元祝祷辰   乙酉三元祝祷の辰なり

椒酒三杯賀初日   椒酒三杯初日の出を賀す

千家万戸喜来春   千家万戸春の来たるを喜こぶ

          (上平声「十一真」の押韻)

<解説>

 正月の行事を通して春の来るのを待ちわびている人々の気持ちを読みました






















 2005年の新年漢詩 第5作は Y.T. さんからの作品です。
 

作品番号 2005-5

  元旦        

旭日上東天   旭日 東天に上り

春光追鶴影   春光 鶴影を追う

椒觴対野梅   椒觴 野梅に対し

遙憶林和靖   遙かに憶う 林和靖

          (上声二十三「梗」の押韻)

<解説>

明けましておめでとう御座います。
本年も宜しくお願いします。
また新春詩を送らせて戴きます。






















 2005年の新年漢詩 第6作は 深渓 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-6

  歳朝偶成        

重齢七十七年春   齢を重ねて 七十七年の春

迎得東都在俗塵   迎へ得て 東都の俗塵に在り

難擲蕪詩雖杜撰   擲ち難き 蕪詩 杜撰と雖も

残生日日養吾神   残生の日日 吾が神を養なはん

          (上平声「十一真」の押韻)
























 2005年の新年漢詩 第7作は 謝斧 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-7

  御題 歩        

双脚疲労温脚婆   双脚疲労して 脚婆温む

日扶藜杖獨行歌   日々藜杖に扶けられて 獨り行歌す

不須學彼邯鄲客   彼の邯鄲の客に学ぶ須ひず

渡水看花能養痾   水を渡り花を看ては 能く痾を養ふ

          (下平声「五歌」の押韻)

<解説>

●脚婆 湯たんぽ

 他人の事などを羨まず、自分の残生を楽しんでいます。






















 2005年の新年漢詩 第8作は 深渓 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-8

  乙酉歳朝口占        

無功迎喜寿   功無く 喜寿を迎う

身健不言年   身健にして 年を言わず

平素謝疎遠   平素の疎遠を謝し

賀正詩一篇   賀正として 詩一篇

          (下平声「一先」の押韻)

<解説>

●口占=口ずさむ、(草稿を書かず文案を書く)

[口訳]
  何の取り柄もなく、喜寿を迎えました、
  体は健康で、年の事を語ることはありません。
  平素のご無沙汰をお詫びしながら、
  詩一首をもって、新年のお祝いの辞と致します。























 2005年の新年漢詩 第9作は 京祥 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-9

  新年書懐        

滄桑世上歳華初   滄桑世上歳華の初

無恙過年心自舒   恙無し過年心自ずから舒たり

梅発報春幽趣足   梅発し春を報じ幽趣足る

一觴一詠愛三餘   一觴一詠三餘を愛す

          (上平声「六魚」の押韻)

<解説>

世の中が大きく変わった新年の初めは
恙なく年を過ごせて心は自ずから穏やかである
梅が咲き春を告げ幽趣たりる頃
杯を取り詩を吟じ余暇に風雅を楽しもう























 2005年の新年漢詩 第10作は 鮟鱇 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-10

  酉年三元口占     酉年 三元に口占す   

美酒蒸發處,   美酒 蒸発するところ,

猶留酉字奇。   なお留(とど)まりて酉字 奇なり。

三元人一醉,   三元 人 一醉すれば,

朱臉似雄鷄。   朱臉 雄鷄に似る。

<解説>

三元:元旦
朱臉:赤い顔。






















 2005年の新年漢詩 第11作は 海山人 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-11

  迎平成乙酉歳        

一層千里目   一層 千里の目

万象百年蹤   万象 百年の蹤

大道随時透   大道は 時に随ひて透り

青天積翠容   青天は 翠を積みて容る

          (上平声「二冬」の押韻)























 2005年の新年漢詩 第12作は 坂本定洋 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-12

  橘家新年        

橘 家 失 暇 障 琉 汚   橘家暇を失い障琉汚れ

春 兆 霜 前 一 片 無   春兆霜前に一片無し。

收 穫 纔 終 還 出 荷   収穫わずかに終われば、また出荷。

此 朝 唯 許 十 杯 愉   この朝ただ許す十杯の愉しみ。

          (上平声「七虞」の押韻)

<解説>

「新年作」というのは私の苦手です。
 和歌山県の蜜柑農家の新年風景を書いてみました。蜜柑農家の事を「橘家」としておりますが、このあたりは家紋に橘を用い暗に橘氏を名乗る家も多いのです。私の場合は平氏と言うことにしておりますが。
 年内一杯収穫作業に追われて年末の大掃除など夢のまた夢、窓ガラスは汚れたままです。年内に収穫が終われれば良い方で、年が替わっても箱詰めや出荷作業が待っています。寒さもピークを迎える中で、これもまた厳しい作業です。一息つくのは旧暦の新年あたりです。元旦だけは世間並みに朝からゆっくりと。しかし、ほどほどにというところです。
 去る年には台風、水害、はたまた地震と自然災害に立続けに見舞われました。詩友のみなさんの中にも被災された方もおられるやもと思います。ここにお見舞い申し上げます。尋常一様の新年が一番なのですね。そのようなことを噛み締めて詩にできればと思うのですが、一体いつの事やら。
 本年もよろしくお願い申し上げます。






















 2005年の新年漢詩 第13作は 禿羊 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-13

  甲申歳晩有感        

地球今年気象猖   地球 今年 気象猖(たけ)り

蒼生安得免天殃   蒼生 安んぞ 天の殃(わざわい)を免かるるを得んや

重盞少喜徂凶歳   盞を重ねて 少しく喜ぶ 凶歳の徂くを

双鬢明朝復一霜   双鬢 明朝 復一霜

          (下平声「七陽」の押韻)

<解説>

 イヤー、昨年はひどい年でしたね。
 日本も、台風、地震と大変な年であり、世界的にもハリケーンが大荒れでしたが、年末にドカンと大災害がやってきました。新しい年になってヤレヤレというところですが、この歳になると個人的にはすごく良いことが期待できるわけでもなく、せめて世の中が少しでも穏やかにと願うばかりです。





















 2005年の新年漢詩 第14作は 逸爾散士 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-14

  元旦言志     元旦に志を言う   

日露相争百歳前   日露、相争うは百歳の前

昭和乙酉止戈年   昭和の乙酉は戈を止むるの年

三元鑑史未来想   三元、史に鑑みて未来を想えば

微力希求憲法全   微力ながら希求せん憲法の全きを

          (下平声「一先」の押韻)

<解説>

 元旦に歴史を想う趣向で作り始めて年表をみたら、百年前は日露戦争、一回り前の酉年は終戦の年だったので、憲法を護ろうというところに落ち着いてしまいました。
 成り行きで平和憲法が出てきたので、志というにはぼけっとした詩なんですが、暦の変わり目に歴史を想い、未来に思いをはせるのは自然とも思います。






















 2005年の新年漢詩 第15作は 柳田 周 さんからの作品です。
 

作品番号 2005-15

  房総千倉        

現知春信到千倉   現に知る春信千倉に到るを

罌粟緋然波白煌   罌粟(おうぞく)は緋に然(も)え、波は白く煌やく

媼与童児花摘処   媼の童児と与(とも)に花摘む処

平安是合適迎陽   平安是れ合(まさ)に陽を迎うるに適(かな)うべし

          (下平声「七陽」の押韻)

<解説>

(語注)
   罌粟=けし
   迎陽=迎春